とびらのむこうに ~ボッチ少女の2世界ものがたり

夏之ペンギン

第1話  異世界の扉

 めんどくさい話はしない。ごく日常が、変な方向にずれただけ。わたしはそう解釈して、納得した。わたしは高崎しのぶ。高校1年生の15歳。もうすぐ16歳。


 いつも学校や教室、そして日常もひとりぽっち。いや両親や兄はいるけど、共働きでふたりはいつも夜遅く帰って来るし、兄は引きこもり。もうすぐ二十歳にもなるのに、自室でゲームばかりしている。ご飯も洗濯も掃除もみんなひとりで済ます。いわゆる家庭内独り暮らしっていうやつ。


 せめて友だちくらい、と思うのは自然の成り行き。でも意気地のない自分にはけっこうハードルが高いのよ。だからこうして神頼みしてるってわけ。近所の神社の、ご利益がどれほどあるか知らないけれど、まあ近所のよしみでよくしてもらいたいものだわね。


 そうしてその日も学校帰りにお参りに。夕日が神社の鳥居を照らしてきれい。さあお賽銭の小銭を数枚、賽銭箱に入れて、鈴を鳴らす…


――ありがとうございます。他力本願の規定金額に達しました。選択はふたつ。神域の扉を開きますか?それとも異世界の扉を開きますか?


 どこからともなく聞こえてきた声。まるであの世から聞こえてきたような。でも扉って何だろう?神域の扉?なんかすごい神さまがいそうな感じ。それと、異世界の扉ですって?マジウケる。そんなニッチな世界が本当にあるんだ。えーと、二択ってことだから、そりゃ神さまの方を選ぶべきでしょうけど…いやなんだその異世界って。すっごく気になるんですけど?


「あのですね、異世界ってどんなところですか?」


――質問はなし。行ってみればわかるでしょう。とくに希望がなければキャンセルしますが。


「いえそれはしません。では…異世界の扉の方を選びます」


――了とします。異世界の扉を開きます。お帰りは自由ですが、ふたたびその世界に戻るには、条件があります。


「条件?どんな?」


――何かひとつ、むこうの世界からの文物を賽銭として奉納すること。しからばふたたびその世界の扉は開かれるでしょう。


「ふーん、それって何でもいいの?石ころとか草とか…。


――せめてあなたに価値が見いだせるものにしてください。


「つまりわたしがいいな、っと思ったものね。わかったわ。じゃあ扉を開けてください!」


――いちおう警告しておきますが、異世界で死んだら転生とかしないですからね。新だら死にっぱなし。なるべく死なないように。せめて大怪我した段階でお戻りください。


「いやそれどういうこと?それって絶対安全じゃないの?っていうかマジ危険なところってこと?」


――ではお気をつけて…


 一瞬目がくらんだ。なんかそこに扉があった気がするけど、そんなものはもう見えない。ようやく光が消え、目を開くと…そこは見たこともない景色が広がっていた。


「うそ…」


 連なる山々はおかしな色で染まり、空は青いけれど虹がやたらめったらかかっている。樹々は青々とはしているが、なんでみんな動いているかわけわかんない。わたしが立っているところだって、地面なのか石畳なのかわからないようなものだったし、空には見慣れない大きな鳥が飛んでいた。これ絶対ヤバいところだ…。そう思ったわたしに、何かが覆いかぶさって来た。ああもうダメだ、とそのとき思った。

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