家が燃えたので、僕のストーカー(美人漫画家)と同棲します

大いなる凡人

第1話



 自分のやりたい事ってなんだろう。 将来について考えた時、思考はいつも分厚い壁の前で停止する。



 僕には趣味と呼べるものはないし、夢中できるなにかもない。仮に興味を持ったとしても、すぐに飽きて手放してしまう。

 何事にも執着できない僕には、人生の取っかかりとなるフックがない。自分のやりたい事を見つけるなんて、晃大な砂漠に落ちた一本の針を、磁石もなしに探し出すようなものだ。



 日本には、一万七千もの職があるようだけれど、無限にも等しい人の数と比べれば、才能の受け皿としては狭いと言わざるを得ない。

 もし仮に、僕に才能があるとして、その才能の受け皿がこの世界に用意されているのだろうか。



 そんな青臭い自問自答でさえ、最近ではすっかり錆び付いてしまった。 僕はただ、厳格な父が敷いたレールから逸脱し、東京という名の砂漠を彷徨う亡霊だった。地に足も着かず、誰でもない透明な存在だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る