鈴井家の怨念

わらびもち

episode.1

【1987年10月4日】


 長野県某所、一つの家族が山を訪れていた。彼らは仲睦まじい一家であり、その日はキャンプに来ていたのだ。


 父親は鈴井すずい和宏かずひろ、母親は鈴井すずい奈々なな、そして娘は鈴井すずいゆうという名だった。


 一泊二日のキャンプ旅行、彼らは幸せな一時ひとときを探していた。


【同年10月5日】


 早朝、気付けば鈴井優の姿がテントから消え失せていた。両親は焦り、すぐに捜索を始めた。


 あまりに突然の出来事にパニックを起こしていたために彼らは警察に通報するのも遅れ、当初はただ二人で捜索をすることになってしまった。


 時刻は12時を回り、多少の落ち着きを取り戻した父親、鈴井和宏は警察に連絡し、捜索は拡大していった。


【同年11月13日】


 捜索開始から一ヶ月以上経過したその日、崖下に二つの遺体が発見された。


 獣道とも言えぬような荒くれた山の中、そこはすぐ前も見えないほどに蔦や雑草が生い茂っており、奥を奥をと探していたら足を踏み外してしまったのだろう。


 どうしてそのような場所に進んでしまったのか。


 鈴井優がそこに来たのは夜中であろうから不思議ではない。鈴井奈々はパニック状態だろうからこれも不思議ではない。


 不可解なのはなぜ“二人とも”同じ場所に落ちたのか。単なる偶然か、あるいはの霊が母親を誘ったのか……


 真実は定かではない。ただ一つ、そこには事実があるだけだった。


 鈴井和宏は警察の取り調べにて、


「私のせいだ……! 私が奈々を……優をちゃんと見守っていたら……!!」


 と述べていた。取り調べを終えた和宏はしばらく放心状態で自宅に篭っていたとの話だか、数ヶ月もすれば彼の姿を見る人はいなくなった。


 1987年11月13日、鈴井奈々(32)とその娘、鈴井優(6)の死亡を確認。


 1988年2月20日、鈴井和宏(35)が失踪。消息不明。

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