第3話 別ルート、別の物語

 主人公パーティが進んだ通路とは逆側に足を向ける

 わざわざ視界に入る必要も鉢合わせる理由もない


 隠密魔法を重ねがけしたまま俺は壁沿いを歩く

 足音、呼吸、魔力の揺らぎ

 全部削る


 正直に言えば――

 ああいう連中は苦手だ


 連携が良くて、声を掛け合って、目的を共有して「誰かのために」動いているのが見ていて分かる


 眩しい

 だから距離を取る


 ダンジョンは広い

 同じ階層でも、選ぶルートで中身はまるで違う




 こちらの通路は単純

 狭く、直線的で、モンスターの密度が高い


 効率がいい


 索敵を展開

 反応、七

 小型六

 中型一


 魔力弾を連射


 弾は音もなく飛び音もなく当たる

 モンスターが倒れる

 魔石が転がる


 作業


 いつも通り


 魔力刃を一枚、床と並行に走らせる

 通路を横断する形でまとめて首を落とす


 血が飛ぶ前に魔力で霧散させる

 装備が汚れるのは嫌いだ


 拾った魔石を袋に放り込み、次



 少し進んだところで嫌な感触があった


 索敵にノイズが混じる

 反応が歪む


 さっきの連中が向かった方角から魔力の流れが不自然に膨らんでいる

 ダンジョンの自律修復が、追いついていない感じ


 ――異変、か


 でも俺のルートじゃない


 この階層の目的は達成している

 魔石の数も十分

 リスクを取る理由がない


 踵を返す

 帰還ポイントへ


 途中、背後で遠く爆音がした

 魔法の衝突音が複数


 多分あいつらだ


 俺は足を止めない



 地上に戻るともう夕方だった


 シャワーを浴びて装備を簡単に手入れする

 傷はない


 コンビニで安い弁当を買って帰宅


 狭いアパート

 ダンジョン特区の外れ

 壁は薄いし隣はうるさい


 でも家賃が安い

 それで十分


 テレビをつける



『――本日未明、関東第三ダンジョン・第七階層にて発生した大規模モンスター増殖現象は、民間冒険者パーティの活躍により鎮圧されました』


 画面にダンジョン入口の映像


 見覚えのある顔が四人


 先頭に立っている少年

 白崎恒一


 黒髪短髪

 整った顔立ちで、少し真面目そうな目


 防御寄りの前衛装備

 派手じゃないが、実戦向け

 インタビューでも姿勢がいい


「仲間がいたから、ここまで来られました」


 ――ああ、主人公だ



 その横、魔法使いの少女

 山﨑春香


 長めの黒髪を後ろで束ねて理知的な雰囲気

 ローブは軽量型、魔力制御重視


 少し照れたように笑っている


「怖かったですけど……守らなきゃ、って思って」


 守る、ね。



 少し後ろ、低身長の弓使い

 川端美香


 明るい茶髪、快活そうな目

 身長は低いが体幹がしっかりしている


 カメラに気づいて手を振った


「やったよー! これで今日は焼肉だね!」


 ああ、元気だ



 最後、控えめに立っている少年

 小笠原龍太郎


 丸眼鏡

 細身

 装備は補助特化


 緊張しているのが画面越しでも分かる


「ぼ、僕は……みんなの役に立てて、よかったです……」


 多分いい奴だ



『今回の件で、白崎パーティは若手冒険者の中でも注目株として――』


 テレビの音量を下げる


 ソファに沈みながら弁当を食う


 ……まあ、そうなるよな


 異変の中心にいたのはあいつらだ

 俺は、関係ない場所を掃除して帰っただけ


 結果として

 俺が減らした分の負荷が、あいつらを助けた可能性はある


 でもそれを言う意味はない



 鏡を見る


 黒髪

 寝癖

 目つき悪め


 特に特徴のない顔


 身長も平均

 体格も普通


 ――山田太郎


 本名だ


 モブ中のモブだ


 別に困らない


 俺は今日も稼げた

 生き延びた

 面倒事にも巻き込まれていない


 それでいい


 テレビの中で

 世界を救う物語は進んでいく


 俺は

 別の通路を進むだけだ







本作を読んでいただきありがとうございます!


 勢いで描き始めた作品なので話の矛盾点や誤字脱字などがあったら教えていただけると嬉しいです。


 そして少しでも面白いと思って頂けたら、作者の励みになりますので♡や⭐︎、感想などよろしくお願いいたします!!

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