黒板の端っこで

なおや ゆかり

黒板の端っこで

終業式の日、教室はやけに騒がしかった。

 通知表を見て笑うやつ、ため息をつくやつ、机に突っ伏すやつ。いつも通りの光景だ。

 私は、黒板の端っこに書かれた小さな文字を見ていた。

 誰かがチョークで書いたらしい。

「祝・赤点回避」

 思わず吹き出した。

 たったそれだけの言葉なのに、胸の奥が少し軽くなる。

 正直に言えば、私は優等生じゃない。

 頑張ったつもりでも結果が出ないことの方が多いし、将来のことを考えると不安にもなる。

 でも、赤点を回避した。

 それは間違いなく事実だった。

「おめでとー!」

 後ろの席の友達が、からかうように言ってくる。

 私は肩をすくめて、でも小さく笑った。

 成功を祝うのは、大きな目標を達成したときだけじゃない。

 ギリギリでも、転びながらでも、ちゃんと前に進めたなら、それは立派な「祝い」だ。

 チャイムが鳴り、教室を出る。

 廊下には春の光が差し込んでいた。

 今年もなんとか終わった。

 たぶん、来年もつまずく。

 それでも――

「よし、生き残った」

 私は心の中でそう言って、自分を祝った。

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黒板の端っこで なおや ゆかり @naoya06

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