神様の宝物
鏡
神様の宝物
世界を賭けた戦いで勝ち残れば、神様になれると言う。
1人の青年が戦いに身を投じた。この時、彼には何にも無かった。だから死ぬのも生き残るのも怖くなかった。強いて言うならこんな争いに身を投じたのに、それでも生き残る事が怖かったかもしれない。
青年は戦いに明け暮れた。自分の目の前に現れる神様になりたい奴と戦って、自分を押し通した。そうする彼には何にも無いのに。別に神様になりたい訳でも無い……世界を良くしようとか悪くしようとかそういう物も何も無い。ただ、何にも無い癖に、目の前に敵が現れたら、すべてを倒した。
すべてを倒して、ある時、此処がゴールですよと神様が言った。貴方が神様ですよと微笑んだ。彼は争いに勝って、神様の仲間入りを果たしたのだ。彼は生き残ってしまった。
神様に何がしたい?と聞かれて、神様になった彼は、箱庭みたいに小さな世界を作った。とても、とても小さな箱庭。住める人数が限られるような小さな世界。
彼はそこに無いものを放り込んだ。彼が生き抜いた世界にはもう無かったものを放り込んだ。
彼には可愛い弟が居た。お父さんとお母さんを早くに亡くした彼に残された唯一の家族。彼はお父さんとお母さんの分まで弟を愛し尽くした。でもある日、彼の弟は世界から消えた。理不尽な理由で簡単に消えていった。
彼は、世界に覚えているだけの弟を放り込んだ。弟が好んでいた服を着せてあげて、弟と暮らしていた家を描いて、弟と一緒に暮らしていた村と村の人を再現して、その小さな世界に彼が思い出せるだけ思い出して描いた、生きた弟が待っていた。
神様は、作った世界に飛び込んだ。
何にも無い。何にも要らなかった。ただ弟と幸せに暮らせれば良かった。その弟が居なくなったら、何処を観て生きればいいのかさえわからなかった。何処を観ても自分の掌を観ても何にも無い。弟を守るお兄さん。それ以外の生き方を出来ない。出来なかった。わからなかった。弟に会いたかった。それ以外は何にも無い。とても神様にはなれない。でもなった。弟に会う為に。
小さな世界に溶け込んだ、お兄さんが目を覚ますと、再現された弟が泣いていた。お兄さんに抱き着いて泣いている。泣いて謝っている。神様は弟に優しく微笑んで、お兄さんとして弟を抱き締めた。
神様の宝物 鏡 @miller826
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