きらめきのハーバーシティー(Yokohama Nightscape)

@tsuyotsuyoman

第1話

みなとみらいの夜景は、いつも僕に語りかけてくる。

ここは僕たちの特別な場所だった。

あの半円形のホテルや、虹色に輝くコスモクロック、

そしてガラスのビル群は、幾千もの星を地に降ろしたように輝いている。


君とよくあの観覧車に乗ったものだ。

ある時君は頂上で、携帯を僕に向けてライトを5回点滅させた。

なんだいそれ?と聞くと、

「ドリカムの歌にもあるのよ。知らない?」

ブレーキランプの点滅で、「ア・イ・シ・テ・ル」と伝えるシーンであることを、

僕は後で知った。


君との幸せな日々がずっと続くように感じた。

この場所に立てば、決まって君は僕の手をぎゅっと握った。

僕たちに言葉はいらなかった。

あの時の温もりは、今も僕の左手に残っている。


僕たちはこの街で、まだ輪郭も曖昧な夢を追いかけた。

一緒に笑い、一緒に泣いた。

時に、すれ違い、傷つけあったこともあった。

それでも、この夜景を見るたびに心が通じ合った。

この街の光は、二人の秘密の言語だったのかもしれない。


やがて僕たちに転機が訪れた。

君はデザイナーの夢を追い、海を渡った。

僕はこの街の骨格を築く建築家を目指した。

発展的解消などという軽薄な流行りの言葉で括りたくはない。

しかし、結果的にはそれぞれの夢を優先させた、と言うことだった。


あれからどれだけの季節が過ぎ去っただろうか。

運河沿いから見渡す彩られた街の風景は、あの頃と少しも変わらない。

ただ一つ、隣に君がいないという事を除けば・・・。


僕は欄干にもたれながら、あの幸せだった日々に思いをはせた。

君はどうしているだろう。

「会いたい」——。


その刹那、コスモクロックが映し出す虹色の光が消えた。

今まであった筈の大きな煌めきが、そこだけ切り取られたかのように真っ暗になった。

まるで、ぽっかり穴の開いた僕の気持ちを映し出しているかのようだ。

ようやく弱い光の輪郭でその存在を現し始めた観覧車は、

次の瞬間、鮮やかな光を放ち始めた。

緑、赤、青、黄、オレンジ・・・。

まるでカメラがフラッシュを焚くように、短く、確かに5回・・・。


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