『あなたはまだ読んでますか』

梶ノ葉 カジカ

迷惑メールフォルダ

夫がぬいぐるみに圧殺されてから、あなたの名前しか見えません。

 はじめまして、突然のご連絡をお許しください。


 私は亜真実(四二歳)と申します。


 つい先日まで会社員の夫と穏やかに暮らしておりましたが、彼は巨大ぬいぐるみ落下事故によりこの世を去りました。


 あの日から、心にぽっかりと穴が空いたままです。


 けれど、その夜たまたま開いた“迷惑メールフォルダ”で、あなたのお名前を見つけたのです。


 不思議ですね。※私はあなたに一度もメールした覚えがありません。


 夫が遺した少しばかりの貯金(約八二〇〇万円)がございます。


 正直、使い道がわからないのです。


 ただ、もしあなたが少しでも私の心を温めてくださるなら——


 そのうちの一部を「感謝のしるし」としてお渡ししたいと思っています。


 このメールが“運命”だと思っていただけたら、以下の項目をご返信ください


 ①血液型


 ②心に残る名言


 ③残高証明書(※恋の信頼に必要です)


 どうか、私の“二度目の人生”を一緒に歩んでください。


 ぬいぐるみを見るたび、涙が止まりません。


 敬具


 亜真実より

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