第2話 レイの家

 レイは暗闇の只中を飛んでいた。ここは世界の狭間の世界。いわば宇宙空間のように何も無い暗闇の世界である。


「ラーク! ラーク! 出てこいラーク!」


 レイが叫ぶ。するとどこからとも無く一人の男がレイの目の前に姿を現した。


「我が君、お呼びでしょうか?」


 この男の名はラーク。白髪と白髭を蓄えた初老の男で筋肉質な体をしており、黒いスーツに身を包む。レイの付き人である。


「家に帰りたい。用意しろ」

「かしこまりました」


 するとラークは指をパチンと鳴らす。すると二人の周りの空間が歪曲し、姿を変えた。緑の平原が広がる大地、綺麗な空気、山々に囲まれた空間。まるで地上にいるかのように、場所が変化した。これは移動したのではない。ラークが創り出した異空間である。そして二人の目の前には巨大で豪華な白い建物が出現した。レイの家である。

 レイは満足したように頷くと家の中へと入っていった。家の中は豪華な洋室だった。壁にはいくつもの頭骨が並んであった、全てレイがこれまで仕留めてきた神々のものであった。レイは手に掴んでいたノヴァの頭を気で削いで骨だけにする。そしてそれをコレクションとして壁に並べた。


「今回の相手には満足されましたか?」

「いや、退屈だった。この世に私を満足させる相手はいるのだろうか? 昔から考えていたが、本当にいないのかもしれないと不安になる」

「ほほほ。それは残念。風呂にでも入りますか? 既に沸いております」

「ん。ありがとう。風呂に入ってくるよ」


 そうしてレイは着替え室に行き、マントを脱いで、パンツを脱ぐ。裸になると浴室に入った。浴室は温泉のように広く豪華だった。そこでまずは体と頭を洗う。ボディソープとリンスインシャンプーでささっと済ます。そしてシャワーで泡を流した。体にこびり付いた血が落ちていく。床にその血が流れる。それを見ながらレイは先程の戦いを思い返した。なんともつまらない、一方的な蹂躙だった。戦いにすらなっていなかった。これまでもいつもそうだ。趣向を変えなければ、同じ事の繰り返し。つまらないものだとレイは感じた。

 そしてレイは湯船に入った。とても極楽だった。レイは気持ち良さのあまりハァ……と溜息を付いた。熱々の湯に入るのがレイの好みだった。体があったまる。疲れが取れそうである。もっとも疲れてなどいないが。


「これまで通りただ攻めていてはすぐに終わってしまう。それにはもう飽きた。やり方を変えねばなぁ……」


 それから長い間、レイは湯船に浸かり続けた。

 やがて風呂から上がるとラークが食事の準備をして待っていた。レイは椅子に座ると食事を始めた。食事はステーキ、ライス、ポテト、みそ汁などである。それがなんと十人前以上。全てレイが一人で平らげるのである。


「我が君、お味はいかがですか?」

「ん、美味いよ。ラークの料理は世界一だ」

「ありがとうございます」


 ステーキの身をナイフで切ると肉汁がジュワッと溢れる。切った小さい身をフォークで差し、口に運ぶ。肉は柔らかくとてもジューシー。噛む度に肉汁が溢れてとても美味しい。そして肉が口に残っている内に、ライスを口にかき込む。これもまた絶品。レイは美味い美味いと心の中で叫びながら食した。レイにとってラークの手料理は戦闘の次に楽しみなものであった。


「ラークよ。私は次の世界に攻め込む時は趣向を変えようと思う。これまで通りにしていてはすぐに制圧して終わってしまう。それではつまらん。それでどうしたら良いと思う?」


 レイはステーキを頬張りながら言った。ラークは少し考えてから答えた。


「ならば力を封印しては? 弱者のふりをして潜り込むのです。そして神との戦い以外は力を使わない。初心、忘れるべからず、ですよ!」

「やっぱりそれしか無いよなぁ。でもどっちにしろ退屈な戦いになりそうだ」

「力を封印すれば、弱き者との戦いもスリル満点になるかもしれませんよ? まぁ危なくなっても私は助けませんけどね」

「それで良い。お前は私の帰る場所を常に守っていれば良い」

「了解であります」


 そして食事を終えたレイは布団にこもり、眠りについた。





 目を覚ましたレイは早速新たな世界に攻め込む事にした。


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」

「今回はいつもより遅くなるから気長に待っててくれ」

「かしこまりました」


 レイは家を出て空を飛んでいった。いくつもの雲を突き破ること数時間。やがて空が薄くなって、暗闇への姿を変えた。それはラークの創った異空間から抜け出した証拠であった。

 また何も無い暗闇を突き進むレイ。更に移動を続けていると周囲に点々の光の粒が見えてきた。その光の一つに向かって飛んでいく。それは世界のカケラだった。この暗闇の空間にはこのような世界のカケラが無数にあるのである。


「今回は一平民として活動するか。じっくりゆっくりと神を攻めれば良い。ふふふ」


 そうしてレイは世界へと入っていった。

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世界を破壊する最強魔神 阿部まさなり @masanari20

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