路上占い、あれこれ153その2【占い師はなりすます】

崔 梨遙(再)

結末の掌編 1402文字 です!

 僕は営業先のOLさん、麗華と深い関係になりました。それはいいのです。彼女ができたということで本当ならハッピーなのでしょう。ですが、問題が1つありました。麗華が『ヤンキー好き』ということです。いろいろあって、麗華は僕のことを『暴走族の元総長』だと思っていました。なので、僕は暴走族の総長になりすまさなくてはいけなかったのですが、これがまた大変でした。



『素敵なお店ですね』

『僕はいろんな店を回らないからね。気に入った店があれば、そこばっかりやで。フレンチはここ、イタリアンはここって感じ。あ、夜は雰囲気のいい店に連れて行くわ』

『やった! お願いします』

『まあ、この店を気に入ってくれたなら良かった』

『暴走族の元総長が落ち着いてフレンチのコース料理を食べるって、カッコイイですね!』

『ぐふ!』

『どうしたんですか?』

『喉に詰まった。もう大丈夫』

『チームには何人くらいいたんですか?』

『僕等の頃は、もう暴走族が廃れてたから、せいぜい30人くらいやで』

『へえ、私、バイクの後ろに乗りたいなぁ』


 僕はバイクの中型の免許は持っていません。


『また、そのうちにね。バイクを降りてから長いしね、もう、ずっと車やからね』

『どんな車に乗ってたんですか?』

『黒の⭕⭕⭕⭕』

『ナンバープレートは?』

『9999(本当)』

『やっぱり! 族の人って、そういうナンバーが好きですよね』

『そうやね』

『そろそろ出ます?』

『今日はどこに行く?』

『ホテルに行っちゃいませんか?』

『喜んで』



『ああ、元総長のHってやっぱり激しいですね』


 いつも通りなんですけど。っていうか『元総長のH』って何? アカン、早く元総長だということを忘れさせないと。



『わあ、こんなお店があるんですね』

『気に入った?』

『めっちゃムードがありますね。照明は全て蝋燭なんですね。あ、テーブルの上にも蝋燭の灯りだ』

『まあ、座って。ここはカーテンで仕切られてるから、2人だけの時間と空間になるねん』

『好きなもの頼んでよ』

『はあい』


『なあ、そろそろ僕のことを元総長として見るのはやめにしない?』

『どういうことですか?』

『引退して長いし、今は普通の営業マンだから、麗華ちゃんには今の僕を好きになってほしい』


 蝋燭の灯りを見つめる麗華に、僕は囁き続けました。麗華は黙って聞いていました。



 それから少し経って、麗華からの連絡が途絶えました。そして久しぶりに電話がありました。


『麗華ちゃん、どないしたん? 最近、忙しいの? 連絡が無かったけど』

『ごめんなさい、私と別れてください』

『え! なんで?』

『今、大阪を制覇した元総長と付き合ってるんです。その人、まだ落ち着いてなくて、いつもギラギラしていて、でも、そこがいいんです。私、今も尖ってる人が好きみたいです』


 大阪を制覇した? どこの族? 誰? そいつも『なりすまし』のような気がするが、まあええか、元総長になりすますのも疲れてきたし。


『わかった。僕は落ち着いたからなぁ、それはしゃあないなぁ、ほな、お幸せに!』

『はい! じゃあ、さよなら!』



 電話を切ると、僕はベッドの中に入りました。元総長のなりすましは、とても疲れていたようです。麗華と別れて、肩の荷がおりたような、スッキリした気分になりました。別れられて良かった。ああ、しんどかった。気楽、気楽。ふられたのに、全く寂しくない僕でした。こういう別れもあるんですね!



 もう2度と総長にはなりすまさないぞ! かたく誓った僕でした。




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路上占い、あれこれ153その2【占い師はなりすます】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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