モブの俺は今日もダンジョンに潜る
秋野昭也
第1話 いつもの狩り
世界にダンジョンができたのは、俺が生まれるよりずっと前の話だ
だから正直に言うと、
「ダンジョンがなかった世界」がどんなものだったのか、俺は知らない
ニュースや授業で聞かされる昔話によれば、
2026年、世界中の人間が突然魔力を持って、
同時にあちこちにダンジョンが湧いたらしい
街の真ん中に穴が空き、
地下に異様な空間が広がり、
中からモンスターが出てくる
当時は地獄だったそうだ
でも、俺にとってはそれが「普通」だ
ダンジョンがあって、
冒険者がいて、
たまにモンスターが地上に溢れて、
そのたびに誰かが死ぬ
そういう世界で、俺は生まれた
日本にダンジョンが多い理由は、今もよく分かっていない
霊脈がどうとか、地形がどうとか、
専門家がそれっぽいことを言ってるが、
結局のところ「分からない」というのが答えだ
ただ事実として、
世界中のダンジョンの三割くらいが日本にある
結果、日本は魔石だらけの国になった
モンスターを倒すと落ちる魔石は、
エネルギーの塊だ
原子力発電よりよっぽど安全で処理も簡単
だから国は、ダンジョンを管理して、
冒険者制度を作って、
「民間人にもモンスターを狩らせる」方向に舵を切った
危険だけど、放置するよりはマシ、という判断だ
俺の憶測だが、
本音を言えば、国は人手が足りなかっただけだと思う
俺の両親は、冒険者じゃなかった
普通の一般人だった
俺がまだ小さかった頃、
近所のダンジョンで管理ミスが起きて、
モンスターが溢れた
ニュースでは「想定外の事態」って言ってたけど、
想定外なんて言葉で死んだ人間は生き返らない
両親は、
俺を逃がして、
そのまま死んだ
詳しいことは覚えていない
覚えているのは、
血の匂いと、
床に落ちた父親のスマホと、
母親の手が冷たくなっていく感触だけだ
それで終わり
国から補償金は出た
最低限、生きていく分だけ
「ダンジョンは危険です」
「冒険者は尊い仕事です」
そんな言葉を、
テレビや大人たちはよく言う
俺の中では、
全部同じに聞こえる
俺は中学を出て、冒険者になった
理由は二つ
金が欲しかったのと、
モテそうだったからだ
深い理由なんてない
復讐とか正義とかそういうのは向いてない
俺はただ生きるのが楽な方を選びたかった
今、俺はダンジョンの中にいる
都内にあるランク低めの周回用ダンジョン
天井は低く、湿気がある
索敵魔法を展開する
無詠唱
思考するだけ
周囲半径三十メートル
反応、六
ゴブリン三、
大型ネズミ二、
奥に一体、少し魔力が大きい
面倒だなと思う
隠密魔法を重ねて存在感を落とす
俺の足音は消え呼吸すら薄くなる
魔力弾を生成
発射
――ズン、ズン、ズン
派手な音は出ない
ゴブリンの頭が三つ、同時に潰れる
ネズミが気づいた
魔力刃を生成
斬る
返り血は、魔力鎧が弾く
奥の一体が突進してくる
少し硬そうだ
魔力弾を圧縮
撃つ
胸部が貫通
倒れる
静かになる
俺は深く息を吐いて魔石を回収する
作業は終わりだ
誰にも見られていない
世界がどうなろうと、
英雄が誰だろうと、
俺には関係ない
俺は今日もダンジョンに潜って、
金を稼いで、
生き延びる
それだけだ
本作を読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思って頂けたら、作者の励みになりますので♡や⭐︎、感想などよろしくお願いいたします!!
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