第46話 思ったより強いのか?
執事のジャンとの打ち合わせ終え、部屋へと戻った私はベッドへと腰かけた。
「ふむ……東の山脈の、薄い部分を吹き飛ばすだけでいい訳ですが……」
安請けおいしたが、少し問題があった。
二つほど。
一つ目は威力だ。
ああ、別に吹き飛ばすだけのパワーが出せないという訳ではないぞ。
弱ってはいても、それ位は問題ない。
問題となるのは威力の調整部分である。
交易路を作るためには、瓦礫一つ残さず消し飛ばす必要があった。
少なくとも大きなものは全部消し飛ばす必要がある。
そうしてそのためには、かなりの威力を発揮しなければならないのだが……あまり威力を上げすぎると問題が出てしまう。
それは――ドワーフの王国に被害が出る点だ。
山脈を丸々吹き飛ばす威力のブレスが、山脈を越えた瞬間消滅する訳もない。
当然だが、そのままドワーフの王国に私のブレスは飛んで行く事になる。
人里に影響でも出れば、いや、そうでなくとも、よその国の地形を大きく変える様な攻撃は交易に差しさわりが出る。
なので、威力を絶妙にコントローるする必要があった。
「大きな瓦礫を残さず吹き飛ばしつつ、ソワーフの国側には一切被害が出ないようにする……」
条件的にかなり難しい。
「なにかいい案はありますか?」
「ブレスを何発かに分けてみては……いかがでしょうか?」
私の
シャドウが、此方の問いに応えるため現す。
因みに、このシャドウは分身だ。
本体は別の場所にいる。
分け身の分身。
ちょっとややこしいが、シャドウは人間の世界に溶け込み、今は色々な魔法の知識を手に入れている際中だ。
そして手に入れた魔法を少々改良し――
大本の魔法は、分身が本体から1メートル程しか離れられない。
そのままだと不便で使い道が限られてしまうため、シャドウの手によって活動範囲が大幅に広がるよう改良されている。
――彼が生み出したものが、この分身という訳である。
分身の能力は本体の10分の1程しかなく、自分の代わりを務めさせるというのは少々難しい。
だが本体と感覚がリンクしているで、こうやって分身を寄越す事で、離れた場所と連絡を瞬時に取る事が可能であり、リアルタイムの連絡方法としては破格の性能となっていた。
私の場合はそれ以外にも色々使えそうなので、シャドウから学んで既にこの魔法は習得済みだ。
これさえあれば、ドラゴンとメイド、同時に活動するシーンも作れるようになる訳だからな。
メイド側は、10分の1でも問題ないので。
因みに、分身は500年前には無かった魔法だ。
このような短い期間で新たな魔法を生み出すあたり、人間の想像力と努力は感心するばかりである。
例え寿命が短くとも。
虚弱な生物であろうとも。
本当に人間という物は侮れない。
「なるほど。複数回にわければいい訳ですか」
「はい。まずは貫通力の高いブレスで山脈を吹き飛ばし……そして上空から瓦礫を崩壊させるブレスで地均しをすれば……ドワーフ側に被害が出る心配はないかと」
「悪くありませんね」
「その方法は問題があるゲー」
小さなトカゲの姿に化けていたゲーが変身を解き、元の姿に戻る。
トカゲのままでは言語を発せないためだ。
因みに、彼は本体である。
生み出す際、身体能力に偏ったパワータイプにしているため、余り魔法が得意ではなく、分身をまだ習得できていないためだ。
「上空からのブレスで瓦礫を吹き飛ばしたりなんかしたら、地面がボロボロになって不安定になるゲー。重い荷物を運ぶ道には向かなくなるゲー」
「ふむ……言われてみればそうですね」
瓦礫だけ吹き飛ばすなどという気様な真似、私にはできない。
というか誰だろうと無理だろう。
そうなると、上空から瓦礫を吹き飛ばす案は駄目だな。
足元が脆い交易路など、人間が使うには余りにもリスクが高すぎる。
「盲点でした……お許しください」
シャドウが頭を下げる。
「気にしないで下さい。誰にでも盲点という物はあります。それを避けるため、こうして三体で頭を悩ませているのですから」
シャドウは魔法タイプだが、だからと言って特段頭が切れる訳ではない。
逆にゲーは肉体派だが、知能が低いわけでもない。
多少の偏りがあっても、どちらも私から生み出した存在だからな。
当然だ。
なので、知能に関しては似たり寄ったりと思って貰っていい。
とは言え、感覚や立ち位置が違えば着眼点も違ってくる。
今回のやり取りがそのいい例だろう。
「ゲーに名案があるゲー」
「どんな案です?」
「ゲーが反対側からブレスを受け止めるゲー。こうすればドワーフにダメージを与える事はないゲー」
「む……」
確かに。
誰かが私のブレスを受け止めれば、ドワーフ側への被害は発生しない。
だが、果たしてゲーに私のブレスを受け止められるだろうか?
山脈を跡形もなく吹きとばす威力のブレスを。
ゲーは私の分け身だが、その力は半分にも満たない。
私のブレスを受け止められるか、正直微妙なのだが……
「たしかに……それならば……」
ゲーの案に、驚いた事にシャドウが肯定を示した。
彼もゲーの力は知っているハズ。
そのシャドウが、ゲーなら私のブレスを受け止められると判断したという事は……私がゲーの能力を低く見積もり過ぎているという事か?
「本当に大丈夫なのですか?」
「任せてほしいゲー!必ず受け止めて見せるゲー!」
私の問いに、ゲーが両腕を肩の上まで上げて曲げるポーズで自信満々気に応えた。
ふむ……まあここまではっきり言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
「分かりました。では、その案で行きましょう」
仮に、完全に受け止めきれなくとも死ぬような事は決してないだろう。
そう判断し、私はゲーの案で行く事を決める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます