第36話

間章|何も起きていない、はずなのに


この店には、

店長がいない。


オーナーは、

自分のことを

「支配人」と名乗っている。


社員は三人いる。

そう思っていた。


でも、あるとき

たまたまPCの画面を見てしまった。


そこには、

「バイトリーダー」

と書かれていた。


支配人がいて、

バイトリーダーがいる。


それなのに、

「店長」という肩書きが存在しない。


オーナーがいるなら、

その上か下に

店長と呼ばれる誰かがいるのが普通だ。


でも、いない。



あとで、社員Hから聞いた。


オーナーと社員三人は、

雀荘から徒歩圏内の社宅に住んでいるらしい。


社員なら分かる。

でも、オーナーも社宅。


それは少し、おかしい。


この店の所有者は、

別にいる可能性がある。


表に立っている支配人は、

最上段ではない。


見えない上がいて、

支配人だけが

現場に立たされている。



思い返す。


オーナーは、

趣味のコーヒーセットは増やす。


でも、

客のコップやカルピスは

「高い」と言って買わない。


経費の理屈が、合わない。


支配人は、

店を自分の城のように振る舞う。


でも、

本当の決定権は

別の場所にあるように見えた。


この店は、

麻雀のルールより先に、

役職の構造が歪んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る