第33話

⑤ 帳尻の合わせ方


オーナーは、

最後まで現れなかった。


社員Hが

どう思ったかは分からない。


ただ一つ、

確かなことがある。


社員Wは、

裏で少しだけ姿を消す。


誰も見ていない場所で、

椅子に座り込み、

オーナーのために用意された

こだわりのコーヒーを飲む。


跡形もなく。


カップは洗われ、

匂いも残らない。


何もなかったように、

現場へ戻る。


社員Kは、

コンビニ袋を下げて戻ってくる。


うどん二杯。

おにぎり七つ。


一人分とは思えない量を、

黙々と食べる。


誰にも分けない。

誰にも説明しない。


それぞれが、

それぞれの方法で、

帳尻を合わせている。

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