落ちこぼれ悪役貴族に転生!? でも無双します~現代知識と創造力で学園生活~

窓際開拓工房長

第1話 落ちこぼれ悪役貴族に転生する

(……なんや。やけに体が軽いような)


そう思った瞬間、俺はゆっくりと上半身を起こした。

ぼやけた視界が次第に輪郭を取り戻していく。


最初に目に飛び込んできたのは、ありえないほど巨大なベッドだった。

金糸の刺繍が施された天蓋、触れるのも恐れ多いほど高級そうなカーテン。

そして何より——部屋が、でかい。


「……は?」


思わず声が漏れる。

どう考えても、俺の知っている日本の住宅事情じゃない。


部屋の豪華さに呆然としていると、重厚そうなドアが静かに開いた。


「お坊っちゃま? お目覚めですか」


入ってきたのは、メイド服を着た少女だった。

俺は反射的に、前世の癖で口を開いてしまう。


「おはよう。よく眠れたよ」


——やべ。


挨拶をした瞬間、メイドの少女はびくりと肩を震わせ、

無意識に頭を庇うように身をすくめた。


怯えきったその目を見て、俺はようやく理解する。

この身体の“元の持ち主”が、どんな扱いをしてきたのかを。


「お、お坊っちゃまが……『お、おはよう』と……」


今にも泣き出しそうな彼女を見て、胸の奥がちくりと痛んだ。

俺は慌ててベッドから降り、彼女の前に立つ。


「大丈夫か? 今日はもう自分の部屋で休め」

「は、はいぃっ! わ、分かりました!」


少女はそう言うと、逃げるように部屋を飛び出していった。


……完全にトラウマ持ちだな。


「それにしても……転生、したんだよな」


思い返せば、前世の俺は現代日本でオタ活を満喫していた一般人だった。

推し、イベント、深夜アニメ。

そんな日常の途中で倒れて——気づけば、この世界だ。


しかもこの身体、

落ちこぼれ悪役貴族の子息・グレイヴ・バルトフェルド。


テンプレ知識が、頭の中で警鐘を鳴らす。

——これ、だいたい破滅ルート行きのやつだ。


「まずは体を慣らさないとな……」


試しに身体を動かすと、驚くほど軽い。

筋力も反応も、前世とは比べものにならない。


そんなことを考えていると、どうやら食事の時間らしく、

メイドに案内されて食堂へ向かう。


席にはすでに、両親と兄が座っていた。


「遅れました」


そう言った瞬間、兄が鼻で笑う。


「遅いぞ! 何してたんだ無能が!」

「そうよ。息子ちゃんが待ってるんだから。

 メイド、早く料理を持ってきなさい!」


母親はそう言って、メイドを物のように扱う。

さっきの少女の怯えた表情が、脳裏に浮かんだ。


(なるほど……これは泣くわけだ)


その時、低く響く声が食堂を制した。


「やめろ。メイドに対して、その態度はなんだ」


——父親だ。


どうやら、この家で唯一まともな人物らしい。


(……生き残るなら、まずはこの世界を知らないとだな)


「父上、遅れて申し訳ありません」

「何かしていたのか?」

「少し、体を動かしていました」


父はじっと俺を見つめ、わずかに目を細めた。


「……そうか」


その視線の意味を、俺はまだ知らない。


だがこの日を境に、

悪役貴族グレイヴ・バルトフェルドの運命は、

確実に狂い始めていた。




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