第二十二章 選択の時
「魔王が——剣を収めた」
その報せは、瞬く間に戦場を駆け巡った。
兵士たちは、困惑した表情で顔を見合わせた。
人間側も、魔族側も——誰もが、何が起きているのか理解できなかった。
「店長!」
リーナが駆け寄ってきた。
「何があった!」
「戦争が——終わった」
創太は静かに言った。
「終わった……?」
「ああ。魔王が、停戦に同意した」
リーナは目を見開いた。
「本当か……?」
「本当だ」
創太は微笑んだ。
「俺たちの——勝ちだ」
しかし、問題は山積みだった。
千五百年の憎しみは、一夜にして消えるものではない。
魔王が停戦を宣言しても、それを受け入れられない者は、両陣営にいた。
「許せない!」
人間側の兵士が叫んだ。
「魔王軍は、俺たちの家族を殺した! 許せるわけがない!」
「こちらも同じだ!」
魔族側の将軍が反論した。
「人間どもは、何百年も俺たちを迫害してきた!」
憎しみの連鎖は、簡単には断ち切れない。
しかし——
「待ってくれ」
一人の魔族兵士が、前に出た。
「俺は——あの店で、飯を食わせてもらった」
「俺も」
別の兵士が続いた。
「初めてだった。人間に——対等に扱われたのは」
「……」
兵士たちの間に、ざわめきが広がった。
「あの店長は——俺たちを『客』と呼んだ」
「人間も、魔族も関係ないって——」
「みんな平等だって——」
その言葉は、波紋のように広がっていった。
戦場に、新しい空気が生まれ始めた。
創太は、その光景を見ていた。
「……届いた、か」
コンビニの理念——「誰も排除しない」「全員が客」——
その言葉が、人々の心に届いた。
「店長」
ザルヴァドールが近づいてきた。
「私は——これからどうすればいい」
「簡単だ」
創太は答えた。
「一緒に、やり直そう。ゼロから——新しい関係を作ろう」
「……できるだろうか」
「できる」
創太は断言した。
「俺が——保証する」
ザルヴァドールは、しばらく創太を見つめていた。
やがて——小さく笑った。
「お前は——本当に変な男だ」
「よく言われる」
「だが——」
ザルヴァドールは、空を見上げた。
「悪くない」
戦争は——終わった。
しかし、本当の仕事は、これから始まる。
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