第7話 特異点になっているシェアハウスは引き寄せの法則を発動させた?!
第7話:なぜか仲間が増えた
静かだったはずの朝が、今日はやけに騒がしい。
「――だから! 私は正式にここに住む権利があると思うのよ」
ダイニングテーブルを挟んで、腕を組んだサキュバス――ルシアが胸を張る。
つい数日前まで、俺の生気を狙って襲いかかってきた存在とは思えない態度だ。
「権利って……どこから出てきたんだ、その話」
思わず頭を押さえる俺の横で、霊界案内人のレイナが楽しそうに口笛を吹いた。
「いや〜、でも結果的にここ、また賑やかになったじゃん? ほらほら、霊的にも魔力的にも、空き部屋は埋めたほうが安定するし?」
「勝手に霊的事情で決めないでくれ……」
ため息をついた瞬間、背後から小さな声が聞こえた。
「……落ち着かない、けど……悪くはない」
ソファに丸まっているのは、異世界から来た魔法使い見習いのエイルだ。
毛布にくるまりながら、ちらりとこちらを見る。
「人が増えると、結界の流れが……強くなる。ここ、やっぱり回復に最適」
「それは良いことなのか、悪いことなのか……」
さらに、キッチンの隅ではエルフのセラフィナが、慣れない電子レンジと格闘していた。
「この箱……なぜ火も魔法陣もないのに、温まるのですか……?」
「それは文明の力だから触らなくていい!」
――そして、その光景を完全に“異常”として認識している唯一の存在。
「……ねえ」
恐る恐る声を出したのは、大学の同期・渚澪だった。
「これ、夢……じゃないよね?」
「残念ながら、現実だ」
「残念なんだ……」
彼女は現実担当として、この家の“普通が崩壊した瞬間”を一番まともに受け止めてしまった被害者だ。
そんな混沌の中心で、当の本人――ルシアは椅子に腰掛け、足を組み直す。
「で、話を戻すけど。私はしばらくここにいるわ」
「“しばらく”ってどのくらいだ」
「さあ? 気が済むまで?」
「一番困る答えだ……」
だが、反論しようとしたところで、監視者カナデが静かに口を開いた。
「合理的ではあります」
「お前まで何を言い出す」
「この家は、すでに複数の気・魔力・霊的存在が交差する特異点。サキュバス一体が追加されたところで、危険度は誤差です」
「誤差って言い切るな」
「それに――」
カナデはノートPCから目を離さず、淡々と続ける。
「ルシアが外で活動するほうが、周囲への影響は大きい。ここに置いて監視できるほうが安全です」
「……監視される前提なのね、私」
ルシアは肩をすくめたが、不思議と嫌そうではなかった。
「まあ、退屈しなさそうだし?」
その言葉に、セラフィナがぱっと顔を輝かせる。
「では、ここは“森の外の共同生活拠点”ということですね!」
「名前つけるな!」
「シェアハウスです……」
気づけば、誰も「出ていけ」とは言っていない。
言える空気でも、状況でもなかった。
俺は改めて部屋を見回す。
霊界案内人、エルフ、異世界の魔法使い見習い、監視者、一般人の同期、そしてサキュバス。
――どうしてこうなった。
「なあ……」
全員の視線が集まる。
「俺、普通の大学生だったはずなんだけど」
ルシアがくすっと笑った。
「今は違うみたいね。あなた、いろんな“気”を呼び寄せる体質みたいだし」
「自覚はないんだが……」
「自覚がないから、余計に危険なのよ」
そう言って、彼女は悪戯っぽく微笑む。
「でもまあ……しばらくは平和にやりましょ?」
その瞬間、誰かが深く頷き、誰かがため息をつき、誰かが笑った。
――こうして、
なぜか仲間が増えたシェアハウスの日常は、
本格的なドタバタラブコメ体制へと突入するのだった。
(俺の平穏? そんなものは、とっくに結界の外に置いてきたらしい)
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