対話篇もしくはカノン

青切 吉十

デッドボール

時刻:日曜日の午前九時

場所:神宮外苑の軟式グラウンドの一塁ベース付近

人物:ちがうユニフォームを着ている二人。ランナーのAとファーストのB


 ピッチャーの投げたボールがすっぽ抜けて、あわや死球となりそうになるも、バッターがうまくよけたとき、AがBに言った。

「ねえ、死とはなんだろうね」

「何だい、急に」

「いや、何となく、思いついてね」

「死ぬっていえば、まあ、とりあえず、この世から消えることだろうね。これはまちがいない」

「そうかい? 幽霊になったり、思念だけが残ったりはしないのかな」

「幽霊? きみはそんなものを信じているのかい」

「断言はできないな。百パーセントいないとも言えないし、百パーセントいるとも言えない」

「そりゃあ、大半の人はそうだろうよ」

「死んだら、どうなるのだろうね」

「さあな。平日働いて、土日に野球をしていれば、いつか行くことになるのだから、いまから考える必要もないのではないかい」

「そりゃ、そうかもね」

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