第47話 最深の最下層
中層の奥、ボス部屋のさらに先
普通のダンジョンなら、ここから下層へと続く階段が現れる
石段だったり、螺旋だったり、形は違えど、構造自体はどこも似たり寄ったりだ
だが、このダンジョンは違う
黒鎧を倒した部屋の端、壁に埋め込まれるように存在する転移ポイント
魔力の流れが荒く、歪みがある
まるで無理やり空間をこじ開けているみたいだ
ここが、最深の最下層への入口
俺は一度、深く息を吐いた
覚悟は決めてきたつもりだが、それでも心臓の鼓動が少し早くなるのを止められない
足を踏み出す
視界が白く染まり、次の瞬間、地面の感触が変わった
草
柔らかく、湿り気のある感触
顔を上げると、どこまでも続く草原が広がっていた
地平線の向こうまで、ただひたすらに緑
空は高く、雲一つない青が広がっている
昼間だ
だが、太陽の位置がおかしい
頭上に固定されたように動かず、時間の流れを感じさせない
影は落ちるが、伸びることも縮むこともない
この空間には、夜がない
俺は振り返り、来たはずの転移ポイントを確認する
そこには、確かに円形の痕跡は残っているが、反応がない
魔力を流しても、何の応答も返ってこない
戻れない
最深の最下層は、そういう場所だ
脱出ポイントを自分で見つけ出さなければ、帰還できない
しかも、その脱出ポイントは、どこまでも続くこの草原のどこかにランダムで現れる
地図は意味を成さず、目印もない。方向感覚すら、次第に曖昧になる
視線を巡らせた瞬間、遠くで何かが動いた
全身が棘に覆われた、牛のようなモンスター。
いや、牛というには大きすぎる
体高は二階建ての家ほどもあり、棘一本一本が槍のように鋭い
群れで移動しており、草を踏み潰しながら悠然と歩いている
別の方向には、黒鎧
中層のボスとして立ちはだかった存在が、ここでは一般モンスターのように数体単位で行動している
隊列を組むでもなく、ただ目的もなく歩き回っているように見えるのが、余計に不気味だ
そして、空
影が落ちたと思った瞬間、反射的に上を見る
巨大な鳥
ドラゴンなど比較にならない
翼を広げた全長は、軽く数十メートルを超えている
羽ばたくたびに空気が震え、突風が草原を波打たせる
嘴一つで街が壊れそうなサイズだ
さらに、地面が揺れる
遠くで、山が動いているように見えた
いや、違う
山のように巨大なゾウのモンスターだ
足を一歩踏み出すごとに、低い振動が地面を伝ってくる
それが、この最深の最下層の当たり前だ
前回来た時、俺は徹底的に戦闘を避けた
隠密魔法を最大限に使い
息を殺し
魔力の揺らぎすら抑えて
草原を這うように進んだ
だが、今回は違う
隠密はしない
魔力を抑えることも、気配を消すこともない
全力で存在して、この空間に立つ
索敵魔法を展開してみるが、すぐに眉をひそめる
ノイズが酷い
魔力の反応が多すぎて、情報が飽和している
どれがどのモンスターなのか、距離感すら掴めない
役に立たないな
ここでは、自分の目と感覚だけが頼りだ
草を踏みしめ、一歩、また一歩と進む
どこへ向かっているのかは分からない
ただ、進まなければ何も始まらない
怖くないと言えば、嘘になる
この場所は、明確に格が違う
自分がどれだけ強くなったつもりでも、それを簡単に踏み潰せる存在が、そこら中を歩いている
それでも、足は止まらなかった
鍛えると決めた
逃げないと決めた
最深の最下層
どこまでも続く草原の中で、俺はただ前を向いて歩き続ける
本作を読んでいただきありがとうございます!
勢いで描き始めた作品なので話の矛盾点や誤字脱字などがあったら教えていただけると嬉しいです。
そして少しでも面白いと思って頂けたら、作者の励みになりますので♡や⭐︎、感想などよろしくお願いいたします!!
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