お天気回路 ~夢みる妖精とゴーレムのみる夢【オムニバス短編】~

そうじ職人

第1話 科学的魔導回路の開発

「これは! 本当に凄いな。これって、前に説明したかみなりの原理を魔導回路に作り直したんだね」

 一ヶ月ぶりに、この聖なる森に訪れた「あの人」はビックリした表情でアタイの作った魔導回路を見詰めていたわ。


「アタイだって、ただフラフラしてた訳じゃないのよ」

 プリシラは瑠璃色に透き通る羽根を羽搏かせながら、得意気にあちらこちらから研究中の魔導回路を持ち寄る。


「これなんかあなたの言ってたキ、キショウ? 何だったかしら」


「言い難かったら、『お天気回路』とでも呼ぶと良いよ」

 優しい声がフォローしてくれる。


「そうね。そのお天気回路から、この水エーテルの導線で電気をこの改良型の『魔晶石』に繋いでいるのよ。ここで分岐させて……」

 プリシラは夢中になって、魔導回路の説明をする。


「それと、これを作るのだって大変だったんだから!」

 自慢気に長いコードを見せる。

 プリシラが丸めて抱えている先には、現代人が見慣れたUSB-typeCコネクターが付け加えられている。全て純金製の逸品だ。


「この金属の板切れ……トマトの穴にピッタリ合わせるのに苦労したんだから!」


「トマトじゃなくて、スマホだね。しかしこんな凄い精密な加工がよく出来たね」

 「あの人」が端子の構造を熱心に観察している。


(ヤバッ! 勝手にアタイがしちゃったことがバレなければ良いんだけど)


「こ、この間たまたま聖なる森に、流れのドワーフがやって来たのよ。本当にたまたまだったのよ。ドワーフだって科学の知識は空っきしだったわ。だけど僅かな滞在中に、こんな精密な金属加工をしちゃうんだから! さすがよね。盛んに『こいつは職人の腕が疼くわい』なんて言ってるのよ」

 プリシラは、しかめっ面でドワーフの声音を真似て見せる。

 

 二人は顔を見合わせると大声で笑い合う。

 

「今回はドワーフが訪れたのなら、この聖なる森も徐々に昔のように賑やかになるのかも知れないね」


 すると、あらぬ方向から声が聞こえる。

「ソウデスネ。わたしもソウナルト確信シテイマス」


(ヤバッ! そう言えばトマトの電源入れっぱなしだったわ)


 驚いた「あの人」は俊敏に辺りを見渡して、直ぐに声の発声源を特定する。

 それは直ぐ脇に横たわるゴーレムから発せられた音声だった。


「アハハハハ! 大丈夫よ。大事な電気は、この回路で生み出したものしか使ってないから」


 アタイも咄嗟のことで、適当な言い訳で誤魔化しちゃったわ。

 だけど「あの人」真剣な顔をして、ゴーレムに問い掛けてるの。


「君は誰なんだい? それとどうして、確信できるのかな?」


「ハイ。わたしのナマエハ『トマト』デス。プリシラ様からナヅケテイタダキマシタ。わたしのナカノ『風のエーテル元素』をアツメテイル魔法陣のエイキョウで風の精霊がタクサン、ウマレテイマス。ソノ風の精霊がコノ聖なる森のヘンカをトキドキ、オシエテクレルのでアリマス」


 ぎこちない低音の合成音声が、静かな聖なる森に僅かなデジタルノイズを乗せて響き渡る。



***



※連作前話:祝いの意味 ~夢みる妖精とゴーレムのみる夢【オムニバス短編】~

 https://kakuyomu.jp/works/822139842318022815

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