妹にお祝いされて、嬉しくない兄などいるわけがない!!

ここグラ

毎日でもお兄ちゃんのお祝いしたいなあ♪

「今日はお祝いに、お兄ちゃんが好きなハンバーグ焼いてあげる♪」


 我が妹である岩館亜衣いわだて あいが、両手を胸に当てて嬉々とした表情で宣言した。うん、普通に可愛い、ていうか超可愛い。亜衣は世間的に見てもかなり可愛い部類に入り、そんな美少女がこんな乙女なリアクションをすれば大抵の男は落ちるだろう。


「あのな亜衣、確かにハンバーグは好きだから、作ってくれるのは嬉しい。でもお祝いにっていうのは、どう考えても大袈裟だろ」

「何言ってるの!! お兄ちゃんがセロリを食べられるようになったんだよ、これはお祝いしないわけにはいかないじゃない」

「小学生かよ!!」


 俺、岩館潤平いわだて じゅんぺいは妹の過保護っぷりに頭を抱えるしかなかった。正確には亜衣は血の繋がった妹ではなく義妹なのだが、何にせよ可愛い妹にお祝いされるのは悪い気分はしない。問題は……その頻度が高すぎることだ。


 普通お祝いというのは特別な日だったり、何か大きなことを成し遂げたりした場合するものだが……亜衣はほんの些細なことでもお祝いをしたがる。おにぎりを三角に握れるようになったお祝い、洗濯物を綺麗にたためる様になったお祝い、一週間授業中に居眠りしなかったお祝い……もはや何でもアリである。


「今週はこれでお祝い3回目だろ、さすがに多すぎるというか」

「私としては、毎日でもお祝いしたいんだけどね」

「デイリーセレブレイト!!??」

「毎日ご馳走食べれるよ、やったね♪」

「いや、食費がヤバイだろ」

「だったら膝枕とかでも良いよ、元値ゼロ」


 あのな……思春期の娘さんがそういうこと言うもんじゃないぞ。妹といっても義妹なんだ、俺とて健全な男子でお前はとびっきり可愛い、何も感じないわけないんだから。


「とりあえず今後のお祝いの頻度に関してはまた話し合うとして……ハンバーグ作るのは頼む、俺はお風呂沸かしてくるからさ」

「わーい、お兄ちゃんが湧かしてくれたお風呂だ~♪、気合入れて作っちゃお」


 全く、無邪気というか素朴というか……そういう亜衣の性格に何だかんだで救われている面はあるんだよなあ。父さんも母さんも仕事で忙しくて帰ってくるのがいつも夜遅くなだけに、家事万能で明るい亜衣の存在は本当にありがたい。今度改めて感謝しないとな。


***


 次の日、学園で俺は亜衣の教室に向かっていた。シャーペンが壊れたので、俺の予備のを貸してほしいとのことだ。教室に入ると、亜衣が笑顔で迎えてくれた。


「お兄ちゃん!! ごめんね、急に」

「気にすんな。はい、これ」

「ありがとう!! そういえばお兄ちゃん、今日家に帰ったら……お祝いだね♪」

「またかよ!! 今度は何だ?」

「一週間、お兄ちゃんが忘れ物しなかったお祝い」

「普段、どんだけダメ人間!!??」

「実際、だらしないでしょ?」


 相変わらず大袈裟にも程があるが、普段俺がだらしないのは事実なだけになあ……だから亜衣も過保護になるのかもしれないが。


「あ……ごめん、トイレ行ってくる。蜜柑みかん、ちょっとお兄ちゃんの相手してあげてて」

「うん、分かった」


 亜衣はクラスメイトで友人の蜜柑にそう告げ、トイレに向かった。まだ話すことがあるのか? 家に帰ればいくらでも話せるだろうに。


「ふふ、相変わらず仲いいですね、亜衣とお兄さん」

「仲は確かに良いんだが、あいつのお祝いしたい癖は何とかならないものかねえ」

「うーん……でも亜衣がお祝いしたがるのは、お兄さんのことだけですよ?」

「そうなのか?」

「はい、お兄さん以外のことでは、特には」


 どういうことだろう。やっぱり俺がだらしなくて頼りないからか、ダメな子ほど可愛いとか言うしな。お、丁度亜衣が戻ってきたから聞いてみるか。


「なあ、亜衣」

「何、お兄ちゃん?」

「お前のお祝い癖、俺に対してだけみたいだけど、どうしてだ?」

「そ、それは……ほら、お兄ちゃん結構適当だからさ、ちゃんと出来るとこっちまで嬉しくなるっていうか」

「やっぱりそうか。悪いな負担かけて、俺ももっとしっかり出来るよう頑張るよ。じゃあな」

「う、うん……」


***


~亜衣視点~


 潤平が教室から出て行った後、私は安心してため息をついた。良かった……バレて、ないよね?


「蜜柑、お兄ちゃんに余計なこと言ったでしょ?」

「言ってないよ。お兄さんが亜衣のお祝い癖何とかならないかって聞いてきたから、それはお兄さんに対してだけですよって言っただけ」

「それが余計なことなの!!」

「でもさ、実際どうしてお兄さんに対してだけそうなの?」

「そ、それは……」

「まあ、何となく予想はつくけどね。亜衣、何だかんだでシャイだもん」


 う……蜜柑の目が悪戯っ子みたいな感じになってる。蜜柑、結構鋭いからなあ……多分気付いてるだろうし。


「い、言わないでよ、お兄ちゃんに」

「ふふふ、安心して、言わないから。ちなみに、亜衣が家事万能なのも、もしかしてお祝いの時に何をリクエストされても応えられるようにするためだったり?」

「うう……正解です」

「まったく、お兄さんも罪な人だねえ。こんな健気な妹の気持ち、もうちょっと気付いてあげてほしいなあ」


 それに関しては蜜柑の言う通りかな……お兄ちゃん鈍感だし。やっぱりお祝いって名目でお兄ちゃんに手料理振舞ったり、膝枕したり、手袋編んであげたりしてアピールするより、直接伝えるべきかなあ。


 でも……やっぱり恥ずかしいし、女の子として見てくれているか分からないから、今はまだこの作戦を続けよう。勇気が湧いて、確信が持てたら……伝えよう。私は……お兄ちゃんのことが、好きだって。




~あとがき~


 読んで下さって、ありがとうございました。可愛い妹にお祝いされたら嬉しいですよねえ、私なら諸手を挙げてヒャッハーしてしまう自信があります。


 カクヨムコン11では他にも、長編ミステリー『冥恐の死神伝説殺人事件~瞬間移動を使い、乙女を狩る怪物~』を書いておりますので、読んで下さると嬉しいです。作品のURLは以下の通りです。


https://kakuyomu.jp/works/822139840483911526

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妹にお祝いされて、嬉しくない兄などいるわけがない!! ここグラ @kokogura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画