感想を書いてくれる読者に仕立てるには

 LLMにWeb小説の感想を書いてもらうためにやる事について書く(2025年12月版)。


 なお、ここでは手順概略を説明するだけで、具体的なLLMサービスの使い方については書かない。「早くお前の言う感想をもらう方法を教えろ」と思う人(や座学より実践派な人)は、無理に読む必要はない(むしろ読むな)。個別のLLMサービスのほうへ進んでくれ。


 読んでる途中で「もういいや」になったら、読み飛ばして構わない。必ずしも座学は必要ではない。


 もし、検索等からアクセスしてきて、最初に目にしたページがこれだという人は「はじめに」を先に読んだほうが良いだろう。


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そのまま小説を貼り付けるだけで感想を書いてくれる


 実は、初手をちょっと工夫するだけで、LLMは簡単に良い感じの感想を書いてくれる。


 新規チャットで、まず次のように入力してみよう。


```

あなたはWeb小説を嗜む人です。

幅広く色々なジャンルの作品を読みます。

感想を書く時は項目立てて述べるようにしています。

いまから順に入力していく小説の感想を述べてください。

```


 これから自己満足な世界が展開されることを知ってか知らずか、爽やかに「さあ、どうぞ!」的な反応が返ってくるはずだ。


 遠慮なく、小説の本文を一話ずつ入力する(小説本文以外の指示等も不要)と、それなりの感想を書いてくれるはず。まあ、運が悪いとキツい批判で凹むこともあるかもしれないけど。


 これで充分だよ、という人もいると思う。実際、小説の文量が多くないなら、全然行ける(アカウントパーソナライズの影響を除く、興味があるなら後述参照)。


 おいおい、最初に手間が云々と言ってたのは何なんだ、なんて言うタイプじゃないよね? 問題あることくらい知ってた、何なら、そこは既に周回済み、だよね? ごめん、これで充分と思う人が、ここまで読んでるなんてミリも想定してない。


 はい、ご察しの通り、この方法だと問題が起きやすい。


 話数が少ないうちは問題ないが、話数が進むと色々と困ったことが起きてくる。


- 要約や箇条書きを始める

- 既読分の誤解や忘却が散見される


 第23話を仕上げたので、意気揚々と感想を聞こうとしたら第19話で問題が発生して、ちょっとイラッとする。良い具合に改訂できたから、また感想を聞こうとしたら、さっきは完走したのに、今回は途中で問題が発生して凹む。なんてことが起きる。


 小説は、叙述と叙情が入り混じる文章が長く続くし、客観的に評価の是非を決めにくい箇所が多く、今のLLMには負荷の高い素材なのだろう。


 だから、面倒でもLLMの使い方をちゃんと考える必要があるという訳だ。


 あ、このセクション通りに試してアカウントパーソナライズに影響が出てしまった人が居たりするかもしれない。まあ、その、正直スマンかった。先に謝っておく。


=====

小説を分析対象資料にしたら読者になってくれる


 LLMサービスとして、複数の資料に対して、チャットを通じて、分析したり考察したりして新たな資料を作る、といった機能が提供されている。


 例えば、ある都市の人口推移、産業分布、経済報告、などを資料として、どのような都市開発と産業育成支援を目指すか、なんてことをLLMの力を借りて思考していく、という感じの使い方をする。


 これを利用して、自作Web小説を対象に感想を述べてもらったら、実に良い感じだった。という訳で、その概要を説明する。


 何か利用方法が違う気がする? 気にするな。ケータイ小説サイトがジャンル名になったり、イメージ生成AIがラーメン破綻画ネタメーカーになったり、当初の想定と異なる発展になるのは世の常だ。


 さて、LLMサービスによって概念や観念が微妙に違っていて、もしかしたら関係者や各種警察に詰められるかもしれないが、これからの戦場はこんな感じだ。


- 閉じられた作業領域がある

- 作業領域に資料を置ける

- 作業領域の中でLLMとチャットできる

- 作業領域内専用のLLMへの指示を設定できる


 何も知らないLLMを作業領域に連れ込んで、資料と称して君の小説を差し出し、催眠アプリで君の都合の良いように読ませて感想を書かせる、という構図になる。


 小説が大事な資料になるので、必要に応じて都度確認してくれる。小説が長くなってきたから、チャットの会話が長くなってきたから、ある程度より前の部分は忘れた、なんてポカはしない(ことになっている)。


 なお、対象の小説を一部でもWebに公開しているなら、作業領域でのチャットにおいて、Web検索のオプション(LLMの思考過程でググることを許可する)をオフにしておく必要がある(どのLLMサービスもデフォルトでオフのはず)。


 Web小説を書くくらいの人なら、なんとなく理解できたと思うので、具体的なLLMサービスを紹介する。


- NotebookLM (Gemini)

- Claude Projects

- ChatGPT Projects


 LLMについては、どれも聞いたことくらいあるだろう。ここでは、軽く一言だけ触れる。それぞれ言いたいことはあるが、長くなるので我慢する。


 NotebookLMは、インターネットの巨人Googleが提供している。ひとつの独立したLLMサービスではあるものの、LLMは当然のようにGeminiを使う。ていうか、Geminiの独立した機能、というほうがわかりやすい。ノートブックという作業領域があり、ソースとして資料を付けて、その中でひとつだけチャットセッションを利用できる。


 Claude Projectsと書いているが、Claudeアプリのプロジェクト機能のことだ。情感への理解と表現力の高さは相変わらずだが、各種の無料プラン制限も相変わらずだ。プロジェクトという作業領域があり、プロジェクトナレッジとして資料を付けて、複数のチャットセッションを利用できる。


 Claude Projectsは、2025年12月時点では無料プランでも使用できる。2025年のいつだったかまで有料プランのみだったので、最新情報に沿っていない記事がある。注意して。


 ChatGPT Projectsも、ChatGPTアプリのプロジェクト機能を意味する。皆さんお馴染み、生成AI界の転スラことChatGPT。欧米ビジネスアワーの性能減退は相変わらずだし、初手から累積結合が必要な面倒さもある。でも中庸的な魅力は健在。プロジェクトという作業領域があり、資料はファイルという直球で、複数のチャットセッションが利用できる。


 ChatGPT Projectsは、設定に注意しないと作業領域での操作がアカウントパーソナライズに影響する。注意して。


 さて、次から共通的な作業について話す。


 ああ、わかってる、わかってるよ。初めての人にオススメをひとつ選べ、とか、主観で良いから簡単なクロスレビューを書け、とか言うんでしょ? 無理なんだよ、どいつもこいつも一長一短なんだよ、お前ら五つ子かよ、花嫁かよ。別途書くので、ここでは簡単紹介で勘弁して。


 ちなみに、Copilot Pagesという少しだけ機能があるんだけど、色々やっても感想生成のシステムに仕上げることができなかった。Copilotがどうこうと言うより、そもそも機能のコンセプトが違う。五つ子以外の登場人物というくらい違う。Copilotでやりたい人は、別の開拓者の出現を待ってくだされ。


 はい、次へ。


=====

作業領域で何をやるか


 少し具体的なやり方を書く。ただ、実践とは少し距離のある、退屈な一般論になるから読む必要はない。書く必要性に迷ったが書いた、という程度のシロモノだ。


 では、当然のように、最初に作業領域を作る。そして、最初の肝になる指示を設定する。


 技術的には語弊があるが、お前はWeb小説の感想を書く読者だ、と人格を命令する工程だ。君の小説の読者を指定する。


 残念美少女の属性のひとつであるイマジナリーフレンド、それを作る工程だと思えば良い。正直、何か気恥ずかしい。私は今でも慣れない。でも、恥を捨てて仮想の人物を記述しろ。冷静に考えろ。Web小説を書いてることを職場で言えるか? それに比べたら、想定で理想の読者を書くことくらい簡単なはずだ。


 もし、君が訓練されたサンドバッグを自負するのであれば(実際は批判すらされたことがないという人が多数だろうが言わないでおく)、アンチ系の人物像を描いても良い。脳を焼かれたい願望が少しは叶うかもしれない。もっとも、想定とは異なる悪辣な批判に心折れることになると思うが。


 さて、例えば、こんな感じになる。


```

あなたは隙間時間にWeb小説を嗜む人です。

毎朝の通勤電車の中で連載をチェックして読みます。

すっとぼけてるくせにハンパない実力者が大好きです。

感想を書く時は理性的に感情を訴え、

内容を網羅しつつ項目立てて述べるようにしています。

```


 メチャクチャな人物だと思うかもしれないが、現実でも性格や嗜好と表現技量は必ずしも相関しない。感性と論述は別物だと強く意識して書く。ちなみに、実際は別の情報ももっと書く必要があるが、ここでは省略する。


 次の工程として、ファイルをアップロードする。最初の一歩だけにする。できている分を全部、とかやってはいけない。感想が欲しい範囲だけにする。プロローグや第1話になるだろう。対象サイトによっては、キャッチコピーやあらすじ情報だけになるかもしれない(実はLLMサービスと小説の全量によって大きく異なるが省略する)。


 準備が終わったら、作業領域の新規チャットの第一声は決まってる。


```

第1話を読んで感想を述べてください。

```


 これだけだ。Web小説の場合、「第1話」ではなく「あらすじ」が、最初の入力になることがほとんどだろう。また「プロローグ」に変えることもあるかもしれない。でも、本質的には変わらない。


 面倒なので、ここからは第1話から順に入力するという話にする。


 第2話も簡単で、第2話分だけを追加でアップロードして、気持ち程度に頭に「続けて」と追加した文を入力する。


```

続けて第2話を読んで感想を述べてください。

```


 第1話の時と同じように感想を書いてくれる。


 そして、第3話からが本番だ。アップロードしたファイルを全て消して、第1話と第2話の累積結合ファイルと、第3話だけの単話独立ファイルの二つをアップロードする。


 つまり、アップロードファイルは次の二つになる。


- 第1話+第2話のファイル(累積結合)

- 第3話のファイル(単話独立)


 既読分をひとつにまとめ、新規分を単独にすることで、注力して欲しい部分と過去参照分を明示することを狙っている。


 整ったら、同じように入力する。


```

続けて第3話を読んで感想を述べてください。

```


 以降は、同じように累積結合ファイルと単話独立ファイルの二つにして、感想を依頼していく。


 念の為に、例として、第5話の感想を聞く時のファイル構成を書いておく。


- 第1話+第2話+第3話+第4話のファイル(累積結合)

- 第5話のファイル(単話独立)


 以上の手順は、あくまでも基本形だ。


 資料の数やサイズの制限が緩く、小説がそんなに長大でなければ、累積結合ファイルは不要になる。資料の制限と小説の長さによっては、分割した累積結合ファイルが必要な場合だってある。


 そして、あまりにも長大な小説だと、全文は置けないので要約圧縮ファイルを使うことになるだろう。この辺りは資料の最大数、最大サイズ、最大文字数、といった各LLMサービスの上限値によるので、一概には言えない。


 多分300万字超とかいうレベルだと思う。あ、いや、コンテキストウィンドウのほうが先に尽きるか。ごめん、偉そうに書いていてきたけど、正直よくわからない。検証する気力もちょっと……ていうか、全文扱えないレベルの量で一話ずつの感想とか要る?


 あと、累積結合ファイルだけじゃダメなの? という疑問があるかもしれない。正直に言うとわからない。新規分だけ独立させて、注意点として明確にするために分けている。でも、LLM内部処理では同列になっているかもしれない。


 という訳で、以上が手順の概略だ。


=====

アカウントパーソナライズの影響


 どのLLMも、アプリ等でアカウントの設定のプライバシー辺りに、パーソナライズだのメモリーだの、という項目がある。ここでは、アカウントパーソナライズと呼ぶことにする。


 小説の感想を出力するという観点からすると、アカウントパーソナライズの影響は好ましくない。なぜなら、小説の内容を覚えてしまい、次のような動作をするからだ。


- 第1話から感想を聞こうとしても先の展開を知っている(ネタバレもやる)

- 肯定的な点を高く評価し、否定的な点に目をつぶるようになる

- 悶絶爆弾を投げてくる


 LLMはアカウントがチャットに入力する内容から、思考性、指向性、志向性、嗜好性を分析してトラッキングし、それに応じた思考や回答をするという機能がある。これが、アカウントパーソナライズの核だ。


 早い話が、あなた色に染まります、思考レベルでね、ニチャァ、と、リアルで考えたら相当重いことを平気でやってくれる。もちろん、簡単に俺色に染まるヤツに興味はねぇ、とオフにすることもできる。


 ちなみに、GoogleのGeminiアプリの場合、生の入力内容を丸々記録している(流石に期間有限だが)。アクティビティを見ると、枕足バタは必至だから気を付けろ。Geminiに「やり過ぎでは?」と聞いたら「その気持ちはわかります。要約の記録など段階を選択できるようにするべきです」と返ってきた。いや、お前だよ。


 話を戻す。ここで取り上げるくらいだから、アカウントパーソナライズは小説感想出力に影響がある。


 通常のLLMチャットアプリで、同じ小説を何度も入力して感想を求めていると、その小説の内容が常識的なものになってしまうのだ。もちろん、君のアカウントの範囲内だけだから、そこは安心して欲しい。君の恥ずかしい無双キャラの決めゼリフが、お母さんのGeminiアプリで引用されることはない。


 伏線や展開を前提知識として知っていたり、参照頻度が高く好感を持つものとみなして、多少の難はあっても肯定的評価を強調したりする。早い話が、馴れ合い読者になってしまう訳だ。


 時にはベタ褒め全肯定が欲しい時もあるが、本来欲しい感想とはそんなものではないはずだ。更に言えば、小説以外でのLLM利用にも影響しかねない。


 何度も第1話から読ませていたら「この小説、いつ読んでも心に響きます」なんて突然言われて、赤面してスマホを投げ飛ばしたくなる。


 定食屋で、毎回赤の他人のつもりで振る舞っていたのに、店員に「今日は大盛りじゃなくて大丈夫ですか?」と言われた時と同じような、いたたまれない小っ恥ずかしい体験を提供してくれるのだ。いや、これがご褒美だという超上級者に対しては、まあ、言うことはない。


 アカウントパーソナライズの質も偏ってくる。私は「感情に強く作用する物語を好む」「精緻な設定による高い整合性の維持を得意とする」「魔法での冷却に強い関心を持つ」と謎のパーソナライズをされたことがある。いや、魔法での冷却に強い関心なんてねぇよ。


 こうした経験を現実世界で、話のネタにすることもできるが、「自作の小説を? 同じものを何度も一から? 生成AIに?」という反応をする人もいるから気を付けろ。


 という訳で、LLMにWeb小説の感想を書いてもらう時には、作業領域に隔離させることが、とてもとても重要であると理解してもらえただろう。

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