飛べない龍の歌
道草
第1話
ウルは背中に鈍い痛みを感じて目を覚ました。粗末な寝床と薄い木の板で出来た壁、眠い目を擦りながら体を起こすと辺りに立ち込めるすえた臭いに顔をしかめた。
起き上がったウルは革鎧を身に着け、腰に片手剣を吊った。
冒険者になって一年、やっとの思いで手に入れた防具と武器はくたびれた革鎧と刃のこぼれた片手剣のみであるがこれだけを揃えたのも最近である。
陰鬱な気持ちのまま潰れた革袋を背負う。表へ出ると白んだ空を見上げた。朝の風が頬を撫でてゆく。視線を落とすと街の中心部をぐるりと取り囲むように作られた巨大な石壁が見える。ウルは石壁に背を向け街の出口へと向かった。
街を出た馬車を避ける様に街道の脇へ寄ったウルは、踏み固められ露出した土とその外側の茂みとの境界に沿って歩みを進めた。
側の草地から目線を上げると【大陸麦】の畑が、なだらかな傾斜に沿って丘の向こうまで続いている。黄金色へと変わろうとしている朝露に塗れる薄黄緑色の穂が、朝の光と初夏の風を受けて空と交わるまで波打つ様は壮大で、しばしの間ではあったが空腹を忘れることが出来た。
飛べない龍の歌 道草 @Michikusa_2020
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