第35話 新人

 いつものダンジョンに足を踏み入れた瞬間、空気の感触で分かる

 ここは変わらない。湿り気を含んだ冷たい空気、石と土が混じった匂い、微かに漂う魔力の流れ。


 通路を進んでいると、前方から金属音と魔法の発動音が聞こえてきた

 複数人の足音も混じっている


 足を止め、壁際に身を寄せて様子をうかがう


 視界の先にいたのは、主人公パーティだった


 以前よりも装備が洗練され、立ち回りにも無駄がない

 ただ、それだけではない


 彼らの少し後ろで、もう一つのパーティが動いていた

 明らかに新人だと分かる


 足取りが固く、周囲を見渡す視線が落ち着かない

 剣を構える手に力が入りすぎていて、肩が上がっている

 魔法使いらしき人物は詠唱のタイミングを掴みきれておらず、周囲の動きに遅れがちだ


 モンスターが現れる


 小型のゴブリン数体

 このダンジョンでは序盤に出てくる、ごく一般的な敵だ


 新人パーティは慌てて陣形を組もうとするが、互いの位置を確認し合う余裕がなく、微妙に間が空く

 その隙を突かれ、ゴブリンが前衛と後衛の間に割り込もうとする


 そこで主人公パーティが動いた


 さりげなく前に出て、ゴブリンの進路を遮る

 派手さはないが、確実な動きだ


 新人パーティは一瞬驚いたような顔をするが、すぐに指示が飛ぶ

 声は落ち着いていて、叱責の色はない


 新人たちはその言葉に従い、ぎこちないながらも持ち直す

 連携はまだ甘いが、さっきよりは形になっている


 戦闘が終わると、新人パーティの表情が一気に明るくなった


 誰かが大きく息を吐き、誰かが小さく拳を握る

 緊張が解けたのが一目で分かる


 主人公パーティのメンバーは、そんな新人たちを見て笑っていた

 上から目線ではない

 同じ場所を通ってきた者同士の、少し先を歩く立場としての笑みだ


 新人パーティの視線は、明らかに憧れを含んでいる


 動き、装備、立ち振る舞い

 すべてが目標なのだろう


 主人公パーティも、それを理解している様子だった

 戦闘の合間に、細かい位置取りや注意点を簡単に伝えている

 長々とした講釈はしないが、要点は的確だ


 新人たちは何度も頷き、その言葉を必死に吸収しようとしている


 その光景を、少し離れた場所から眺める


 かつての自分を重ねることはない

 歩いてきた道が違う


 だが、ああやって誰かの背中を追い、少しずつ前に進んでいく姿は、悪くないものだと思った


 主人公パーティは、確実に成長している。

 戦闘力だけではない

 周囲を見る余裕があり、次の世代に手を差し伸べられる位置に立ち始めている


 それは一つの到達点だ


 やがて、通路が分岐する場所に差し掛かる


 主人公パーティと新人パーティは、まっすぐ奥へ進むようだった

 慎重に、しかし迷いなく


 俺は、別の道を選ぶ


 同じ道に進む必要はない

 それぞれの進む道がある


 背後で足音と声が遠ざかっていくのを感じながら、静かな通路へと足を踏み出した


 いつものダンジョンは、今日も変わらず続いている







本作を読んでいただきありがとうございます!


 勢いで描き始めた作品なので話の矛盾点や誤字脱字などがあったら教えていただけると嬉しいです。


 そして少しでも面白いと思って頂けたら、作者の励みになりますので♡や⭐︎、感想などよろしくお願いいたします!!

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