第11話 時は流れて

 

 旅立ちの準備。

 少し大きめのキャリーバッグを取り出して服と下着を詰めていく。


「本当はこんなキャリーバッグいらないんだけどなぁ」


 ルナの選んだ大量の服を入れながら思う。リア的にはジャージが5着に数枚の下着さえあれば充分なのだ。しかし、既にルナからファスファンIIIの限定版を受け取った以上、約束を破るわけにはいかない。


 全ての服を入れ終えてから、最後にお気に入りの黒いジャージを1着入れて蓋を閉じたところで、大事なものを入れ忘れていた事に気がつく。


「危ない危ない、制服を忘れてた」


 グレイダーツ氏から受け取った、校章入りの高級そうな箱を開けた。中にはルナが帰ってきた時に着ていた制服と同じ物が入っている。

 皺一つない制服は、とても輝いて見えた。ただし女子用であるが。

 箱の中には、スカートにカッターシャツが3枚、それから冬用のブレザーなどが綺麗に畳んで収納してあった。

 その中の、スカートを手に取って眺める。可愛らしい灰色でチェック柄のスカートは、女子が履けばとても似合うものだろう。


「はぁ」


 スカートを畳み、キャリーバッグに詰める。それから、残りの制服を入れたところで箱の底にある物を見つけた。


「ネクタイ? と、黒いニーソックス…」


 女子用ならば普通は紐タイなのだが、入っていたのはネクタイ。グレイダーツ氏の粋な計らいだろうか。正直、それなら男子用の制服にしてほしかったと思った自分は悪くないだろう。

 あと、黒いニーソックス。いざ自分が履いた所を想像すると、なんだか下着を着るより恥ずかしい気分になった。

 とりあえず、先の事を考えるのを辞めて……無心でキャリーバッグに詰め込み、今度こそ蓋を閉じる。


「疲れた……」


 ふらりとベッドに倒れこみ天井を見上げた。


 この部屋とも夏休みまではお別れだなと感慨にふけながら、静かに目を閉じる。

 精神的な疲れから、意識はすぐに落ちていった。


…………



「使役された魔物の契約を上書きして乗っ取る、か」


 デイルとグレイダーツは、向かい合うようにソファへ腰掛ける。弟子から電話で聞いた、ショッピングモールでの出来事をデイルに話す為、グレイダーツが誘ったのだ。


 そして、一通り話を聞いたデイルは、難しい顔で顎を撫でている。グレイダーツは机に置かれた紅茶を一口飲むと、話を続けた。


「私の弟子が言うには、《魔の糸》の接続すら乗っ取られた、もしくは強制切断されたらしい」


「わしはそれ以前に、魔物を使役している事に驚きなんじゃが」


 事実、過去に魔物を使役した人物は1人しかいない。


「そこは、流石私の弟子ってとこだな。とは言っても……アレが普通の魔物とも思えないがな」


 言いながらケラケラと笑うグレイダーツに、デイルは深くため息を吐く。


「確かに研究価値は黄金を積むよりもあるが……。今の時代、魔物を街に入れるなんて行為は模範的なテロリストだぞ? バレたらどうする」


「厳重にしてある、大丈夫だって。そんで本題はこっからな。あくまで契約対象が魔物というのを抜きにして……《契約》の魔法を強制的に乗っ取られたらしいんだが、なんの魔法か見当がつかなくてな」


 グレイダーツの問いに、デイルは首を左右に振った。


「……仮定するなら誰かが新たに《契約》を上書きしたと考えるが、それなら流石にわしの弟子でも気がつくじゃろうし。残念ながら分からぬの。それに、召喚系統の魔法に関してはわしよりもお主の方が詳しいじゃろ。まぁ、他にも仮定をあげるなら、呪術系かのぅ?」


 頬杖をつきながら、グレイダーツは嘆息する。


「呪術か……それなら私も専門外だな。あぁ、あと、私の弟子を狙ったというのも気になるんだよなぁ」


「それを言うなら、その場にわしの弟子がいたのも気になるのじゃが?」


「偶然だろ」


 手をふらふらと振るグレイダーツ。それから自身の言葉に付け足すように口を開いた。


「考えても分かんねぇな。とりあえず学校の方の警戒と警備を強化しておかなくちゃな」


 校長らしく生徒の安全を考えているグレイダーツに、デイルは口の端を吊り上げる。


「一応わしの方でも調べてみるとしよう」


「頼むぜ、私は学校の方で手一杯だからな」


「……まぁここから離れる気はないから、あまり期待はしないでほしいがの。あと、わしの弟子を頼んだぞ」


「任せろ」


 そう言って、拳をぶつけ合わせる。昔からよく「背中は預けた」と言いながら何度も何度もやっていたせいか、お互いに無意識でぶつけ合わせていた。その事に、つい可笑しくて笑い声をあげる。


「まぁー、これでも大都市だからな。魔導機動隊も動くし、そう危険な事はねぇだろ」


「そうじゃの。それに、いざとなればわしらが戦えばいい」


「そん時はまた背中を預けるぜ?」


「わしとしては、そうならない事を祈るがの」


「それはそうだな。さて、じゃあこの話は終わりにして、そろそろ弟子の話とかしようぜ。あと、お前の弟子が性転換した魔法もきっちり説明してくれよ? 性転換魔法なんて、私の記憶に無い魔法だからな」


 体をソファに預け腕を組みながら、ワクワクと子供っぽい表情でデイルの話を待つ。

 デイルはそんな親友に、頭の中でどこから話そうかと考えながら口を開いた。


「そうじゃの、まずはリアが習得した『禁忌魔法』について話すとしようか」


「お前が禁忌って言う事は……まさか、あいつの?」


「あぁ……クラウ・リスティリアの魔法じゃ」


………………


「うわぁぁァァア!!」


 翌朝、部屋にリアの悲鳴が響き渡った。何事かとルナは急いで駆けつけると、涙目で倒れているリアの姿が目に入る。


「お姉様!? どうなさったので……」


 よく見ると、パンツに血が滲んでいた。まさか大怪我!? と思いパンツをズラそうとルナは手を伸ばすがリアに制止される。


「ま、まって。驚いただけなんだ」


 リアはグスンと鼻を啜ると、ゆっくり口を開いた。


「来るだろうかと身構えてはいたけど……まさか本当に来るとは」


 その言葉でルナはピコーンと血の原因に思い至る。女の子になって数日。しかし確かに積み重ねてきた日数は、リアの身体を確実に変化させていた。精神にも左右する、女性特有のアレ……そう生理である。


「……お姉様の生レバー」


 思わず呟いたルナに、リアは全力で距離をとった。


「流石にそれはキモい通り越してドン引きだぞ!?」


「冗談ですよ冗談。小粋なジョークです」


「小粋じゃない!! マジの目をしてるぞルナぁ!!」


 ジリジリと距離を詰めて、ルナは《念力魔法》でリアのパンツを無理矢理さげた。そして、すかさず身体を浮かばせる。


「ささ、お姉様。お股を洗って紙ナプキンをつけましょうね」


「うぅ……生理を経験して狼狽え失意のどん底にいる兄にする仕打ちがこれか」

…………


 そんな事があったり、ルナのおかげで色々と経験したり。時間が経つのは早い。入学式はいよいよ明日だ。

 昼過ぎまではノルンとのんびり過ごしたり、師匠と色々話をして時間を潰す。

 本当はもう少し母さん達と過ごしていたいが、残念な事に電車の出発時刻が迫っている。リアは財布と携帯端末をポケットに入れキャリーバックを引きずりながら玄関まで向かう。ちなみに、服装は先日ショッピングモールで購入した真っ黒のワンピースだ。ルナに無理矢理着させられた。

 そんな我が妹は、手には制服の入った鞄といつもの手提げ鞄をもっている。


 玄関近くには師匠と母さんも立っていて穏やかな微笑を浮かべている。

 母ノルンはいつも通り、ぽわぽわとした、しかし心配そうな顔と口調で話し始めた。


「じゃ、リアちゃんもルナちゃんも、頑張ってね。体には気をつけて。怪我もしないようにね。あと危ない人には付いて行かない事。元気で、帰ってくるのを待ってるわ」


「うん。それまで母さんも体には気をつけてね。何かあったら連絡してよ? すぐに帰ってくるから」


「そうですお母様。もし何かあったら速攻で帰ってきます!!」


「ふふっ、ありがとね。でも、デイル様もいるし、この前グレイダーツ先生からも《|機械人形(オートマトン)》って動く人形も貰ったから大丈夫よ。だから安心して行ってらっしゃい」


 《|機械人形(オートマトン)》は、動く等身大のお手伝い人形のようなものだ。AIを搭載していて学習するが、持ち主に危害を加える事はできないなどの細かい設定ができるなど、かなり高度な機械技術と錬金術が使われた代物である。本来、市販されているものはかなり高額で庶民が手を出せるものではないのだが、開発がグレイダーツ氏らしく一宿一飯の恩として置いていってくれた。

 そんな人形は、今メイド服を着て部屋の掃除をしている。


 そしてノルンは宿泊の予約が無ければ定期的に休業にして、副業の衣服制作(これが意外と儲かっている)などをしている。だから自分達がいなくなっても無茶をして体調を崩したりする事はないだろう。


 それから、ノルンに次いでデイルも口を開いた。


「入学式は非公開じゃからのぅ。見れん事が残念で仕方がない。まぁ、ノルンさんはワシが守るから安心して行ってこい、弟子よ」


 そう、グレイダーツ魔法・魔術学校の入学式は非公開らしい。でも、何か危険な事をするのか? と聞くと別段そういった事はないそうで。

 しかし、式は非公開だが校内には入れるようだ。だが、それだけの為に来てもらうのも申し訳ないので遠慮しておいた。ノルンも最後まで行こうと思っていたみたいだが、ルナに「写真いっぱい送ります!!」と言われた事で頷いて家に残る事にしたらしい。


「師匠、母さんの事、頼みました。あと、修行をつけてくださって、ありがとうございました!!」


 性転換させられた事を除けば、この人は自分の人生において、かけがえのない恩人なのだ。それに理由はどうであれ、師匠は何か隠している気がする。それを聞くまでは、恨みはしないと決めた。あくまで勘だが、そうでもしなければ恨み言を断ち切れないので仕方ない。

 礼をいい頭を下げると、師匠はいつも通り「ふぉふぉふぉ」と朗らかに笑った。よく見ると、ほんのり頰が朱色に染まっている。


「いざそう言われると照れるのぅ。まぁ、魔法使いたるもの体調管理には気をつけるのじゃぞ?」


「はいっ」


 話がひと段落したところで、ルナが横から声をあげた。


「お姉様、そろそろ出発しないと」


「わかった。それじゃあ母さん、師匠、行ってきます」


「行ってきます!!」


「は〜い、行ってらっしゃ〜い」


「うむ。元気でのぅ」


 手を振りあいながら、駅に向かって歩きはじめる。


………


 いつも通り長い電車に揺られる事数十分。ようやく都市部に着いたリアは、ルナに案内されながら街中を歩く。そして学校のある方向へと数分歩き、とある建物の前で立ち止まった。


 寮と聞いていたので、俺は二階建てのアパートのような建物を想像していたのだが、そんな簡素な建物ではなかった。


 建物は、一言で言えば10階建てくらいのマンションだ。

 だが、建物自体は横に広く、外から窓がいくつも見える。


 玄関ホールは自動ドアになっていて、一階のメインホールらしき場所には赤い絨毯が敷き詰められており、壁は大理石のように白く磨かれた石でできている。さながら高級ホテルのロビーのようだ。


 更に、前方にはエレベーターらしきワインレッドの扉が3つあり、壁際には電子ロック式のポストがズラリと並んでいる。防犯対策も最新式だった。


「私の部屋は3階の隅なので、部屋番号は339です」


「多いな部屋」


「1000人は入れるように設計されているらしいですよ? ほんと凄いですよね」


 エレベーターに乗り、三階まで上がる。

 マンションの通路は、玄関とは違い普通で少し安心した。

 そのまま進み、建物の端の扉まで辿り着くと、ルナはポケットから鍵を取り出した。


「はい、お姉様。スペアキーです」


「ありがとさん」


 ルナから鍵を受け取り、差し込んで回すと、カチャリと解錠音が鳴った。ドアノブを掴んで回し引くと、重そうな鉄の扉は軽やかに開いていく。


「おー?」


 玄関は実家とは違い、洋風な雰囲気で統一されていた。

 壁は白い壁紙で明るい雰囲気があり、短い廊下の先には十字状で4箇所曇りガラスの嵌められた扉が一つ、右の壁には白い木製の扉が2つ備え付けられているのが見えた。


「奥がリビングで、右の扉は奥からトイレと洗面所にシャワールームです」


 靴を脱ぎ、ルナの説明を聞きながら奥に進む。

 リビング前の扉を開くと、そこには想像よりはるかに広いリビングが広がっていた。


 ここは某有名建築番組のように解説してみよう。


 なんという事でしょう。

 リビングの扉を開ければ、そこには広く明るい10帖程の空間が広がっています。

 床はフローリングで木の温もりを感じる1LDKのリビング兼ダイニングには、ピンク色のフカフカ絨毯が敷かれいます。しかも、その上にコタツを完備。前方の壁際には40インチもありそうな大きいテレビがあり、家族が団欒できる空間になっています。

左には広く光を取り込める大きな窓と洗濯物を干す為のバルコニーが見え、風通しも抜群のよう。

 更に、キッチンは学生が住む寮としては丁度いい広さで、冷蔵庫や電子レンジなどの家電も最新式。


 そんな清潔感溢れる内装ですが、所々匠の趣味や工夫が垣間見えます。大きな窓を覆う為のカーテンは、モノクロカラーで白い部分は猫のシルエットを形取っていたり、コタツ前にある木製の座椅子には唐草模様や猫の形をした白いクッションなどが置いてあったり。可愛い装飾品がアクセントとなっていて、なんとも心が温まります。


 そして、最後に寝室へと案内されました。

 寝室は6帖程の広さで、左壁際にある大きなダブルベッドが目を引きます。他にもベッドの脇にはサイドテーブがあり、白い傘を被ったテーブルランプが設置されています。

 右側の壁には大きめのクローゼットがあり小さいスペースで大量の服が収納でき、更に下着入れも完備されていました。

 最後に、前方の窓は小さいながらも効率よく光取り入れており、シンプルな寝室を優しい光で彩ってくれることでしょう。


…………


「……で、寝室は一つしかないと?」


 部屋の説明を聞き終わり、真っ先に浮かんだ質問をぶつけた。てっきり部屋が2つある事を前提に考えていたが、よく考えてみれば学生寮で部屋二つというのはある訳ないな。

 ルナはこちらの考えを肯定するように言った。


「ないですね。これで毎日一緒に寝れますよ、お姉様」


 うっとりした声で紡がれた言葉に、リアは返す言葉が思い浮かばなかった。


「むふふっ……楽しみですね!!」


 何が楽しみなんだ? とかは聞かない。きっと、聞かない方が幸せだろう。

 そうして苦笑いを浮かべていると、ルナは首元を撫でられた猫のように人懐っこい笑みを浮かべた。

 なんだかその笑みを見ていたら、不思議と何も言う気がなくなってしまう。

 少し脱力しながら、リアはポンとキャリーバッグを叩いた。


「……とりあえず荷物を置かせてくれ」


「はいっ、寝室のクローゼットを使ってください。あ、収納するの手伝いますね!!」


「お願いするわ」


 寝室のクローゼットを開くと、ルナらしい白や薄紫の上着やカーディガンに、赤や橙色に黄色などの配色が多いスカートやズボンなどの服が、ハンガーにかけられて綺麗に並んでいた。ルナの性格らしく、暖色が多いようだ。

 リアは家から引きずってきたキャリーバッグを開けて、クローゼットのハンガーを何個か手に取り服を掛けていく。服の全てがルナに選択してもらい買ったものだが、自分の服の殆どは水色や黒などの寒色系が多い。

 何故、暗い色ばかり? と聞けば「お姉様はクール系ですから!!」というイマイチ訳が分からない返答が来たので、もう考えず気にしない事にした。

 そうして、最後にクローゼットの近くに制服を掛けて収納は終わった。


「っんーっく。疲れた」


 軽く肩を伸ばしてから、疲れている時の癖で思わずベッドにダイブする。ベッドのマットはポフンと擬音がつきそうなくらい柔らかく身体を受けとめてくれた。倒れた事で掛け布団からはほんのりと柑橘系のような爽やかな香りが舞った。


 ベッドの上で大の字に寝っころがるリア。


 ルナはその上に覆いかぶさるように飛び込んだ。


「とうっ」


「っぅお」


 小さな掛け声と共に胸へとダイブしてきたルナを両手で受け止める。あまり衝撃はなかったので、カエルが潰れたような間抜けた声は出なかった。


「むふふぅー」


 ルナはこの前と同じように胸に顔を埋めている。頭が眼前にあったのでそっと頭を撫でると、さらさらの髪からシャンプーのいい香りがした。


「まったく……」


 ルナの頭を撫でながら、暫く寝っ転がった姿勢で目を閉じた。

 途中「スーハースーハー」と大きく息を吸い込む音が聞こえたけど、ツッコんだところで今更だろうと思い聞かなかった事にした。


…………


 時は進み現在、時刻は夜10時。


 夕飯を早めに済ませ、シャワーを浴びてから黒いネグリジェに着替えた。

 少しだけジャージを着ようか悩んだが、もういっそ開き直って女物の服を着る事にした。こういうのは早い方が踏ん切りがつくものだ。


 そして、特にする事もないので早めに寝る事にした。ルナも同じく明日は早いので、共に寝室へ向かう。

 ベッドに入って奥に詰める。後に続いてルナもベッドに入り込むと、ベッド脇にあったテーブルランプの電源を切った。


「じゃ、おやすみルナ」


「おやすみなさい、お姉様」


 一言就寝の挨拶を口にして目を閉じる。


 明日、いよいよ入学式。

 師匠から《結界魔法》と五大属性の魔法など沢山の魔法を学んだが、まだまだ知らない魔法は沢山あるし、変わった魔法を使う魔法使いも沢山いるだろう。それに、1年以上ぶりの学校だ。これからどんな風に学校生活を送るのかと考えると期待が高まってくる。


 そんな事を考えている間に、リアの意識は暗闇に落ちていった。

 そういや、寝床が変わると寝相が悪くなる癖があるんだけど、大丈夫だろうか。


……………


 この状況は……ど、どうすればいいのでしょう!?

 現在、私ことルナはお姉様の腕の中にいます。こうなった経緯は、私がお姉様にイタズラしよう接近した瞬間、何故か抱きしめられましたからなのですが。

 暖かな体温と柔らかい感触。それから甘い香りが私を包みます。

 起こしたのかと思い、暗闇に慣れてきた目でお顔を見ても、目をつむり心地好さそうにスースーと寝息を立てていました。どうやら無意識に抱きしめているようです。

 しかし、どうしましょう。これではイタズラができません。

 身動きをしようにもがっちりホールドされてしまっていますし。

 まぁ、別に抜け出したいとは思っていませんけどね。むしろずっとこうしていたい程です!!

 それにしても、お姉様の腕の中にいると何だか心が落ち着きます。まるでお母様に抱きしめられているような……。

 ハッ!! これが俗に言う『母性』というものでしょうか? ならば、この歳で既に母性満載のお姉様は流石ですね。もしかしたら、学校に行ったらかなりモテるのではないでしょうか。ただでさえ美少女なのに、追加でお兄様のような頼もしさと、母性満載の無防備な笑顔が加われば完璧と言わざるを得ません。


 そんな事を考えていると、お姉様が足を絡めてきました。

 やばい、ドキドキしてきました。なのに溢れ出る母性のせいでとても落ち着きます。なんですかこの感覚、私の少ない語彙の中では、頑張っても『なんか凄い落ち着く』とチープな感想しか出せません……。


 しかしながら……ふー、今日は良い夢が見れそうですね。

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