第13話 13.対話
学院長の瞳は心の底まで見透かすようであった。
誠一は意を決して、聞かれたことだけを話した。
「心の底から、言葉が溢れてきました。
目の前の女性、リシェーヌを犯せ、殺せと。
拒否しようとすると、身体が軋むように痛くなりました。
身体は自分の意思と関係なしに動こうとしていました。
学院長が何かをされましたら、身体が楽になって、
意識を失いました」
「そうか、そうであったか。
悪しき神に纏わりつかれているようじゃの。
その言葉に従えば、恐ろしき力を得ることができたが、
よう耐えたのう。
神が去るか、神の御心が変わるか、
そうしないとこれからも似たような啓示が続くであろう」
あんなことがいつ何時起きるかと思うと
誠一は暗澹とした。そして、それが表情に現れていたのだろう。
「図らずも己の信条・信念と相容れぬ啓示を受け、
それに屈しない性根はありそうじゃな。
かなり高価であるが、このアミュレットを
常にかけておきなさい。
かなり和らげる効果があるはずじゃ。
無償ではないぞ、稼いで支払って貰おうかのう」
学院長の柔らかい表情が一先ず、誠一を安心させた。
お礼を言い、アミュレットを受け取った。
「ふむ、では体調に問題がなければ、宿舎に戻りなさい」
学院長の当初の目的が果たせたのだろう、
杖をゆっくりと動かし始めた。
「すみません、最後にお答えください」
「魔術師になぜ、あれ程、運動を強要させるのでしょうか?」
学院長は杖を止め、愉快そうに答えた。
そして、過去に何度も繰り返した答えを伝えた。
「ふむ、体力が尽きれば、魔術どころではないであろう。
迷宮や戦の最中にばてる様では役に立てぬ。
それに何時間も詠唱が必要となる魔術行使において、
体力がなければ、詠唱を続けること叶わぬ。そうであろう」
学院長は右腕に持つ杖を床に置いた。
ごとり、杖が床にぶつかるとそんな音が響いた。
一体、何キロあるのだろうかと誠一は思った。
そして、学院長は右腕のローブをめくり、
筋骨隆々の腕を見せつけて、力こぶを作って見せた。
ニカッと白い歯を見せて、笑っていた。
「これはやりすぎだろうー」
と誠一は学院長の筋肉を見て、心の中で叫んでいた。
誠一に止めを刺すかのうように学院長は言った。
「ちなみにこの杖は、筋トレ用ね。
20㎏あるよ。さてと戻るかのう」
口をあんぐりと開けて、驚いている誠一の反応を楽しむと、
学院長は優雅に杖を動かし、一陣の風と共に消え去った。
「ないわー。魔術師ないわー」
ここ10年ほど前から、森の国(ヴェルトゥール王国)の魔術院は、
脳筋魔術師が数多く輩出されることで、
近年、多くの国の話題に上がるようになっていた。
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