番外編「フェンのグルメな一日」
吾輩はフェンリルである。
かつては世界を震え上がらせる災厄の狼だったが、今はノアの愛犬「フェン」だ。
「わんっ!(飯だ!)」
朝、ノアが窓を開ける音が合図だ。
吾輩は尻尾を振り回して食堂へダッシュする。
今日の朝食は、朝採れトマトのサラダと、ジャガイモのポタージュ、そしてカボチャのパンだ。
ガツガツガツ。
美味い。美味すぎる。
このトマトの酸味と甘味のバランス、ジャガイモのクリーミーな舌触り。
魔力だけじゃない、愛情という名のスパイスが効いている。
これを食べてしまうと、もう人間の肉なんて臭くて食えたもんじゃない。
「フェン、食いしん坊だなあ」
ノアが苦笑しながら、吾輩の頭を撫でる。
この手がまたいい。
【土壌改良】の魔力が込められた手で撫でられると、毛艶が良くなり、肩こりも治るのだ。
昼間は畑のパトロールだ。
最近は、新入りの「緑竜(元・腐食竜)」が上空を飛んでいるので、吾輩の仕事はほとんどない。
たまに畑に迷い込んだ虫けら(強力な魔物)を、「ワンッ!(失せろ!)」と威圧して追い払うくらいだ。
奴らも、吾輩のオーラを感じて一目散に逃げていく。賢い選択だ。
午後は昼寝。
ノアが作った、日当たりの良いウッドデッキがお気に入りだ。
シルヴィアがたまに、ブラッシングをしてくれる。彼女は吾輩のことを「もふもふ様」と呼ぶ。悪くない響きだ。
そして夜。
今日は収穫祭だ。
広場に大きな焚き火が焚かれ、冒険者たちが肉や野菜を焼いている。
吾輩の目の前には、特大の骨付き肉(野菜ソース漬け)が置かれた。
「フェン、いつもありがとうな」
ノアが隣に座り、一緒に夜空を見上げる。
ここに来て本当によかった。
誇り高い狼としての生活も悪くなかったが、こうして美味いものを食い、暖かい場所で眠り、大好きな主人と過ごす日々は、何物にも代えがたい。
吾輩は夜空に向かって、幸せの遠吠えを上げた。
「わおーーーーん!(おかわりーーー!)」
平和な夜が更けていく。
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