閉じてもいい?

第1話

ぬるり。

服の中に何かが這っていったような、嫌な感覚がした。

最近祖父母の家に行っていないからだろう。彼らはとても親切で、とても偽善的だ。常に集中していないと、あっという間に飲み込まれてしまう。

「遠くに行くの?それとも埋めてくれるの?」祖母が聞いてきた、私はそっと微笑みながら、自分の中で数が合うかどうかをぐるぐると調整していた。

ぐにゃぐにゃと祖母の顔が歪んでいく、祖父は言った「身体の中から速度を上げて来る奴らがいるだろう?」。

既に飲み込まれそうになっていることに気づく、我に返った私は祖父母にそっと囁く「そろそろ閉じてもいい?」

ひっくり返りかけた茶碗を、そっと受け止める。

それを見た祖父母は、真っ暗だった目に少しだけ光を宿した。

「またうまくいったときは、いらっしゃい」祖母に言われた後、全身に鳥肌が立った、目玉の裏まで。

帰り道は笑いながら歩いた、ふふふふふ。どんどん溶け込んでいく気がする、まだ昼頃だと言うのに。そこにはたしかに何かがある。

じわり。

足元から何かが這い上がってくるような感覚、そうっとそうっと周りを見回す、いつものように何もないまだ今は空っぽだから?

遠くから軋む音が近づいてくる。

カバンをあさってみる。奥の方に、硬くて、そして温かい何かを感じる。確かめずにそうっと手を離す。

あえて正体は見ないまま、あえて正体は見ないまま。

私はもう後戻り出来ないところに脚を動かした。

凄い速さでぐるりぐるりと目を回す、景色が揺れるのは片足が痛むせい。

鳥居の後ろに見えるのはあの日置き忘れていた散文詩。

ぽたり。

またあれがやってきた「ここまで来たらもういいだろ?」「まあるくて真っ黒なものをちょうだい」

血のにじむ声で囁かれる気がした。

確かめるとずれることがある。

あの感覚は終わっていない。

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