第6話 6.暗殺
アルフレートは半ば強制的に馬車へ
乗せられて、出発した。
雨の降りそうな曇った天気のためか
見送る人は誰一人いない出発であった。
王都への旅は、晴天に恵まれない日々であった。
馭者を含む護衛5人がアルフレートに付き添って旅をしていた。
アルフレートとは面識のない人達のために、
ほとんど会話らしい会話もなく、馬車は伯爵領を通過し、
緑の国の直轄領に入った。
馬車より見える風景はさほど変わらず、
天候も曇りが続いていた。
直轄領に入り、馬車の外の馬の足音が
賑やかになってきたようにアルフレートは感じた。
ぼんやりとそんなふうに感じていると、
馬車が突然、停止した。
そして、馬車のドアが開かれた。
「よう、坊主、表に出ろや。ここで、終いや」
「十分に楽しんでの結末なら、満足だろうよ」
「こんなに覇気のない奴はなかなかいないぜ」
「可愛らしい坊やを殺すよりええだろう」
8人ほどの下衆の極みを絵に描いたような
野盗どもが馬車の外から、言いたい放題、言っていた。
そして、アルフレートは、無理やり馬車より引き出された。
腹部に一発、強烈な蹴りを加えられて、地面に転がされた。
「めんどくせえ、さっさと殺せ」
切れ味の悪そうな剣を振り上げた。
護衛たちも野盗に混じり、止める素振りすらしなかった。
アルフレートの目は、引き攣り、身体は、震えていた。
「違います、違います、違います。
僕はアルフレートではありません。
違うんです。助けてください。
うぐうっ、ぐぐっ。くっ苦しい。ぐげぇ」
後半は、ほとんど言葉になっておらず、
苦悶の表情で獣が唸るような呻き声を発していた。
「おい、こいつ、正気か?
まさかと思うが、呪われたりしないよな」
野盗の1人が苦しむアルフレートを
見ながら、護衛に尋ねた。
「ありえないかと、13歳のガキが
そんな高度な魔術を行使できる訳ありませんよ。
さっさとしてください」
しかし、アルフレートの眼と常道を逸した
苦しみ方を野盗たちは、薄気味悪く感じ、動けなかった。
「ふう、仕方ありませんな。所詮は、野盗や野盗か。殺せ」
5人の護衛が抜刀し、野盗どもに斬りつけた。
突然のことに野盗たちは、対処できずに
斬り殺されてしまった。
死体は、血を吹き出し、地面に血だまりを作った。
ぽつりぽつりと降り始めた雨が血だまりを拡げていった。
「さてと、残りはアルフレート様、あなたです。
聡かったあなたのことだ、理解されているでしょう。
あなたは王都へ向かう道中で不幸にも
野盗に襲われて、行方不明になるのです。
死体が残ると少々、めんどくさいことになりますので、
死体は見つからないように処分させて貰います」
心に囁かれる声に身を任すと、苦しみが和らいだ。
そして、転がる死体を見ながら、アルフレートは思考を
巡らして尋ねた。
「まっ、魔術院への入学手続きは終わっているのですか?」
「今更、そのようなことを気にされてどうしますか?
ええ、終わっていますよ。
何もなく突然、王都に向かうのでは、痛くもない腹を
探られるでしょう。全ては整っています」
「そうですか、ありがとうございます」
アルフレートは溢れ出る力に身を任せて、彼等を攻撃した。
本を読むような感覚で記憶にある魔術を唱えた。
「万物を燃やし尽くし、全てを原始の元へ誘え。
ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー」
5発の炎の塊が護衛たちみ向かった。
「馬鹿か、こいつは!
魔道具もなしにまともに魔術が
紡げると思ってるのか!」
炎の塊は、確かに鈍く、彼等に一発も当たらなかった。
しかし、当たった周りには、激しい黒煙があがり、
元護衛たちを包んだ。
「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー、
ファイヤー、ファイアーファイヤー」
アルフレートは続く限り炎魔術をリロードし、
彼らの周りに打ち込んだ。
その時間、約30分であったが、
彼等は、連続で打ち込まれる炎の塊より
噴き出る煙に巻かれてしまっていた。
そして、アルフレートに彼らの激しい咳き込みが聞え、
嘔吐する響きと共にその場に倒れ込む音がした。
「はぁはぁはぁ」
アルフレートは、魔術を唱えることを止めた。
煙が風に流されて、次第にその場の状況を
確認することができた。
5人の倒れている元護衛、彼等に斬り殺された野盗の類。
暫く彼らを見つめていたが、彼等に近づいて、
武器や金目になりそうな物を漁り、馬車に積み込んだ。
馬車を御する方法を記憶のページから読み込むが、
大して知ることが出来なかったが、
その情報を頼りに駄目元で操作すると、馬たちは走り出した。
護衛や野盗の馬は、いつの間にか逃散していた。
1人で旅を続け、王都を目指した。
王都に近づけば近づくほど街道に人々は増えていった。
そして、彼の眼に王都を象徴する主城が映った。
街道を往く人々の視線を気にせず、
彼は、狂ったように笑い、泣いていた。
アルフレートのおぼろげな記憶のページから
主城の雰囲気は知っていたが、
それを必死に否定している自分がいた。
記憶にある地域の名称は似ていたが、
主城の名の違いから、自分を納得させていた。
しかし、眼前に映る城はそれを完全に否定していた。
否、彼が薄々、感じていたことを肯定した。
泣き笑い疲れた鈴木誠一は、絞り出すように呟いた。
「なんで俺は、ゲームの世界にいるんだ」
あの主城はバッシュと4人の高ランクの
キャラクターが戦を交えたところであった。
半壊した城は若干の造りが変わっていた。
しかし、それは彼が画面越しに見ていたものと同じであった。
無表情のまま、彼は馬車を進め、
王都にあるエスターライヒ邸を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます