ep.12
「お父様、あれは異物です」
「お父様、あれは邪魔物です」
「「ゴミ屑のロクデナシは排除するに限ります、お父様」」
「すごい言われてんね、お前」
目の前の女性、クランに対してガルルと唸る2人をなんとか抑える。
「まぁ、そう言われても仕方がないかな? 一応君たちを創ったのはボクなんだけどね!」
「んじゃこのトランプもか?」
「そう! キミがリニダーの街にあった道具屋で解体ナイフを買った時にこっそり忍ばせておいたのさ! いやぁ、あの時はヒヤヒヤだったよ……隣にいる勇者様にいつ気づかれるってね!」
あの時か!
人も多かったし、そんな気配すら分からなかったが……まさかミウロゥも気づかなかったとはな……
「ミウロゥ?」
さっきからずっと黙りを決め込んでいるミウロゥの方を見てみると、
『随分とやらかしてくれたね、道化師』
「ありゃりゃ。気づいちゃった? 分かるかー、さすがに分かるよねー? おっひさー、勇者様」
「……知り合い、か?」
『そんな生易しいものじゃないよ。昔……殺し損ねた相手なだけ』
だけってお前……
「いやー、あの頃はホントに色々あったんだよ。ボクも情報屋としてあちこちの酒場を先回りしてさぁ、君たちに情報を優先で流してあげたのにねぇ?」
『確かに世話になったことは多かった。でも』
剣を構えるミウロゥ。
なら敵か。
俺もトランプを掌に出していつでもトランプの兵士を出せるようにしておく。
「困ったなぁ。い、ま、の、ボクは君たちの味方だよ! ホントホント、ウソついてなーい」
『……じゃあなんでリベットに目をつけたの』
「一目見て惚れちゃった。ただそれだけだよ」
『最後に背中から刺すつもり?』
「愚問だねぇ。ボクが惚れた相手を刺すおバカに見える?」
『やられたから言ってあげてるの』
「そうだったそうだった。いやぁ、あの時はごめんねぇ? 何しろあの邪神様の手下だったものだからさぁ、ボクもやりたくないって駄々こねたんだけど、ねっ!」
言い終わるちょうどその時にミウロゥの剣をステッキで弾くクラン。
い、いつの間に……
「まだ話の途中じゃ〜ん。人の話は最後まで聞きなさいって教わらなかった〜?」
『生憎とそんな生温い人生を送ってないからね』
「というかいつの間にか喋れるようになってるじゃん! 良かったねぇ〜、あの子が多分勇気を振り絞った結果なんだろうけど」
『……お前』
「いつまでもウジウジとあんな村に閉じこもってさぁ。村にいた君を見てボクはビックリしたよ。あの勇者様が! 引きこもりになってる! なんて誰が予想できるのさ」
クランの言葉に対して言い返さないミウロゥ。
俺も参戦するべきか……
「いやぁそれにしても良かったじゃん。リベットが居なかったら君は永遠にあの村でずーーーーーーーーーーーっと閉じこもっていたわけでしょう? そんなのつまらないじゃん。あの頃の君はもっと生き生きしてたのにさぁ。あ、今は違うか。良かったねぇ〜、勇者様?」
カードを引く。
引いたカードはダイヤのジャック。
カードは勝手に俺の手から少し離れて光って消えた。
消えたその後には、鎧の騎士が俺の前に跪いていたを
「ここに参上致しました、我が主。どうかご命令を」
「アレを捕縛してくれるか?」
「かしこまりました」
跪いていた鎧の騎士はクランの後ろに突然現れると、
「失礼。少々手荒になりますが」
「んなっ!?」
どこから取り出したのかロープでクランを雁字搦めに縛り上げた。
「うわっ、面倒な縛り方しちゃって! ほーどーけーよー!」
「よく見れば我が創造主だったか。貴様のような塵芥が今こうして生きているのは我が主の慈悲あっての事。恥を知れ」
「いやぁ、仕方ないよねー。お気に入りのあの子が面白くないことしてたんだもの。ちょっとくらい憂さ晴らししちゃうのは仕方ないよ、うん」
とりあえず捕獲したし、しばらく動かなさそうだから
「リルナ、レルナ」
「「はい、お父様」」
「アレで遊んできてもいいぞ。遊ぶだけだぞ」
2人は1度顔を見合わせてから俺にお辞儀をしてクランの元へトテトテ走っていった。
「大丈夫か、ミウロゥ」
『……大丈夫。言われたことはホントのことだし。それに』
そこで言葉を切って芋虫のようにウゾウゾしているクランを見ると、
「ちょっ! やめ、やめなさいって! そんなことしちゃいけないってパパに教わらなかったの!?」
「お父様は仰りました、この世の悪を悉く滅ぼしなさいと」
「お父様は仰りました、ゴミはちゃんとゴミ箱にぶち込みなさいと」
「「分かりましたか、ゴミ屑。分かったのならさっさとお父様に忠誠を違うのです」」
「こらこら、ジョーカーよ。そのようにツンツンしてはいけないよ」
ジャックが止めに入った。
別にあの程度ならいいと思うんだが……
「このようにもっと力強く、突き刺すように、振り下ろさないといけないよ」
「流石はジャック、勉強になります」
「ジャックの言う通りなのです」
「「では実践します。覚悟しなさい、ロクデナシ」」
「ちょっ、やめ! ぎゃあ!」
……まぁいいか。
『アレ見たらスっとしたしね』
「そうか。ならいい」
ちなみにマエロが戻ってきた時も特に止めることは無かった。
何やらかしたんだ、あいつ……
「いやぁ……酷い目にあったよ……」
「ピンピンしてる奴が言うセリフじゃないと思うんだが……」
しばらく遊ばせた後にようやく席に着いた俺たち。
ジャックはついさっきカードに戻ったが……レルナやリルナとの違いってなんだろうな。
名前か……?
「ククク……いやはや随分と面白いものを見せてもらった。どうだ? これから定期的に冒険者ギルド・リニダー支部に公演に来てはどうだ?」
「ボクの身体が持たないからお断りでーす!」
両腕をクロスさせてバツをつくるクラン。
「だろうな。まぁそれはいいとして、報酬の件だ」
『たっぷり支払ってもらえるんだろうね?』
「そう焦るな。まずはこれだ」
机の上にドンと袋が置かれた。
音の重さからそれなりに入ってそうだな。
「満月花の採取、依頼人への受け渡し、この2点に加えて、護りの獣・プロテージャーの撃破、初心者でまともに戦闘訓練を受けたことの無いリベットを巻き込んだことへの詫びも含めて、計5000セーリだ」
「随分と……貰えるんだな……」
「言ったろう、詫びだと。そもそもあの森に初心者が入ること自体危険なんだ。巻き込んでしまって悪かった」
「そうだそうだ。なんならもっと巻き上げてもいいんだぐぅ」
『黙ってて、道化師』
茶化しに入ったクランの顎にミウロゥが剣の柄の先を思いっきり当てて止めたが……
まぁ、クランだしいいか。
「なら有難くいただくか」
「そしてこれは私からの個人的な物だが……」
そう言って追加で出てきたのはカード?
「王都限定ではあるが、どの店でそのカードを使っても支払いが私に来るようになっている。1度限りだがな」
「……いいのか? これだけで十分満足なんだが」
袋を少し持ち上げるが、マエロは首を横に振る。
「そこの情報屋から話は聞いている。危うく死にかけたそうじゃないか。プロテージャー自体はミウロゥが何とかしてくれる自信があった。だからこそ安心しきっていた。が、戦闘訓練を受けてもいないお前を送り出すべきではなかった。お前たち異界人は死んでも再び戻ってくるのは理解している。理解していてもな……」
「……そういう、ことか」
カードを手に取る。
【支払いカード】
〖黒く特に何も書かれていないカード。王都限定で店での支払いを1度だけマエロが肩代わりする〗
「どんなものでもいいのか?」
「もちろんだ、と言いたいところだが、土地とかはやめてくれると助かる」
「えっ! ボクとリベットの愛の巣計かがぁ」
『その顎、砕かれたいの?』
そっちは任せたぞ、ミウロゥ。
「いやそんな高価なものを買うつもりは無いが……馬車が気になってな」
「馬車か……確かに人数も増えたことだ。そういうことなら私にツテがある」
「馬か?」
「ギルドで販売しているんだ。本来は銀クラス以上の冒険者にしか販売しないんだが、ミウロゥがいるからな。上層部も喜んで差し出すだろう。荷台の方はそのカードで仕立てるといい」
これで旅の足はGETしたな。
『馬より竜の方が速いのに……』
「勇者様さぁ、馬は荷と人を運べるけど、竜は人しか運べないじゃん。そんな違いも分からないでボクのリベットといっじょぉ」
『次に余計なことを口走ったらその口、斬るよ』
そろそろ学習したらどうなんだ……
「さて、では私は馬の用意をしておこう。お前たちはどうする?」
「とりあえず荷台の方を見に行こうかと。ついでに王城もちょっとな」
「あそこは庭までなら一般開放している。綺麗に咲いているから見応えがあるだろう」
そう言って立ち上がるマエロ。
「私はリニダーに戻らないといけない。用事が一通り済んだらここに戻ってくるといい。受付には伝えておく」
「そりゃ助かるよ」
マエロが退出して部屋はしばらく静かだった。
はてさて一体何から聞くべきか。
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