マッチングアプリの相手が未成年の教え子だった話
にゃました
第1話
「モモカさん、お会いできて嬉しいです!」
そう笑顔を向けてくれる彼女はミヤさん(20)
つい最近マッチングアプリで知り合った女性。
「…私も、会えて嬉しいよ」
そして、私の教え子でもある。
私が担当するクラスの教え子である。
……なんで宮羽さんがここに!?
おかしい!今日までスマホの向こうでやり取りしていたのはミヤさん(20)なのに。
間違っても未成年の教え子であるはずがない!!
しかし待ち合わせ場所にやってきたのは未成年の教え子なのである…。どうしたものか。
ここは教師として宮羽さんを注意するべきなんだろうけど。
…バレたくない!
マッチングアプリやってることバレたくない!なんか嫌だ!
絶対に学校で噂になる。そうに違いない。
かといって教え子とデートするのもダメな気がする。
本当にどうしたものか。
「モモカさん、行きましょう!」
私の手を取った宮羽さんは楽しそうに前を歩く。
葛藤を押し除けて強制的にデートが始まってしまった。
引き返すなら今。適当な理由をつけてデートを中断すればいい…。
…迷いがあるとすれば教師として、宮羽さんにちゃんと注意しなければならない。
私が私であるとバレたくはないのだけれど。
この際、モモカとして、一人の大人として注意できればそれで充分。
そうだ。あくまで教師として宮羽さんの間違いを正す為にデートをする。何も後ろめたいことはない。
「そういえば、どこへ行くの?」
私は今日の予定を知らない。確かメッセージでやり取りした時は、行きたい場所があるんです。とそう言っていた。
「とっても楽しい所です」
「へぇ、よく行くの?」
「私は初めて行きます」
…何か複雑な事情でもあるのだろうか。
しかし宮羽さんの態度から悲しい背景は読み取れない。良かった。
ただ行ってみたい場所なのだろう。
初めて。友達と、ではなくマッチングアプリの相手と…。
カップル限定で食べられる美味しいスイーツとかだろうか?
それなら少し納得もできる。
むしろ可愛らしい理由で安心する。
15分ほど歩いただろうか。
「あ、こことか良さそうですね。ここにしましょう!」
「ん?えっ、ちょっと」
躊躇いなく歩み進める宮羽さんを流石に制止する。
だって、だってここ…
ラブホテルじゃんか!!!
「…ここがどこか、分かってる?」
「?ラブホテルですね」
流石にまずい。教え子とラブホは本格的にまずい。
相手が相手なら楽しい場所なのは間違いないのだけれど!
今日に限っては最悪である。
入ってしまえばもう言い訳はできない。
バレても終わり、知らないフリを通しても終わり、あれ?私ってもしかして…
「ずっとやってみたかったんです。ラブホ女子会」
終わりかけた人生に道が開いた。
ラブホ女子会。
教え子とラブホ。
アウトな気もするがこの際セーフなのだ。
何もやましい事はないのだから。
ただちょっぴり変わった場所で女子会をするだけ。
本当にそれだけ。
妙にソワソワして落ち着かない。
だって女子会として利用するのは初めてだから。
女子会と言っても2人で何をするのだろう?
できる事は限られている。
………教え子との変な妄想がよぎるが、それが現実になれば本当に終わりである。
本当に落ち着かない…。
宮羽さんはというと、このやけにオシャレな内装に目を輝かせ探索している。
と言っても2人だとやや広いくらいの広さなので、一通り見回った宮羽さんは、すぐに私の隣にやってきた。
ベッドに2人並んで今にも肩が触れそうな距離。
なんだこれは。
女子会はもう始まっているのだろうか?
沈黙。
静寂が作り出す妙な雰囲気に耐えられず、口を開くのは私だった。
「ミヤさんは…よくこういうことしてるの?えぇとマッチングアプリとか」
「うーん?どうですかねー」
悪戯に笑う宮羽さん。
割と大問題なので常習犯でないと助かるのだけど。
「ラブホは初めてなんだよね?」
「そーですねー」
「普段はどこへ行ったりしてるの?」
「その辺で食事とかですかね」
楽しい会話というよりかは、もう教師としての尋問になりつつある。
この際だから根掘り葉掘り聞いて、ボロを出させるのもありかもしれない。
遊び半分だとしても相手しているのは大人なのだ。マッチングアプリは優しい人ばかりでもない。
危ない目に遭ってしまう前に辞めてもらうのが吉だ。
「モモカさん。私に興味津々ですね」
ぐっとベッドに押し倒される。
見つめ合う。宮羽さんと。
え、なにこの状況。
意外と力強いんだ宮羽さん…じゃなくて。
私の話が退屈だから怒っちゃった?
「私もモモカさんの事、もっと知りたいなぁ」
女子会だよねこれ?ちょっとした戯れだよね?
絵面がとんでもなくやばい気が。
「ミヤさんて本当に20歳?」
「確かめてみます?」
やばいやばいやばいやばい。
そういう雰囲気になっちゃった!
心のどこかで少し期待してしまっている私もいる。今すぐ殺せ!そんな私は。
こんな状況やばいに決まっている。
簡単に終わるぞ!人生が!
焦りと裏腹にまだなんとかなると謎の冷静さも持っていて…。
つまりはパニックだ。
「私、全部初めてなんです」
宮羽さんの顔が近づいてくる。
綺麗。肌に若さを感じる。
女子高生。未成年。教え子。
…私の中の最優先は宮羽さんを止める事だ。
教師として終わっても人として終わりたくない!
「宮___」
私の覚悟は柔い感触に上書きされた。
教え子とキスをした。
唇を通して未成年を感じる。
心地いい。
そして人生の終わりを感じる。
死にたい。
未成年の教え子とキスをした。言い訳の余地もなくもう後戻りはできない。
思えばあの時、待ち合わせに来た宮羽さんを教師として注意していれば。
あの場の正義は私にあったはずだ。
それに私がマッチングアプリをしていて何が悪いんだよ!
もしもバレたら…って妄想の中の敵に怯えて甘えてしまった私の責任だ。
本当にどうしよう。
「モモカさんっ」
二度目のキスを黙って受け入れる。
一度も二度も変わりないのだから。
…宮羽さんは私に気付いてないんだし、だったら私も知らないフリを?
最低。だけどもうここまで来たら開き直るしかないのかもしれない。
今、目の前にいるのはミヤさんなんだ。
宮羽さんじゃない。教え子でもない。
知らないフリをする。自分に言い聞かせる。
私を求めるミヤさんをただ受け入れる。
そして答える。
最後まで。
___やってしまった。
果たして女子高生の誘惑に耐えられる人類など存在するのだろうか?
この場合、私に否はないのかもしれない。
…いくら言い訳をしようと未成年の教え子とやった事実は消えない。
いや、消してしまうのも勿体無い。
…何を考えているのだろう私は。
消されるべきは私なのかも知れない。私か、消されるのは。
頭が馬鹿になった。いや馬鹿だからこうなったのか。
冷静。でいられるはずもなく。
やってしまった事実に内心怯えている。
どうしようか…。
ラブホ女子会を終えた私たちは、来た道を戻り解散の流れになっていた。
バレなきゃ犯罪じゃないとはよく言ったものだ。バレてないからセーフなのである。
宮羽さんは私に気付いていない。
何も無かった。そう、私と宮羽さんの間には何も無かった。
私はモモカで、彼女はミヤさん。
マッチングアプリで知り合ってラブホ女子会をしただけ。
「今日は楽しかったよ、気をつけて」
「はい、私も良かったです。それと…」
別れのキス…と身構えたが狙いは耳だったようだ。
「先生、また学校で」
!?!?!?
甘く優しい囁きが私の人生を終わらせた。
バイバイと駆け足で去っていく宮羽さんを追いかけるでもなく、ただ呆然と見届けるしかなかった。
一体、いつから気付いて…。
マッチングアプリの相手が未成年の教え子だった話 にゃました @koharushima
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