第8話 家出? ライバル登場!

朝の静かな住宅街の中、ことねは日課のジョギングをしていました。 


 ことねはとてもご機嫌です。 理由は、ライバルだと思っていた相手ーー彩乃ちゃんが、湊のことはもうどうでもいい、と発言したからです。 正直に言うと、大好きな湊が彩乃ちゃんに取られると、記憶を取り戻してからずっと思っていました。


 もちろん湊を譲るつもりはなかったのですが、湊が彩乃ちゃんに惚れてしまったら、ことねは仕方なく諦めるつもりでいました。 それが、昨日の発言で心配する必要がなくなりました。


 今日のことねは、いつも以上に元気いっぱいです。 その時、横から人の気配を感じて横を見ます。 すると、同じ学校の制服を着た女性が、ことねを追い抜いていくではありませんか! 突然のライバルの登場にことねは、相手に声をかけます。


 「私と競走するつもりだね! いいよ、相手になるよ~」

 「⋯⋯あの? 貴方は?」

 「坂までね! 用意、ドン!」


 そう言うとことねは、スピードを上げて坂を目指します。 声をかけられた彼女は問いかけます。


 「あの⋯⋯なぜ競走を?」

 「私のスピードについて来るだと!」

 「⋯⋯貴方! 話しを聞いてますの?」

 「私は、負けない!」

 「よくわかりませんが⋯⋯勝負なら、負けませんわ! 勝負ですわ!」

 

 やがて、ゴールに到着して、呼吸を整え、互いに顔を見合わせます。 そして握手。 お互いの健闘を讃え合います。 二人の間には、すでに絆が芽生えてました。 ことねは問いかけます。


 「なんで、こんな朝早くに制服姿で、ジョギングしてるの? ちゃんと私みたいに走る格好をしなくちゃ!」

 「⋯⋯別に私は、ジョギングのために走っていた、訳じゃないですわ⋯⋯家出して来ましたの⋯⋯」


 彼女ーー櫻井美羽は、そう言うと悲しげな表情を浮かべます。


 「なになに、どしたん? 話し聞こか?」

 「ちょっと、パパと喧嘩をしましたの⋯⋯」

 「ふ~ん、そうなんだ」

 「言い争いになって、喧嘩して、家を飛び出しましたの⋯⋯」

 「大変だね~」

 「⋯⋯行くあてもなくて、現実逃避のために走っていましたわ⋯⋯」

 「うん? それなら、ウチ来る?」

 「⋯⋯嬉しいけど、迷惑ですわ!」

 「大丈夫! 広くて、ご飯付きだよ! まずはお試しで、美味しい朝ご飯一緒に食べよ!」

 「朝ご飯! 食べたいですわ! お腹と背中がくっつきましてよ!」

 「よし! じゃあ帰ろう!」


 ことねは、そう言うと、美羽と一緒に家に帰るのでした。


 「ことね、おかえり。 朝ご飯出来てるぞ」

 「湊、ただいま。 お願いがあるんだけど⋯⋯」

 「⋯⋯ことね、またか。 駄目だぞ! 面倒を見るのは、結局俺なんだから」

 「そんな!⋯⋯美羽ちゃんがかわいそうだと思わないの?」

 「さっそく、名前までつけて⋯⋯ ちゃんと一生、そいつの面倒を見る、責任があるんだぞ!」

 「⋯⋯うん、わかったよ! ちゃんと面倒も見るし、育てるから! だからお願い!」

 「わかったよ。 ことねがそんなに言うなら飼ってもいいよ」

 「やった! ありがとう湊! ⋯⋯入っておいで美羽ちゃん」


 ことねは、美羽に手招きをして入る様に言う。 湊は頭に?を浮かべながら、様子を見ていた。 そして家の中に入って来たのは、湊の知っている顔だった。


 「紹介するね! この子の名前は櫻井美羽ちゃん。 そして⋯⋯」

 「湊! え?⋯⋯と言うことは彼女は⋯⋯」

 「美羽! どう言うことだこれは!」

 「うん? 知りあい? よかった! 自己紹介の手間がはぶけたね~」

 

 困惑する、湊と美羽を気にせずに、ことねはジョギング後のシャワーを浴びに行くのであった。






 「⋯⋯お嬢様、櫻井美羽が脱走しました⋯⋯」

 「櫻井美羽? 誰それ」

 「⋯⋯私の親戚です⋯⋯親と前から仲が⋯⋯」

 「どうでもいい! つまらない話題を話さないで!」

 「⋯⋯すみません。 ですが、彼女には貴方の側近になってもらう予定で⋯⋯」

 「高坂湊! お前はいつから、無駄な意識を持ったの?」

 「⋯⋯はい、申し訳ございませんでした。 お嬢様」








 「⋯⋯と言うことで、今日からここで世話になります! ことね様!」

 「うん、ちゃんと、ことねの世話をするんだぞ! 美羽!」

 「湊! お任せください!」


 シャワーから上がった、ことねを待っていたのは、仲が良さそうな二人でした。 ことねはショックを受けます。 ーー新しいライバル登場だ! と。


 「美羽ちゃんは湊と、どう言う関係なのかな?」

 「はい! 湊とは、家族ぐるみでお世話になっております!」

 「へえ~、そうなんだ。 ⋯⋯私もなんだよ! でも私、美羽ちゃんのことを知らないよ?」

 「私の親がことね様には、大人になるまで秘匿するようにと、工作をしていたので⋯⋯」

 「⋯⋯家族ぐるみで、湊に二股をさせる計画だったのね⋯⋯ それが嫌で正々堂々と勝負しにきたと⋯⋯」

 「ことね様?」

 「これからよろしくね、美羽ちゃん!」

 「はい! ことね様! よろしくお願いします!」

 「様なんてつけなくていいよ美羽ちゃん!」

 「いいえ。 ⋯⋯これは私とことね様との間を示す大切なことです!」

 「そうなんだ! ⋯⋯寂しいわね」

 「どうなさいました?」

 「なんでもないよ!」


 ことねと美羽はお互いに見つめ合うのでした。 こうして、ことねの新生活が始まるのでした。

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