ep.4
そのあと夜通しでパーティをすることになったが……まぁ色々あった……
初日にしては随分と濃すぎたが、俺は一旦ログアウトすることに。
最初にVSWの話を聞いた時は、たかがゲームだろうと高を括っていた。
だけど、どこまでもリアルで、それでいてNPC……あっちの住民にもそれぞれ過去があって、みんな前を向いている。
空を自由に泳ぐ鳥に昔は憧れていた。
憧れは夢になり、いつからか、自由に旅をすることを夢に見ていた。
大人になってから自由がなくなって、結果として潰れたが。
「……まっ、言ってても仕方ねぇか」
1つ伸びをすると、軽く身の回りを整えてから、再びフリヘイトの世界へ飛び込んだ。
『おかえり、リベット。異界人は意識が無くなるように眠るって本当なんだね』
「ただいま、ミウロゥ。そう、らしいな。俺も他の異界人と会ったことがないからわからねぇけど」
「待っていたぞ。森を抜けた先にリニダーという街がある。そこならお前と同じヒト族が多く集まっているし、少しは情報も集めやすいだろう。森を抜けるまでは俺たちがお前を守るから安心しろ」
「助かるよ、セトル」
家の外にでると、他の3人が準備を終え待っていた。
「あそこに森が見えるでしょ? あの森が今では迷いの森って言われてるんだ」
「俺とチミっ子がいりゃ、モンスターは問題ない。道もセトルがいるから迷うことは無い。つまり、安心してリニダーの街に行けるって訳だ!」
確かに村の外には木々が生い茂っている森が見える。
というかチュートリアルでこんな所に迷い込むってどうなってるんだ?
「時々あなたみたいに初めてここに来られる方もいらっしゃいますよ? と言っても両手で数える程度でしかありませんが……」
「ん? ヘクサは俺みたいなのは初めてって」
「それはそうですよ。何しろ彼女がいない時に来るのですから。ですので、私が丁重に街まで送り届けていましたよ」
知らなかった、みたいな顔をしてるチミっ子はまぁさておき。
「で、あの迷いの森の奥に異界人が入り込むのか」
「あの森の奥には何も無かったと思うんだがなぁ……まぁ機会がありゃ行くこともあるだろうよ」
ポリポリと頭を掻きながらミルリが呟く。
面白そうであればそのうち行ってみるか?
「それじゃ行くか」
セトルを先頭に森へ入っていく。
迷いの森とは言ったものの、特に薄暗い訳でも無く、霧がたちこめている訳でもない。
陽が木々の間から射し込んでいて、むしろ森林浴として最適なのでは?
「この森は認めた者以外を迷わせる性質がある。俺とミウロゥはこの森に認められているから決して迷うことは無いし、他の3人も認められるまではいかないが、俺たちの仲間ということで特別にお目こぼしをもらっているんだ」
「……まるで森が生きているみたいだな……」
「……まぁ、ちょっとした秘密があるんだ。もしも奥に興味があるならいつかミウロゥと共に行ってみるといい。あそこは中々いいぞ」
『まぁあるのって花畑くらいなんだけどね』
花畑か。
いつか強くなったら行ってみるのもいいかもしれないな。
「もうすぐ出口だ。別に迷わされなければ一本道だし、モンスターも早々でることはない。たまには出るかもしれないが、その程度だ」
「ようはピクニック感覚で行けるって訳だ! まぁ普通にチミっ子の魔法で跳んだ方が速いんだがな」
「歩くのって面倒だからねぇ。その点、私に感謝しなさいよね」
「へーへー」
森を抜けるとまた平原が広がっていた。
モンスターと戦う冒険者の姿やモンスターがそこらにいるのが見える。
「あっちに見えるのがリニダーの街だ」
セトルが指さす方向を見ると家が見えるし、通りに人がいるのも遠くから見える。
壁とかはないんだな。
「さて、と。俺たちはここでお別れだ」
「もう? 街まで入ればいいじゃないか」
「せっかくの決心が鈍るからな」
そう言って苦笑いを浮かべるセトル。
「まっ、そういうこったな。俺は地底世界で魔王とスパーリングだ」
「私は王都で魔法研究。篭もりっぱなしだから来ないでよね!」
「私も王都の方で祈りを。その後世界各地を巡ります」
「俺は賢者の塔に行く。爺さんから学べることは徹底的に学んでくる」
『私は……うん、リベットと一緒に世界を旅しようと思う』
色んなところがあるんだなー……って
「初めて聞いたんだが?」
『今初めてリベットに言ったもの』
「リベットが寝ている間に少し、な」
「驚きはしたが……それも良さそうだしな!」
「それにリベットはまだ弱いですからね」
「アンタなんて守られるのがお似合いよ」
チミっ子はいつか目にものを見せてやるとして、
「あー、その、なんだ? よろしく?」
『こちらこそ、よろしく』
左手を差し出すと、少し驚いた表情をした後嬉しそうに、左手で握り返してくる。
「あ、そうそう。ミウロゥに着けてあるブローチなんだけど、魔力が切れたら声が聞こえなくなるから注意してね」
「その時はどうすればいい?」
「私に連絡を頂戴。と言っても他のみんなが会わないのに私だけ会うのもズルだから、私の知り合いを紹介することになるけど」
「その辺しっかりしてるのがヘクサらしくていいですね」
「そ、ソレー!」
ポカポカとソレーを叩くヘクサ。
「ま、まぁいいわ。それに早々魔力が切れることなんてないと思うし」
「どれくらい持つ予定なんだ?」
「そうね……ざっと、500年くらいかな?」
「めちゃくちゃ余裕じゃねぇか」
どんだけ詰め込んだんだよ。宝石の中が魔力でギッチギチになってそうだな?
「まぁ、万が一ってこともあるだろうし、はいコレ」
「なんだ、このカードは?」
「私の連絡先。それを使って連絡を取ってちょうだい。何も無いのに連絡してきたら燃やし尽くすわよ」
「いやしないけど……」
それはそれで怖い。
「なら俺も渡しておくか。もしも賢者の塔に興味が沸いたら連絡してくれ。紹介状をだそう」
「んじゃ俺も! と言っても地底世界だからなぁ……もしそっち方面に来るなら連絡くれ。あそこはミウロゥ1人じゃ危険だし、お前を護りきれるとも限らん! 知り合いに案内をさせるからな!」
「私からも。教会にお世話になることがありましたら、こちらをお見せして頂ければ、何かと融通を効かせるよう通達しておきますので」
『私のも渡しておくね。近くにはいるようにするけど、もしかしたらがあるかもしれないし』
ソレーだけなんか怖いんだが……
【住民カードを入手】
〘連絡先が書かれたカード。使用することで住民と離れていてもいつでもやり取りができる〙
「有難く貰っておくよ。必要になったら使うかもしれないな」
多分その程度でいいんだろう。
「んじゃ今度こそお別れだな!」
「またいつか会おう」
「わ、私が一番最初にミウロゥちゃんの元に行くからね!」
「では皆さんどうかお元気で」
ソレーとヘクサが同じ方向へ。王都に直接向かうんだろう。
セトルは彼女たちとは逆方向に。そっちに賢者の塔があるんだろうな。
で、最後の筋肉バカは
「あー……あれ言ったほうがいいのか?」
『別にいいよ。あっちの方が楽だっていつも言ってるし』
だからといって地面を高速で掘るとは思わんだろ……
ほら、気になって平原にいたプレイヤーっぽいのが集まってきたじゃないか。
『行こう、リベット。まずは最初の街、リニダーだ』
「お、おう」
左手を掴んで、楽しそうに街へと向かうミウロゥ。
まぁ、楽しければそれでいいか。
【リニダーの街】
〘種族:ヒト族の異界人が最初に訪れる街。
基本を学び育て、初心者達よ〙
結構人がいるんだな。
最初の街だし、発売してから1年は経つのに、初心者っぽい人もオシャレな装備をしている人もかなり見かける。
ネットで調べた時にヒト族って他の種族と比べて少ないっぽいようだったが……
『懐かしいな……』
「何がだ?」
『私とセトルも同じように同じような街に最初は行ったからさ。ここじゃなくてもっと別の場所だったけど』
「そこから各地に?」
『うん。最初は王都を目指して、そこからはアチコチ。一応の目標は砂漠だったんだけど、色んなことがあったよ……』
遠い目をしてそんなことを言うミウロゥ。
火山にも行ってたみたいだしな。
『さて、と。まずは道具屋に行こうか』
「何か必要なものが?」
『あるある、いっぱいあるとも』
そう言われると持ち物を見てなかったことを思い出した。
一覧があるのは見たがはてさて
【持ち物一覧】
・護符
・戦術ノート
・アダマンタイトの棍棒
・水晶玉
・思い出のエンブレム
「……うん、買いに行くか」
『お金が足りなくなったらそこの冒険者ギルドで稼げばいいからね』
指さす方には酒場っぽい場所が。
酒場じゃないのか?
『この街の冒険者ギルドは酒場と合体してるんだよ。もっと大きな街になると流石に冒険者ギルドだけになるんだけど』
「なるほどな? ちなみにミウロゥは酒を飲めるのか?」
『うーん……飲めないことは無い。けど、酔えないから飲まない』
ザルなのかそれとも別の何かがあるのか……
「そうか。俺もあまり好きじゃないし、手持ちも寂しいから世話になることはなさそうだな」
『かもねー。情報収集とかで使う時もあるみたいだけど、セトルが主に頑張ってくれてたから』
「そのうち使ってみるか」
『それもまた経験だね』
ニコリと笑うミウロゥと一緒に道具屋へと向かう。
「いらっしゃい! 好きな物手に取ってくれよ!」
「ほー……色んなものがあるんだな」
「おや、兄さんは初めてかい? リニダーの街はアンタみたいな初めての人が多いからな! 手厚く仕入れているのさ。最も安物しかないから次の街にさっさと行くことをおすすめするぜ!」
確かに見てみると置いてあるアイテムは安い。
【劣化回復薬】 5セーリ
〘体力を回復するが、味はかなりマズイ。回復するまでに時間がかかる〙
【薬草】 1セーリ
〘回復薬を作るための薬草。草原でよく見かける。直接食べても回復するが、かなり苦い〙
【ナイフ】 10セーリ
〘解体用ナイフ。狩ったモンスターや動物を解体する為のナイフ。切れ味は悪くないが、直ぐに悪くなる〙
【リンゴ】 3セーリ
〘食べると満腹ゲージが増える。料理にも使える。ただしすっぱい〙
【ブドウ】 3セーリ
〘食べると満腹ゲージが増える。料理にも使える。ただし実は小さくすっぱい〙
……味はダメそうだな。
「オススメはこのナイフだぜ! 猟師ギルドに持ち込んでもいいんだが、あそこは金をとるからな。自分で解体して冒険者ギルドに持ち込めばたんまりってわけよ!」
「慣れるまでは大変そうだな」
「まぁな。だがそこは慣れと場数よ! 冒険者ならなんでもやってみねぇとなぁ!」
まだ冒険者ではないが……所持金的にも買えるが……うーん……
『リベット、ナイフはあった方がいいよ』
「その理由は?」
『旅の途中で食べ物が無くなるなんてしょっちゅうあった。でも目の前でお肉が地面と同化したり、燃え尽きて灰になったりする前にナイフがあればなんとかなるから』
「……大変、だったんだな」
筋肉バカとチミっ子は次会ったら一言言ってやろう。
「この解体ナイフ、研ぐにはどうすればいい?」
「お、そこに気づくとはさすがだねぇ。この研磨剤を使うといい」
【研磨剤】
〘刃を研ぐために使われる〙
[残り回数:20]
「ならこのナイフと研磨剤を貰おう」
「まいど! 研磨剤はプレゼントだ。最初にナイフを研ぐことに気づいたやつにはあげてるんだ。まぁ、大体のやつは気づかないから後で文句言いに来るんだがな! ガッハッハッ!」
それでいいのか、道具屋……
とりあえず10セーリを渡して、ナイフと研磨剤をゲット。
所持金にはまだ余裕はあるが……王都まで目指すとなると心もとないか。
『そういえば、リベット。リニダーをでたら次はどこに行くの?』
「とりあえずは王都にでも行こうかなと。待ち合わせもあるしな」
『待ち合わせ……リベットの友達?』
「友達……と言うよりは家族だな。俺より先にフリヘイトの世界で傭兵をしているんだ」
『ふーん……それで王都……なら冒険者ギルドに行こう』
そう言って俺の右手を掴んで引っ張って行くミウロゥ。
『王都に入るには冒険者の証が必要なんだ。他の種族は分からないけど、ヒト族がまず最初にこの街を目指すのは唯一ここの冒険者ギルドだけが冒険者の証を発行しているから』
「それでか」
ゲームのストーリー的な都合かと思ったらそういうことか。
『着いた。早速入ろう』
扉を開けて中へ入ると賑わっているのかザワザワしていた。
その中を迷うことなくカウンターまで向かうミウロゥ。
と、その後を追う俺。
一瞬ざわめきが止んだように思ったが、今度は違う内容でざわつき始めたな?
『冒険者の証を発行して欲しい』
「分かりました。でしたらまずはこの石版に手を乗せてください」
『だってさ、リベット』
少し横にズレて俺に道を譲るミウロゥ。
「そ、そちらの方が……ですか?」
『そう。私のは既に持ってるし』
そう言って腰に付けてあるポーチから黒いカードを取り出すミウロゥ。
黒?
「黒いカード……右腕と右目がない……ま、まさか貴女様は!」
『リベット』
俺が手を乗せないからカードをカウンターにおいて手を引っ張ってくる。
分かった、わかったから。
「これでいいのか?」
『それでいいと思う。いいよね?』
「は、はい! しょ、しょしょしょしょ、少々おおおおお待ちを!」
なんか可哀想に思えてきたな……
「と、ととと登録完了し、しました! こ、こここち、ちちちら冒険者のあ、証に、ななななります!」
「あー、ありがとう」
『依頼も受ける? 近くの平原で戦う内容くらいならあると思うよ』
「お前この状況でよく平然と居られるな……」
当事者だろうに……
『私には関係の無い話だし』
「ところがどっこいそうはいかないな、ミウロゥ」
カウンターの向こう側にある扉が開き、そんな声が聞こえてきた。
なーんか大変そうな予感がするぞ……
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