2000文字前後の中に、ここまで文章の厚みを出せるとは、日本語という言語の素晴らしさを改めて感じました
まず、この物語が読者に仕掛けたミスリードに関して、「エターナル・シーズン」という装置の目的を、私は終盤まで「記憶のデータ保存」だと思って読んでいました。
だけど、物語の核心に辿り着いたとき、装置が本当に守ろうとしていたものの正体に気づき、認識が覆されました。
ここにとても文学的価値があると思いました。
そしてこの転換が、序盤に配置されたある写真裏の一文と完全に呼応していることに思い至った時、作者の物語全体の構成力の素晴らしさを感じました。
もう一点、私が深く心を動かされたのは、世界のルールの誠実さです。物語の最終盤を迎えても、ノヴァ・エフェクトは治癒されません。
文字は消えたまま、記憶は戻りません。この法則を最後まで貫いているからこそ、「それでも残ったもの」の重みが際立ちます。
この作品はいわゆるマイナスからゼロに持っていく内容だと思いました。
特に、アリサが自分の胸を叩いて笑ったというたった一行。彼女の登場する場面は決して多くないのに、あの仕草一つで、私の中に彼女という人間が立ち上がり、物語全体がゼロに収束したタイミングでした。
余韻のある深い作品をありがとうございました。
実際に、わたしたちの
未来にも起こりうるような[記録消失症候群](ノヴァ・エフェクト)。
人工知能技師のカイは世界の全ての記憶をエターナルシーズンという機械に
留めようとした。
カイ自身もノヴァ・エフェクトに罹りながら
微かな追憶を頼りに辿り着いた
アリサという少女との切なく儚い記憶。
エターナルシーズン(永遠の季節という名の機械)、
人口技能技師としてのカイの情熱を──
稚拙ではありますが、私がこの作品を読んで感じた
記憶を運ぶ器として
『美しきメカニアックな箱舟』という言葉をこの作品に捧げたいと思います。
2000文字の中で凝縮された詞的で美しい近未来の作品を
ぜひ、皆様、ご堪能ください。