放課後の図書館に、「返却期限が“昨日”」の本だけが並ぶ棚がある——そんな都市伝説から始まる短編。夕焼けの渡り廊下の軽口と、人気のない館内の静けさの対比が気持ちよくて、いつの間にか背筋がすっと冷えます。
特に良いのが、“影”の描き方。老婆にも幼子にも姫にも花魁にも見える曖昧さが、怖さよりも不思議な切なさを連れてくるんですよね。浮かぶ本、読んでないのに流れ込む記憶、「言霊」というワードが全部つながって、世界観が一気に浮き上がります。
ホラーっぽいのに、読後に残るのはじんわりした余韻。「昨日」「明日」「何もない」という言葉が、誰かを救う/消してしまう境界線になっていて、ラストの一文が胸をきゅっとさせます。短いのに映像が浮かぶ、静かな怪談(+やさしい祈り)を読みたい人に刺さるはず。