世界が完全に凍りついたとき、人類は何を失い、何を手放さなかったのか。
この物語は、極寒の地球を舞台にしながら、壮大なSFであると同時に、きわめて人間的なドラマとして幕を開け、そして静かに、力強く終着点へとたどり着く。
序盤では、荒廃した氷の世界と、そこで“運び屋”として生きる主人公たちの日常が提示される。命が軽く、合理性がすべてを支配するはずの世界で、彼らが選んだ仕事はあまりにも不釣り合いだ。だがその違和感こそが、本作の核心への入口となる。何気ない依頼、軽妙な会話、淡々とした移動──それらの裏側で、世界は確実にきしみ始めている。
物語が進むにつれ、舞台はより広がりを見せる。凍結地球の成り立ち、強化された身体を持つ者たち、長命の存在、そして人類が選び続けてきた“進化”の形。銃火と戦術が交錯する緊張感あふれる展開の中で、本作は決して派手さだけに溺れない。戦いの理由、選択の重さ、仲間との距離感が丁寧に積み重ねられ、物語は着実に深みを増していく。
やがて物語は、驚くほど無駄のないかたちで収束へ向かう。すべてを説明し尽くすことなく、しかし放り出すこともない。世界の行方以上に印象に残るのは、登場人物たちが「何を背負い、何を運び、何を手放したのか」という一点だ。クライマックスは派手な爆発よりも、静かな決断によって語られる。その選択が胸に残るのは、ここまで積み上げられてきた関係性と感情が確かに存在するからに他ならない。
本作の魅力は、過酷なSF世界の中に、妙に温度のある瞬間が息づいている点にある。凍てついた大地で交わされる冗談、無意味にも思えるこだわり、効率とは無縁の行動。それらはすべて、人間が人間であり続けるための証明だ。読み終えたとき、読者はこの世界の寒さよりも、そこに確かに存在していた“ぬくもり”を思い出すだろう。
氷の惑星を駆け抜けたその先で、あなたはきっとこう思う。
――これは、ただのSFではない、と。
遥か未来、ウッカリ全球凍結してしまった地球。
だが、人類は未だ生きていた。
全身サイボーグ化したフルボーグなどのサイボーグ化した人々。
片や、金の力にモノを言わせ数百年生き続ける生身の人間である、メトセラ。
それぞれの思惑が交差し、ある日、主人公達は「ピザの配達」を行う。それが全ての始まりだった——
SFにミリタリー要素、そしてこれでもかとまでトッピングされた個性豊かな登場人物たち。それでいてクドくない。最初は身構えてしまうかもしれないが、気づけば次の話を読みたくなる作り。作者の作劇術が素晴らしい。
サイバーパンク、ミリタリーモノにありがちな不必要なまでの登場人物がいるでもなく。主人公であるムーラと、その相棒ミラグロスの掛け合いは、常に心地よい。
読了後の清涼感も良く。図書館のヤングアダルトコーナーに納められるべきは、こういった作品の様な気がする。
完結までの二十二話、最初の数話こそ少し固めではあるものの、そこを乗り越えればあっという間に作品世界に魅了されること間違いなし。