今日の私は、天気次第

温故知新

第1話 曇り

『今日の天気ですが、午前中は曇りで、午後に一時的に激しい雨が降りますが、夕方頃には晴れそうです』


 仕事の出勤前、毎朝目にするニュースから流れてくる気象予報。



「良かった~。今日は午後から外回りがないから助かった~!」



 朝の支度をしながら、流れてきた天気予報に思わずガッツポーズをする。


 もともと午後から取引先と打ち合わせをする予定だったけど、昨日になって急遽、午前中に変更になったのだ。


 あの時は『土壇場で変更とかどういうこと!? それも、上司が勝手に了承してるとか意味わからないんだけど!』と心底恨んだけど……ありがとう、クソ上司。


 普段は怒鳴ってばかりで全く尊敬していないけど、今日だけは素直に感謝しておく。



「それにしても、変な天気ね」



 午前中は曇り、午後は雨、夕方には晴れ。


 これも、地球温暖化の影響なのだろうか。



「あっ、そろそろ行かないと間に合わない!」



 天気予報のあとに流れた今日の運勢が最下位だったことに少しだけ気分を落としつつ、私は慌てて外に飛び出した。


 外は、予報通りの曇り空。


 なんだか、今日の私みたい……なんちゃって。


 そんなことを考えながら、一人暮らしのアパートを後にした私は、いつもの電車に間に合うよう駅まで全力で走る。


 この一日が、天気に大きく左右されることになるなんて、この時は知る由もなかった。


◇◇◇◇◇◇



「それでは、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」



 いつもの時間に会社へ出勤し、しばらくしてから後輩と共に取引先に向かった私は、思った以上に打ち合わせがスムーズに進んだことに内心満足していた。


 前回は要望がかなり多く、時間も大幅に押してしまったから、今回も長引く覚悟はしていた。でも今回はオーダーも控えめで、想像していたよりも早く終わったのだ。



「良かったですね、先輩。連日残業した甲斐がありましたね」



 同行していた後輩にそう言われ、私は思わず涙ぐんでしまった。


 そう、ここ最近はこの日のために、他の仕事を抱えながらも残業して準備を重ねてきた。


 後輩はそれをちゃんと知っていて、時には自分の仕事を後回しにしてまで手伝ってくれたのだ。



「君のおかげだよ。ありがとう」

「いえ、先輩のお役に立てて光栄です」



 この後輩、本当に嬉しいことを言ってくれる。


 今度ご褒美に食事でも――って、待って。今って、場合によってはハラスメントになるんだっけ。気をつけないと。



「先輩、どうしました?」

「え、あ……あはは。そろそろお昼だし、一緒に食事でもどうかなって。君も自分の仕事があったのに、よく私の手伝いをしてくれたから、そのお礼として」



 って、何を言ってるの、私!?


 今、気をつけようって思ったばかりじゃない!


 すると、後輩の目がぱっと輝いた。



「い、いいんですか!?」

「え、あ……うん。君が良ければ」



 次の瞬間、後輩は満面の笑みを浮かべる。



「是非! 実は、先輩と一緒にランチに行きたかったんですよね~!」

「そ、そうだったの!?」

「はい! 先輩のお話、聞いていて本当に面白いですし、すごく勉強になりますから!」

「そ、そう……」



 私、そんなに面白くて勉強になる話してたっけ?


 仕事中に少し話したり、休憩中に雑談したりはしていたけど……。


 そんなことを考えつつ、どんよりとした曇り空を見上げながら『テラス席はないかな』なんて思い、私たちは行きつけのカフェでランチをすることになった。


 そして、ランチに大満足した後輩から『今度、また行きましょう』と言われてしまた。


 この後輩、本当に可愛いな。


 そんな微笑ましい気持ちは、会社に戻った途端、あっさり消えてしまったのだけど。

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