正直に言うと、この作品は難しい。
何故なら、
人はなぜ生きるのか。
何故存在するのか。
人の一生とは何であるのか。
死とは何なのか──。
そんな、誰もが考え、誰もが明確な答えにたどり着けない問いをとりあげているからである。
それでも、この作品は面白い。
それはわたし自身もまた、その問いを考え、答えにたどり着けていないからだろう。
本作では2人の人間の間で、時を変え、場所を変え、人を変え、言葉を変え、様々な対話がなされる。
繰り返し、繰り返し、繰り返しなされる対話は、まさしくカノンである。
「ねえ、死とはなんだろうね」
「死んだら、我々はどこに行くのでしょうか」
この問いに、あなたならなんと答えるだろうか?
答えはあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
或いはそれは、「生」や「死」に対する、“心の持ちよう”なのかもしれない。
かつて、真理の探求に対話を重要視した人がいた。
ひとりで考えるより、対話という形をとったほうが、より深い探求ができるような気がする。
読むと、この作品に登場する人々と共に対話し、今一度この問いに対して考えてみることができる。
ぜひ、ご一読いただきたい。
人はなぜ死ぬのか、死んだらどうなるのか、そもそも何故生まれて来るのか、何の為に生きるのか、どうして世界はあるのか、宇宙は?
生きていれば恐らく誰しも抱くであろう疑問が、さながらトランプの札をそっと並べて行く様に、さりげなく様々な角度から焦点を当てて並べられて行きます。
その内自ずと読む者はその疑問が積み重なって行き、「自分は……」と深い自問に沈み込んで行く。
扱うテーマもさることながら、読者を自然にそこに誘導して行く仕掛けが実に上手いなあ、と。決して押しつけがましく、読者の方から近付いて行く様に思わせると云う。
こういうやり方も有るんだ、と、勉強になりました。