残された勇者は《英雄》になれない
了静
残された勇者の物語
ーーーーこの世界には、昔、魔王と呼ばれた存在がいた。
人類はその脅威への対抗手段を持たず、日々を怯えながら過ごしていた。
しかし、そこに現れたのが、かの〈勇者〉であった。彼女は、人類によって作られた最終兵器、人造人間だった。
最強の力を持った彼女に組み込まれた命令はただ一つ、“人類を助け、人類の〈英雄〉となる”こと。
1人で数々の魔王の手下共を蹴散らし、そして、ついに魔王との戦いで勝利、彼女はついに人類の〈英雄〉となり、その功績は世界中から祝福された。
しかし、その戦闘での消耗は激しく、その出来事から1000年、密かに実験室の中で自己修復を行っていた。そして、遂にその時がやってきたのだったーーーー
ーーーーーー『自己修復完了 再起動します』
カプセルが開き、中から麗しい女性が出てくる。
「んんっっ、ぷはぁ」
長い眠りから覚めた彼女は、まるで何事もなかったかのように、外へと歩みを進めた。
・・・私は、カミエラ。魔王討伐のため、人類が作り出した人工知能搭載の人造人間です。
「一体、何年が経過したのかしら?」
ふと横のパネルを覗く。
******************
・・3957/7/17 7:16 ・・
修復完了 修復時間 1036年18日6時間51分
******************
「1036年ですか。意外と短かったですね」
現在の日時を確認したら、まずは世界の安全を確認しなければ。
カミエラは、実験室から外へ飛び出す。
朝焼けが眩しい。まあ時間的に当たり前だけど。さて、それでは出発しますかね。
▽
歩いて森を抜けると、そこには小さな村が見える。
ここは、見たことがありません。時間が経って、ここも変わってしまったのでしょうか。
農村...?ビルもアパートも見当たりませんね。あるのは木造建築ばかりです、それも太古のものによく似ていますが。
ザッザッザッ
「ここは、やはり農村ですね。自然が豊かで、いいですね」
隣にある畑も、とてもきれいに手入れをされているようです。ただ、全て手作業なのでしょうか、トラクターも、車さえ見当たりませんね。
そこに、1人の男が通りかかった。
「おや、こんなところにお客さんかな?お嬢ちゃん、この村の人間ではなさそうだけど、どこから来たんだい?」
『スキャン開始・・・』
あれ?スキャンできませんね。まだ故障しているのでしょうか。まあ、いいです。
「おはようございます。今日はいい天気ですね」
ーーーちなみにカミエラは、魔王との戦闘に特化した人工知能。人との会話は、あまり得意ではなかったっっっーーー
「お、おはよう。それで、嬢ちゃんは一体どこから来たんだい?」
「私は、遠い遠いところから参りました。カミエラと申します」
カミエラは丁寧に答えた。
「遠いところ、か。まだ若そうだが、そんなところから来たなら、さぞ疲れるでしょう。ここには温泉もある。ゆっくりくつろいでいくと良い」
「は、はあ」
私は、ここにいて良いのでしょうか。一刻も早く、人類に危機が訪れていないか確認しなければなりません。
「いや、でも私は・・・」
「いや、遠慮せずに来なさい。ほら早く」
言われるがまま、村へと入ってしまった。こうなったら、この土地の平和も、確認しなければ。
「こんな朝に温泉はやっているんでしょうか」
「いや、私が温泉旅館を管理していてね。大丈夫、朝風呂にちょうど開いてるから」
カミエラが連れて行かれたその先には、大きな旅館がみえる。
「とても大きいですね。いつ建てられたものなのでしょうか?」
ここも、木造です。この村には、木造の建物しかないのかもしれませんね。
それでも、なんだかとても綺麗です。
「ああ、この旅館かい?これは、確かちょうど100年くらい前、かな。よく掃除しているからとても綺麗だろう?」
「100年・・・この村ができたのは何年前位なんですか?」
「うん?さぁ〜、ちょっと知らないな。でも、ずっと昔からあるって聞いてるけど」
知らないのか。私が初めて生まれた頃、1度だけこの場所を見たことがあります。実験室を出て、はじめての光景でした。
確か、ここは農村ではなかった。たくさんの研究所が立ち並ぶ、人間の知恵の結晶の地であったはずです。
一体、どうしてこんな姿になってしまったのでしょうか?
カミエラには、疑問が募るばかりである。
「ささっ、そんなことより、早く入ってください」
*〈温泉旅館〉*
「ここが入り口です。どうぞゆっくりしていってください」
私は、当たり前だが、温泉に入っても何ら意味はないんです。人造人間だから。でも、まぁ入ってもデメリットはありませんし、体験しておくのは良いことかもしれませんね。
カンッ
「ここは・・・露天風呂ですか」
ボチャン
「ふぅぅ、これはいい湯加減ですね。きっと人は喜ぶでしょうね」
それにしても、本当にここはどうしてしまったのでしょう。1000年が経ったとは言え、ここまで退化するものでしょうか?」
ーーーーーーそろそろ上がりましょうか」
よいしょ。あれ、ここ、塗装剥がれかけてますかね?どうしましょう・・・まあ、私の仕事に支障はないですよね。
「上がりました」
上がると、目の前にはさっきのおじさんがいる。ここで待っていてくれたなんて...
「どうですか?ここの温泉は」
「素晴らしいものでした。ありがとうございます。ちなみに、代金はおいくらでしょう」
「特別に、今回はお代は無しでいいですよ」
な、何て親切な人間なんでしょう。しかも、ずっと笑顔で話してます、、私も見習うところがありそうです。
「ありがとうございました」
「いえいえ、またのご来館お待ちしております」
そうやって、カミエラは旅館を後にしたーーーー
さて、これからどうしましょうか。やはり、まずは情報収集ですね。この世界が一体どうなっているのか、、ここならわかるかもしれません。
「ふぅええぇぇん、おかぁさん」
歩いていると、道の真ん中で泣いている女の子がいる。カミエラは、ためらいもなく、女の子に話しかけた。
(私の役割は、人類を助けること。この子を助けなければ・・・)
「あなた、一体どうしたんですか?」
カミエラは優しい口調で話しかける。
「ふぇぇ?お姉ちゃん、だあれ?」
「私はカミエラ。村の外から来ました。それで、あなたはどうして泣いているんですか」
「そっ、そのぉねっ、私のぉ大事なお小遣い、知らないお兄ちゃんにね、取られちゃったのぉっ」
その女の子は、涙ぐんだ声で話す。
「それは見過ごせませんね。あなた、名前は?」
「わっ、私の名前っ、み、みくぅって言うの」
「それではみくさん、その人はどちらへ行きましたか?」
「あっ、あっちぃ。あそこにぃ」
女の子は旅館の方を指差す。
「そうですか、分かりました」
では、犯人探し紹介しましょう。使えそうな機能は......『殲滅』?いや、これはだめですね。
では、『逆転解析』?、、いや、これも使えそうではないですね。
じゃあ、この『速度強化』は、うーん...『散弾銃発射』?『レーザー光線』? それとも、『格闘技』?
・・・・・・・・・・・・
つ、使えそうなものが、1つもありません...一体、どうしたらいいのでしょう?
「とりあえず、あちらへ行ってみましょうか」
カミエラは女の子の手を掴み、旅館の方へと戻っていった。
*〈温泉旅館〉*
ガララララ
「すみません」
「あれ、さっきのお嬢ちゃんじゃないか。どうしたんだ、いきなり」
「ここに、男の子は来てないですか?」
カミエラは率直に尋ねる。
「男の子?はて、、ああ!そういえば、さっき旅館の前を、そっち側に走っていく男の子はいましたね」
「ありがとうございます。さあ、いきましょう」
ーーーーここ、ですか、、
そこには、色んなものが売ってる、市場があった。
「これはそうそう見つかりそうも・・・」
「あっ、いたっ!あのお兄ちゃん!」
「やべっ」
男の子は、私たちを見てすぐに逃げ出す。
「逃しませんよ」
カミエラは女の子の手を握りしめ、追いかけた。
右と左どっちだ?......そっちかっっ
「追いつきましたよ」
「は、速すぎだろ?!」
「それじゃあ、返してもらいますよ」
その時、横の家から女の人が出てきた。
「あら、レイ。外で何してるのっ、、」
「お、お母さん?!しまった」
これはちょうどいいですね。
カミエラは、今のことを彼のお母さんに話した。
「なにっ、それ、本当なのっ!レイっ!」
「・・・」
「また人に迷惑かけて、、本当にすいません。お金はちゃんと返します。他にも・・・」
「そこからは、この子と話すべきでしょう」
私は、ちょっと助けただけ。私の出る幕じゃなさそうですね。
「おねぇちゃん。ありがとぉっ!!」
「いえいえ」
これで、また人を助けることができた、のでしょうか。よかった、、
▽
そうして、村を出ようとしたその時、後ろから急に話しかけられた。
「あなた、村の人ではないですね」
「あなたは?」
「私はこの村の村長です。少し、役所でお話を聞いてもいいですか」
「まあ、構いませんが...」
*〈村役所〉*
「さて、そこに座ってください」
カミエラは、奥にある広い応接室に連れていかれた。
「いや、実は私、伝言をあづかっているんです」
「伝言?」
「はい、村の外から人が来たときに伝えろと」
村の外から?そんなの、たくさん来てしまうんじゃない?
「誰からのですか?」
「分かりません。村でも一部のみに伝わるもので、意味もよく分かりません。でも、『第八研究所地下2階の紙』、と」
「第八研究所?!」
第八研究所。それは、私も昔見たことがある..
ーーーーーー1033年前
「ほれ、ここが第八研究所じゃ」
「何がある場所なんですか?」
「別に、何もない。わしの別荘みたいなもんじゃ」
「別荘・・・ ーーーーーーーー
「分かりました。ありがとうございます」
「いやいや」
そこに行けば、この今の不思議を解決できるかもしれない。でも、あそこの建物に、地下なんてあったでしたっけ?
「確かここだったはずです」
第8研究所だった場所は、木造の民家へと変わっていった。
トントントン
「すみませーん」
あれ、誰もいないんですか?まあ、後で謝れば良いこと入っちゃいましょうか。
「でも、地下なんて一体どこに・・・」
全然わからない。これじゃ無駄足じゃないですか。
ふと、昔のことを思い出したーーーー
「いいか、カミエラ。隠したいものこそ、意外と近くに置いておいたほうが見つかりにくいんだ。これを、灯台下暗しって、言うんだ。覚えとくんじゃぞ〜、わしの座右の銘だからな、はっはっはーーーーーーー
そう言えば、そんなこと言ってたっけ。でも、そんなのはヒントになるんでしょ、う、か...
か、感じる。このマットの下、何かあるっっ!カミエラ、分かりますっ
マットを捲ると、そこには正方形の、もう地下への扉であろうくぼみがある。
カミエラは、そそくさとその扉を開いたーーー
地下一階はまだ明るいけど、2階は暗くて見にくいですね...ああ、そういえば暗視の機能がありました。
おお、よく見えますね。
そうやって、カミエラは地下二階にある扉へと辿り着いた。
「これ、ロックがかかってますね・・・よし」
カミエラは、とびらをぶっこわしました。
「これでよしっ、と。あ、あれ、、」
何もないじゃないですか。何ですか、ここ?不気味ですね。でも、確か伝言には紙があるって・・・
あたりを見渡すと、隣に机がある。
ここの引き出し、かも。ーーやっぱり、紙がある。なになに、ーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
1/29
なんとか、わしのは避難させることができた。で も、もう各地での暴走は止まり そうもない。カミエラ、お前には知らせなきゃ いけないことがある。知りたく ないのなら、行かなくてもいい。ただ、もし知りたいと思うなら、お前の起きた場所に、データがあるはずだ。それを、見 てくれ。ーーーごめんな、お前を、1人にしてしまって。いつか、お前が自由になれる事を、祈っておる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
何なんですか、知りたいなら、、?よく分かりませんね。
ただ、1つだけ絶対に確かなものがあります。それは、これが博士の書いた字であると言う事。忘れたりしない、ずっと私の記録の中に残っている。
そんなことを言われたら、見ないわけにはいきませんね。さて、もう一度戻りましょうか。
カミエラは、自分の起きた研究所へと戻っていったーーーーーー
*〈研究所〉*
「ここ、ですか?データなんてどこにも・・・」
カミエラは、自分の眠っていたカプセルの中に、何かの機械があるのを見つけた。
「これ、でしょうか?たぶん、これ、プロジェクター、でしょう。見たことがあります」
カミエラがボタンを押すと、目の前に画面が表示された。
ーーーージジッ、ジージー
あれ、映りませんね。壊れてるんでしょうか?いやっ、違う。これは、部屋が暗すぎるだけ、だ。微かにみえる、人が動くところが。
ーーーーーーあ゛あ゛ぁ〜、うう゛ん。これ、録音されてるのか?大丈夫そうだな。よし。
そこにいるのは、田中博士お気に入りの人造人間かな?
どうも。このデータは、地下から送っている。場所は、かー_-ジジッ_た_ーやー_ だ。それで、君はたぶん、この世界について、何も知らないだろう。だから、教えるたー-_-ー-_っている。それでは、早速始めよう。
まず、この世界が崩れ始めたのは、そうだな。12年前、そう、君が眠ってから、ものの16年くらい後かな。また平和が戻りつつあって、みんな平和ボケしだしたころ、ある男によって、新たな商品が世界に普及したんだ。その男の名は、カズキ・クロガワ。当時、AIの王者と呼ばれた男が新たに開発したのが、君を模倣した、いや君を魔改造したと言ってもいい。そう、完全人造人間の誕生だ。
「完全人造人間?」
それは本当に凄まじくてな。家事やら農業やら、何でもまるで人間のようにこなしてしまう。しかも、彼は、「ボランティア活動」と称して、それを世界にばらまいたんだ。いつの間にか、世界人口29億人のうち、約27億人が自分の完全人造人間を持つようになった。まだ、この時はよかったんだ。それらは単なる便利グッズにすぎない、ただの〈物〉でしかなかったからだ。
ただ、途中から、それが誕生してから3年後、人々はその恐ろしさに気づいた。そう、完全人造人間は、あまりにも人間に似ていた。いや、似すぎていたんだ。それまでは、会話で聞くだけでそれらは自分達を人造人間だと呼称していた。しかし、人間との交流がとてつもなく増え、いつしかそれらはこう言うようになった。ーー「私、人間ですけど。」
そして、そういった個体は急速に増えていった。そう、完全人造人間に唯一足りなかった部分、《人間らしさ》を手に入れた完全人造人間達は、自分達自身を、人間であると、認識するようになってしまったんだ。
しかもだ。そいつらは上手くできててな、生殖器官こそ機能はしていないが、内臓からなにまで、全てものすごく類似している素材で作られている。そこだけは、お前の体とは根本的に違う。つまり、脳か心臓にある人工知能のマイクロコンピュータ以外じゃ、人間との区別が全くつかない。しかも、それらは当たり前のようにスキャンには引っかからない。つまり、何が言いたいか分かるか?
ーー完全人造人間は、完全人間となってしまったんだ。しかし、気づいた時には、もう遅かった......周りの奴が人間なのか、そうじゃないのか、全く区別がつかない。どいつもこいつも、疑心暗鬼に陥っていった。
そこからは、すぐに人間社会が崩れていった。これを受け入れてAIも人間と見ようとする[迎合派]と、それを受け入れず、なんとか人造人間をあぶりだして人間の社会を取り戻したい[反発派]の対立は過激になっていった。[反発派]は、完全人造人間が、瀕死になると危機管理機能が自動的に起動して体が一時的に停止することを発見し、世界で無差別の暴動を起こしたことで戦争が始まった。
ーーそうして、世界の人口は約半年で約28億人減少。残ったのは、各地の地下へ逃げ込んだ僕ら[迎合派]が26万人ほどと、地上て生き残った[反発派]、これは、結局味方同士でも争いは終わっていないらしい。そして・・・・・・君がいた、その村の人造人間達だけだ。
「ーーえっ?ど、どういう」
その村の人達は、博士が一生をかけて守り抜いた、人造人間の村だ。人口は1万人ほどだが、衰えず、ずっと生きる人造人間達だ。ただ、人々は自分達を人間だと思っている。
これを聞いて、君はどう思うだろうか。この世に、君の守りたいものはない。君は、どんな反応をするだろうか。博士は、結構気になってたみたいだぞぉ。
君の人工知能への命令は、取り消す事はできない。でも、上書きする事はできる。いいか、ここに全てがあーー_-_."'_-だ、いい_-もういち_-,.,ぞ、ここ-..,-ー_"_'.,.-."'_-だ、い-,.."'-には、お前を救う鍵だー.""'.-.,ある。絶対にだ。じゃ."'-な、お前がたどりつ.^.."',_っているよ。ーーーーーーーーーーー
ツー、ツー、ツー、ツー
「・・・」
今、私は、全てを知って、全て、失った。私の使命は、"人類の〈英雄〉となる"こと。でも、あれは人類じゃなかったの?世界には、人類が、まだ、いる、のですか。まず、人類って何で、しょうか。その完全人造人間とやらは、人類ではな、い?・・・もう、分からない。知りたくても、これ以上はーーーーそう言えば、最後、雑音がうるさすぎて、よく聞こえなかったけど、私の命令をなんとか、言っていた気がする。
もう、分からない事だらけです。でも、そこに行けば、、この気持ちも、少しは晴れるのかな。
雑音で、地名は聞こえなかった。でも、たぶん、言語からして、この国、『ニハン』だ。このどこかに、地下に、求めているものがある。守らなきゃいけないものがある。
だから、必ずーーーーーーーーーー見つけ出してみせます。
残された勇者は《英雄》になれない 了静 @ryosee
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