Unleash Lab 〜原因不明の不調を診断します〜 6.水と龍
八尾 遥
プロローグ
桜も散り、木々には緑色の新芽が模様をつけている。
始まりの季節に全速力で走っていた人々も、それぞれの居場所に慣れ、少しずつ速度を緩めはじめていた。
エメラルド色のドアを開けた先には、そんな世の中のスピードとは無縁の、ゆったりとした空気に満ちたクリニックがある。
「御門先生、そろそろ雨の季節に入りそうですね」
「そうだね。そろそろかな。
ジーニー、どう思う?」
そう言って御門先生は、私からPC画面に顔を向ける。
「はい。現在の天気図と気圧配置の推移から判断すると、まもなく水の多い季節に入るでしょう。しばらくは、湿った日が続きそうですね」
「梅雨は憂鬱になるよねぇ。」
頭の後ろで腕を組みながら、御門先生は椅子でくるくる回っている。
花村先生は「お茶の在庫見てきます」と言って、カウンセラー室に戻って行った。
「あー、ゲームしたいなぁ…。増築しよっかなぁ…」
未だクルクルは止まらない。
「増築は現実的ではありません。
レントゲン室を改造しますか?」
「えっ?いいの?」
PCに飛びつきそうな勢いで体制を立て直す。
「先生のクリニックですから、やりたいようになさったら良いかと思います。」
「そう? そうんなに言うなら、リフォームしようかな。」
「はい、リフォーム業者を手配しましょうか。
花村先生、一生懸命働いてくださってますからね。
花村先生がお一人で患者様をお救いしている間、御門先生は何もないですから。」
「ジーニー、それ、リフォームしたらダメって聞こえる…。」
御門先生はじと目をしながら、口を尖らせて呟いた。
その時、
「チーン」
と、金属の乾いた音が鳴り響いた。
「おっと、患者さんだ。」
白衣を羽織り、花村先生が患者さんに向かうのを、ドアの開閉音で確認しながら、対応が終わるのを待った。
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