「きみを愛することはない」祭りが開催されました

吉田ルネ

第1話 

1 イアン


 様子がおかしい。

 みんなおれを遠巻きに見ている。遠巻きに見ながら、ヒソヒソニヤニヤしている。

 なんだ。

 中には、じろりと睨みつけながら舌打ちしてくるヤツもいる。


 この一週間、王太子殿下の地方視察旅行に護衛としてついていた。護衛と言っても殿下の荷物管理や、野次馬の整理などだ。殿下はずうっと遠くにいる。豆粒くらいにしか見えない。でも護衛は護衛。

内政は安定しているからテロなどの恐れはほぼなし。過激派やカルト教団には、諜報がばっちり張り付いているので怪しい動きがあれば、即対策が打たれる。安心安心。

 視察は順調に進んだ。我々騎士団員も王太子殿下のご相伴にあずかり、毎晩たらふくごちそうをいただいた。

 今回は沿岸地方だったから、山盛りの魚のフライに魚介のスープ、でっかいエビにカニ。うまかった。

 地方視察の特権だな。


 無事に視察を終えて、王宮に帰ってきたのが今日の夕方。

 本来なら「おつかれさま」とねぎらわれるべきだろう? それがなんだ、この有様は!


 女子職員は目も合わせようとしない。用事があって話しかけても、ものすごく距離をとられる。3メートルくらい離れている。遠くて大きな声じゃないと聞こえない。

 一歩近づくと一歩離れる。なんとしても3メートルを保持したいようだ。

 中には露骨に顔をひきつらせるヤツもいる。

 なんでだ。


 おれは女子に人気があったはず。騎士だから背も高くてたくましいし、体つきに似合わず甘いマスクも人気だったはず。

 やや暗めだが金髪だし、やや濁っているが碧眼だし。モテ要素はコンプリートしている。

 しかも騎士団所属。お姫様抱っこなんてお茶の子さいさい。


 ふり向けば「きゃあ」乱れた髪をかき上げれば「きゃあ」汗をぬぐえば「きゃあ」だったのに。

 こんな扱いは、生まれてこの方はじめてだ。

 なんたる屈辱。


「きみはそんなヤツじゃないと思っていたよ。残念だ」

 上司には残念発言された。

「なあ、おれ、なにかやらかしたか?」

 友人に聞いてみた。

「さ、さあな」

 ことば少なに逃げるヤツ。あるいはニヤニヤしながら

「気のせいじゃね?」

 いやいや、完全にバカにしてるだろ。

 あるいは

「知るか! 自業自得だろ!」

 と怒られたり。


 なんだ! なんなんだ!


「さっさと帰った方がいいぞ」

 悪友のビリーが、ニヤニヤしながら言う。

「なんなんだよ。みんなどうしたんだ」

「みんなっていうか、なあ?」

 ビリーがヘラヘラする。「なあ?」ってなんだ。なんの疑問形だ。憎たらしい。

 頭にきたから、とっとと片づけをして帰ることにした。提出書類は明日でいいや。


 本邸に顔を出した方がいいよな。おみやげも渡したいし。母親が楽しみにしていた小魚と小エビを干したヤツ。骨が強くなるんだとか。へえ、強くなるんならおれも食べた方がいいかな。

 もちろん、カノジョにも買ってきた。あん肝の缶詰とウニのビン詰、それに名産の真珠のネックレス。喜ぶだろうな。いかん、にやける。


 馬車で本邸に乗りつける。使用人たちがバタつく。いやいや、今さらどうしたんだ。いつものことじゃないか。

 家令が飛びだしてきた。

「ぼっちゃま!」

 ぼっちゃま、やめろ。いい年なんだから。

「どうしてこちらに来たのですか。新居に行ってくださいよ」

「ええー、あっちはあとでいいだろ」

「ダメです。すぐに向かってください」

「なんだよー、せっかくおみやげ買ってきたのに」


 ドスドスドス!

 本邸にはありえない足音がひびいた。

 なんだ?


「イーアーン!」

 父親だった。真っ赤な顔で……。怒ってる?

「この、面汚しが!!!」

 突進してきたと思ったら、いきなり殴られた。無防備だったおれは、はじき飛ばされてしまった。

「な、なにをするんだよ」

 オヤジにもぶたれたことないのに! いや、今ぶたれたが。

「なにをするんだは、こっちのセリフだ!」

「あああ、旦那さま、落ち着いてください」

 家令が間に入るが、父親はそれすら押しのけた。


「どの面下げて帰って来た!」

 なにを怒っているのか、見当がつかない。

「貴様、サーシャになにをした!」

「え? サーシャ? 別になにも」

「うそつけ! ならなぜ『きみを愛することはない』祭りが開催されたんだ!」


 なんだそれーーーー⁉




2 サーシャ1


 婚約者のイアンに恋人がいるのは知っていた。

 浮気? 本気なのか? どっちかよくわからない。

 ただ、婚約が決まったのに、いまだに貼りついている女ってどうなの?

 ……「真実の愛」とか言わないだろうな。

 このままだと愛人になるんだけど、それでいいんですかね。


 王都の中心部のアパートメントに囲っているらしい。

 囲っているのか、イアンが入り浸っているのかどっちだろう。

 まあ、どっちでもいい。よくはないが。でも期待もしていなかったし。家のなんやかんやの事情で結婚することになっただけ。


 イアンははじめっから、態度が悪かった。わたしが気に入らなかったのか、親が決めた婚約が気に入らなかったのか、両方なのか。

 親がいる間は、愛想笑いは浮かべていたけれど、いなくなったとたん「はあ」と大げさにため息をついた。

 まるで自分だけが犠牲者みたいな顔をして。


 いやいや、わたしだってあなたが好きなわけじゃありませんよ。

 それでも婚約した以上は、うまくやっていきましょうと、まがりなりにも思ったんだけどね。睨みながらため息をつくやつとは、うまくやっていける気がしない。無理よ。早々に見切りをつけた。

 わたし、悪くないよね。

 もうちょっとマシな男、いるでしょ。

 イアンはどういうつもりなのか。


なんか、自分ではイケてるつもりらしい。モテると思っている。

 だから、イケてる自分が結婚してやるんだから喜べよ、みたいなことは言われた。

 はあ?

 金髪碧眼と言い張るけれど、金髪というより藁色。青というよりちょっと青っぽいグレー。決して青じゃない。それはグレーだ。

 まあ、背が高いのは認める。騎士らしくたくましいのも認める。

 でもな。


「ナルシストよね。自分が『きゃあきゃあ』言われてると思ってるみたいだけど、『きゃあきゃあ』言われているのは、いっしょにいるエドガーさんだもんね」

 これが女子の総意です。

 残念なイケメンもどき。


「おとうさま、もうすこしマシな人がいいです。さすがに、アレはちょっと」

 そう言ったらば

「なんやかんやの事情でしかたがないんだよ。どうしても我慢ができなかったら、そのとき考えるから」

 などと宣った。これは絶対考えないな。あきらめた。


「そうよ、殿方なんて独身の頃は遊びまわっていても、結婚したら落ち着くものなんだから」

 おかあさままでそう言う。

 やだなー、やだなー。認めてくれないと家族にまで嫌悪感が募っていく。

 王宮の図書館司書をしているわたし。必死に勉強して、がんばってがんばって、やっと採用試験に合格したのよ。念願の司書になったのよ。仕事にも慣れてきて、なにかしらを任されるようになった今日この頃。

 辞めたくないのですよ。


 実家は優秀な兄が継ぐ。同じく優秀な次兄もいる。ならば末娘のわたしは、好きにしてもよくない? 昨今増えつつある職業婦人。せっかく司書になったんだし、無理に結婚することもなかろう。親のすねをかじるわけでもなし。立派に自立してみせましょう。

 なんて思っていたのに、「立っているものは親でも使え」的な発想で、「生まれたものなら娘でも使え」とばかりに取り決められたこの結婚。

 ふざけんなや。死んでも辞めんぞ。女1人でもちゃんと自立して、高みから笑ってやらぁ。

「赤ちゃんができたら、子育てに専念しないとね」

 なんて、おかあさまはおっしゃる。さいわい? わたしに無関心なイアンは、仕事をやめろ、なんてことは言わない。子どもなんて作るつもりはないんだろう。こっちにしたらラッキーだ。


さて、騎士団のイアンも王宮にいる。詰め所は別棟だけれど。

 二人とも王宮にいると、共通の知り合いもいるわけで、なにかと口さがない。

 ご丁寧に「女の子といっしょに街で買い物をしていたよ」なんて、教えてくれる人もいる。

 だからなに。

 浮気されてかわいそうに、って笑ってんの?

 まあ、いいですけど。覚えてろよ。そのうち高みから笑ってやらぁ。


 なんとか婚約解消できないかと足掻いてみたが、どうやら無理そう。イアンの親も「ちゃんといい聞かせるし、結婚したらきっと落ち着くと思うから」って言う。


 きっと?

 ダメじゃん。そんな都合のいい期待なんか、とてもじゃないけど持てません。

 だったら結婚はそのままに、別居とかできないかな。地方に転勤とかないですかね。できればそのままフェードアウトしたい。


「隣の帝国なら司書の伝手があるよ」

 と上司のカーソンさんが言ってくれた。なんてステキなカーソンさん。中肉中背の平々凡々なおじさんだけど、愛妻家で子煩悩。しかも帝国にもパイプを持つなんて、サイコーではないか。

 結婚するならこういう人がいいなー。ヴィジュアルは二の次だ。誠実で裏切らない男が一番だ。

「でもさあ、勝手に決めていいの? ちゃんと親御さんと相談したほうがいいと思うけどな」

 ははは、とわたしは笑った。

「できていれば、こんな相談しませんよ。それに向こうだってわたしと結婚するより恋人といっしょになったほうがいいでしょう?」

「それもそうだね」

 ははは。二人で向かいあって笑った。

 うん、家の事情なんか知ったことか。


 結婚の準備だけは順調に進む。乗り気なのは親だけ。子どもの顔色に気づけや。




3 サーシャ2


結婚式まであとひと月になった。

 ウェディングドレスもできあがりつつある。まったく乗り気じゃない目の死んだ花嫁に、頬を引きつらせながら仮縫いをして行くお針子さん。

 とっても申し訳ない。


 新居はイアンの実家近くの、こじんまりとしたお屋敷が用意された。イアンは三男なので、実家を出ることになっているから。

 それも申し訳ない。翌日には空き家になるというのに。


 なぜなら、帝国の図書館司書のお話が決まってしまったから。結婚式が終わったらすぐにむこうに発つ予定だ。

 申し訳ないが。

 それもこれも、わたしの言い分をだれも取り合ってくれないからよ。

とはいえ、わたしの心はすでにウキウキ。なんといっても大陸一の蔵書を誇る帝国図書館。ここの何倍もあるのだ。今まで見たくても見れなかった本が五万とある。見放題。もちろん仕事はするが。

 これがウキウキせずにいられようか。

 もう結婚式(?)が待ち遠しくて仕方がない。


 そして王宮内ではおたがいに不仲を隠そうともしないこの結婚の行方が、おもしろおかしく取り沙汰されていた。


「きみを愛することはない! って言うんじゃない?」

「まさか、今どきそんなこと言うヤツいる?」

「アイツ、言いそう」

「言いそう」

「わたし、言う方に1000ベル!」

「おれも言う方に1000ベル!」

「おれも言う方に1000ベル!」


 通りがかりに給湯室から聞こえてきた会話。全員言う方に賭けたら賭けにならないね。

 っていうか、そんなに信用ないんだね、イアン(笑)。


「もしかしたら家の面子を立てて、そこまで言わないかもしれませんよ」

 ひょっこり顔を出したら、その場にいた全員がのけぞった。

「その賭け、流行ってます?」

「あ、ああ。うん、まあ」

 みんなはもごもごと言葉を濁し、目を逸らした。そう、あちこちでやっているんだ。へえ、そう。


「ああ、そうか。家の面子ね、それは考えるだろうな。じゃあ、言わない方に賭けようかな」

 ひとり変えた。

「そうそう、アレもそこまでバカじゃないと思いますよ」

 もう一押ししてやる。

「そんな気もしてきたな。よし、おれも言わない方に1000ベルだ」


「じゃあ、わたし取りまとめますよ」

 ならば胴元を請け負ってやろうじゃないか。

 ええっ?

 あなたが自分でやるんですか?!

 全員の目がそう言っていた。


「だいたい、どうやって確認するんですか? たぶんイアンはその場しのぎの嘘つきますよ」

 わたしならしっかり確認取れますし。

「ああー。それもそうね」

「わたしも当事者ですから、除外しましょう。証人はうちの執事と侍女でいかがですか?」

「うん、それならいいだろう」

 みなさん、納得されたようでなによりです。

 よかった。おかげさまで、出国する前に一儲けできそう!


 これまで散発的に起きていた賭けをまとめてしまおう。小口でやるより大口でやった方が儲けが大きいからね。うふ。


「胴元として20パーセント手数料をいただきます。打倒ですよね!」

「はい、もちろんです!」

 これも納得していただきました。なによりです。

 これでどっちが勝ったとしても、わたしにはそれなりのお金が入ってくる。

 わたし、商才があるのかしらね。


「それから、この賭けはイアン本人には絶対に内緒です。バレたらアイツ情報操作しますからね。自分が儲けようとするはずですから。気をつけてくださいね」

「イエス、マム!」


 預かったお金と帳簿は、わたしが肌身離さず管理する。

 その日のうちに、この賭けは騎士団はじめ王宮の官吏や使用人にまで拡散し、ものすごく大きなギャンブルになってしまった。


 本来なら、王宮内でこんな賭け事をしたら大目玉なのだが、なにせ胴元が賭けの対象者、しかも被害者側ということで、見逃してもらっている。

 たぶん慰謝料替わり?


 いつも静かな図書館は、翌日から賭けを申し込む人がひっきりなしにやって来て大わらわだった。

「ええー、なにやってんの?」

 はじめしかめっ面をしたカーソンさんも、「言う方」に5000ベルを賭けた。

「5000もですか」

「うん、アイツは言う。そういうヤツだ」

 確認したらそう言い切った。


 ともすれば「言う」にかたむく。どれだけ信用がないのだ、アイツは。

 賭けが成り立たないと困るので、小細工をする。

「見栄っ張りだから、そんなことは言わないと思いますよ」

「騎士団の中で自分の立場が悪くなるようなことはしないはず」

 等々。五分五分をキープしないと、賭け自体つまらない。


 最終的には、王宮中を挙げてのお祭り騒ぎ。ダービーもかくやという、とんでもない額になってしまった。名簿の中に王太子殿下のお名前を見つけたときには、さすがに目眩がした。


   ***


 そして、とうとう結婚式。

 自分が結婚するということよりも、賭けの結果のほうが気になるという、鬼畜な心中。

 

「おれは明日から王太子殿下の護衛で、一週間出張だからな!」

 顔を合わせたとたんに、イアンはそう言い放った。結婚式当日なのに。

 ふつうだったら「はあっ?」ってなるんだろうけど、どっちでもいい。むしろ、いないほうがやりやすい。

 ついでに王太子殿下に結果教えてくれたらいいのに(笑)。


 そしてむかえた盛大な結婚式。

うちの父は鉄道会社の社長をしている。共同経営という形で、出資者は5人。筆頭株主は他にも様々な事業を手掛けていて「忙しくて社長は無理」というものだから、2番目の株主である父にお鉢が回ってきたのだ。

 他の4人は取締役。会社の経営はこの取締役会で決定される。社長ではあるが、父に会社の決定権はない。


 イアンの家は輸送会社を経営している。馬車の時代から続く地域限定的な輸送会社だったのが、列車の普及とともに急速に事業を拡大し、今やこの国で1,2を争う大手輸送会社だ。

 なんやかんやの事情とは、きっと流通に関する業務提携のことなんだろうな。両社が手を組んで、この国の物流を牛耳ろうとか思っているんじゃないかな。

 だったら契約でよくない? 契約代わりの結婚なんていつの時代だよ。


 その2家の結婚式だから、当然盛大(笑)。経済界の大物がいたりする。明日には赤っ恥なのに(笑)。

裏の事情を知っているわたしの王宮関連の招待客は、みんなうっすら笑っている。わたしとイアンは愛想笑いを浮かべつつ、目も合わせない。

 大恥かく親には申し訳ないが、それもこれも自業自得。子どもを駒みたいに使うからだよ。明日になって青ざめるがいいよ。

 NO,人権侵害!

 守ろう、基本的人権!


   ***


 結婚式の翌朝、わたしはみなさんのワクワク顔に迎えられて出勤した。図書館前はすでに黒山の人だかりができていた。

「待ってました!」

「いよっ! 大統領!」

 拍手で迎えられた。わたしはおほん、おほんともったいぶって咳払いをする。

「みなさん、たいへん、たいへんお待たせいたしました。それでは発表いたします」

 どろろろ。ドラムロールが聞こえそうな中、カーソンさんに見守られながら、掲示板に恭しく捧げ持った紙を貼りだした。


結果:言った

「きみを愛するつもりはない。おれは恋人だけを愛する」

   イアンははっきりそう言って出て行った。恋人のところへ行ったんですかね。


「おおっ! やった!」

「くっそ! イアンのヤツめ!」

 貼りだしたとたん、歓声と怒号が上がった。

 イアン、よかったね。みんな楽しんでくれたよ。

 それから、執事と侍女の署名付きの証言も貼りだした。


「ほんとに言ったんだ」

 カーソンさんが腹を抱えて笑っている。

「言ったんですよ。もう笑いをこらえるのがたいへんでした」

 もう、おおっぴらに話してもいいので、王宮中がこの話題で持ちきりだ。

 本人がいたら、どんな顔をしたんだろう。見られないのが残念だ。


 夕べ、イアンが出て行ったあと、自分の取り分きっちり20パーセントもらい、分配金の計算をすませた。それをそっくりカーソンさんにあずけた。

「すみませんが、払い戻しおねがいしますね」

「ああ、ひさしぶりに楽しかったよ。ところで、結婚の翌日に離婚になるのかい?」

 そのへんは抜かりない。わたしは一枚の紙をぺらっと出して見せた。


「いいえ、そもそも婚姻届けは出していませんので」

「ええ?」

 婚姻届けはこちらで出すからと、うちの執事が預かったのだ。そしてその紙きれは今わたしの手中に。

「おやおや」

 ふふっと笑いながら、わたしはその紙きれをビリッと裂いた。


「わたしは未婚のままです」

「そうか、むこうで真の恋人ができるといいね。じゃあ気をつけて」

「はい、最後までお世話になりました」


 カーソンさんに見送られて、王宮を出た。そしてわたしはカバン一つ持って帝国行きの列車に乗った。


 自分の家と、イアンの家には訣別の手紙を出しておいた。明日か明後日には着くだろう。


 悔い改めろ。ざまぁ。


 窓の外は、わたしの旅立ちを祝うような、目の覚めるような明るい青空だった。




 …………遠い山なみの稜線に、一か所だけもやっとした黒い雲がかかっている。晴れの旅立ちに水を差すようで、なんか不吉だ。わたしは眉をひそめた。

 …………見なかったことにしよう。気にしない、気にしない。

 わたしは頭を振って、雲から目を逸らした。



4 名もなき恋人


 「きみを愛することはない」祭りの愛人の方と呼ばれています。

 なぜ。



 おしまい


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