『死に損なった少年は、異世界で生き直す』

よし

第1話 プロローグ

佐藤一真は、自分が死ぬ瞬間を、はっきりと覚えていた。


消毒液の匂い。

点滴のチューブ越しに見える、薄く曇った天井。

モニターの電子音が、少しずつ、間延びしていく感覚。


白血病――

その言葉を初めて聞いたのは、高校二年の冬だった。


「治療すれば、可能性はあります」


医者はそう言った。

家族は笑顔を作った。

一真も、頷いた。


だが――

自分だけは、分かっていた。


これは、長い戦いじゃない。


体は日に日に軽くなり、

筋肉は落ち、

鏡に映る自分は、まるで“誰かの影”のようだった。


最後に聞いたのは、母の声だった。


「一真……ありがとう……」


ありがとう?

何に?


守れなかった。

何も成し遂げられなかった。

夢も、恋も、仕事も――全部、途中で終わったのに。


それでも、涙が頬に落ちた。


――そして。


死は、終わりではなかった。

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