2.見知らぬ少女を救いたい
――はぁ、倒れてしまったのか。
さっきまで、路地裏で……
ああ、本当に何が起こってるんだよ。
俺は顔をあげ、周囲を見渡してみた……が。
「――ここ、どこなんだよぉぉ!!」
辺りは見渡す限りの植物と木。
さっきまで路地裏にいたはずだろ!
なのに、目が覚めたら森にいるって。
間違いない。
これは夢だ、そうにちがいない。
俺は自分の頬をつねった。
――普通にイテェ。
おいおい、夢じゃないのかよ。
ここは夢落ちであってほしかったよ、ほんとに。
となると、誘拐されて森へ運ばれた?
現実的に考えるならそんな感じだろう。
だが、辺りに人の気配は感じないし、あの怪奇現象の後だ。
これも一種の超常現象やらなんかに違いない。
こういう展開になった時は、まずすべきことがある。
状況把握と安全確認だ。
危険な野生動物、特にクマなどがいたら太刀打ちできない。
人里から離れていた場合、そもそも一晩で帰られるかどうか。
とりあえず、探検がてら歩いてみることにする。
本当に何もない。
整備されたコンクリの道でもあれば、一安心なんだが。
ただ、野生動物はあまりいないみたいだ。
見たことのない青い鳥が、木の上で鳴いているぐらい。
よく考えると、ここに生えている木も家の近くでは見たことがない。
結構遠くの方に来てしまったのだろうか。
そろそろ喉も乾いてきたし、腹も減ってきた。
人にさえ会えれば……
――人の声だ!!
今、微かに聞こえたぞ。
こっちからだ!
俺は無我夢中に、声が聞こえた方に向かって走り出した。
ここに、健気な少年がいますよー!
助けてくだ――
「ウォルバインデヂィ!ナバルバ!ナバルバ!」
んん?
この茂みの向こうから聞こえたな。
かなり気合の入った、おっさんの声だ。
ただ、なんか日本語とはかけ離れていたような。
「――ナバルバ!ウォルデヂャスバ!ウォー!!」
うん、何もわからん。
英語とかでもなさそうだ。
しかも、さっきのヤツとは別の声だ。
複数人いるのか?
俺は覗けるように、茂みをかき分けた。
草木の隙間から見えた光景は……
なんだ、これ。
大きな斧を持っていて、革っぽい素材の鎧をきている男。
他にも中世の剣の様なものを持っている者もいる。
おいおい、ハロウィンまではまだまだ先だぞ。
髪も赤く染めたりしちゃってるし。
……流石に偽物だよな?
まてまて、こんないかにもファンタジーな服装に武器。
鎧は百歩譲っていいだろう。
あの剣は銃刀法違反だろ!
ギラギラ光を反射していて、偽物には見えない。
そんなものを容易く持っている。
もしや、ここは日本ではない?
一回落ち着こう。
まだ決まったわけじゃない。
というか、あいつらは何をしているんだ?
男三人の奥にも、誰かいるな。
あれは……少女?
ヨーロッパっぽい服装だ。
そこらへんの知識があまりないし、表現しがたいが。
見た目も、洋画にいそうな美少女。
背は低く、少し薄い金髪で、短髪だ。
青く輝く目は人形のように美しく、かわいらしい。
あんな小さい少女を三人で囲っている状況。
これはあれだな。
襲われる一歩手前で、颯爽と現れる主人公、そんなことができる状況でもある。
俺にそんな勇気があるのかって?
――もちろんない。
「ウォルデヂャスベ。ケイズ!ラプヂィバ!」
おいおい、嘘だろ?
リーダー格のような赤髪の男が、黒髪のやつに何かを指示した。
その瞬間、少女に剣が向けられる。
襲うとかじゃなくて、殺すのかよ!
最低のクズじゃないか。
止めたいが……三対一。
相手は武器を持っている。
俺には勇気はない。
だが、性根は腐っちゃいない。
ここで見て見ぬふりをしたら、俺は一生後悔する気がする。
呼吸を整えて、体を奮い立たせる。
俺ならできる、俺ならやれる!
よし、行くぞ!
「ラプヂィバ!ラプヂィバ!ラプ――」
「おらぁぁ!こっちを向きやがれぇぇ!」
腕を振り上げながら、距離を詰める。
だが、剣は止まらない。
まずい、遅かった――
剣は少女の心臓へ、一直線に向かう。
剣の先が、体へ触れる。
っく、もう駄目か……
俺は目を逸らした。
その間に、剣は少女を貫いているはずだった。
血にまみれた剣と、血痕が広がっている……はずだった。
だが、違った。
少女の前にあったのは、折れた剣の破片と、呆然と立ち尽くす男たちだった。
「ゼナケイズラプヂィゼ……バナルケイズ!!」
俺も何が起きたかわからない。
最初から無口で、悲鳴すらあげていなかった少女が、遂に口を開いた。
「ねぇ、怪我しそうだったよ。あなた達、悪いひと?」
少女というよりは、少年というべきだろうか。
いや、中性的といった方がいい声だ。
何よりも意外だったのは、この少女は確かに日本語を喋ったということだ。
もう何がなんだかわからない。
赤髪の男が、声を荒げる。
「ベナ。ジェルヂバ、ラプヂィゼ!!」
「じゃあ、ばいばい!」
少女が別れを告げた時。
本当に、一瞬の出来事だった。
少女が消えたと思ったら、赤髪の男の後ろにいたんだ。
そして――
その男の腹を、その小さな拳で……貫いた。
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