僕の命が尽きるまで

アカト

僕の命が尽きるまで

 僕は柊竜二(ひいらぎりゅうじ)十八歳のどこにでもいる普通の男。

 

 そんな僕には坂本千秋(さかもとちあき)という同い年の大親友がいる。

 

 幼稚園からずっと仲が良く家が近所なのもあって毎日のように千秋と遊んでいて両親同士も仲が良く親も連れて良くお互いの家に遊ぶに行くほど仲が良かった。

 

 小学校、中学、高校までずっと同じで僕たちは唯一無二の存在だった。

 

 しかし高校を卒業して少ししてから僕に癌が見つかった。

 

 親に頼んで千秋には黙っていてもらって僕自身も千秋には病気のことは話せずにいた。

 

 千秋の事を大親友だと思っているからこそ僕の病気の事を知って千秋をツライ気持ちにさせたくなかった。

 

 僕は癌の事を死ぬまで話さない事にした。

 

 千秋との楽しい日々を暗いものにはしたくなかった。

 

 今日もいつものように僕の家で千秋とゲームをしていた。

 

 「今日こそ負けないぞ。千秋にはゲームで負けっぱなしだけど今日はリベンジしてやる」

 僕は千秋にいつもゲームで負け続けていたのでリベンジしようと燃えていた。

 

 「いつものようにまた俺が勝たせてもらうけどね」

 千秋が強気にしていた。

 

 「くーまた負けた。もう一回、次こそ勝ってやる」

 千秋はゲームが本当に上手く僕は全然勝たせてもらえなかった。

 

 「何回やっても負けないけどね」

 千秋は楽しそうに笑いながら言った。

 

 こんな毎日が僕にとって最高に幸せな時間だった。

 

 こんな日々が一生続いていくものだと思っていた。

 

 千秋と三時間ほど遊んだが僕はまた千秋に一度もゲームで勝てなかった。

 

 そして明日から入院する事が決まっていた。僕はいつ死ぬか分からない事が怖くて怖くて堪らなかった。

 

 でも癌に立ち向かって癌を治し、また千秋と楽しく遊ぶんだという気持ちだけが僕の心の支えだった。

 

 しかし気持ちとは裏腹に僕の体調はどんどん悪くなり癌の治療の影響で僕の髪はどんどん抜けていって家族以外の人と逢うのが怖くなってしまった。

 

 千秋と逢わなくなってから一ヶ月が経った頃に僕は主治医から余命一年を言い渡された。

 

 僕にとって絶望的な言葉だった。僕と一緒に余命宣告を聞いていた両親はそれを聞いた瞬間に膝から崩れ落ち泣いていた。そんな親の姿を見た僕は親不孝者だなと思っていた。

 

 両親にまだ何も親孝行も出来ずに親を悲しませる事しか出来ない自分が悔しくて惨めだった。

 

 「やっぱり千秋君に話したほうがいいんじゃない?」

 母さんが僕に何があるか分からないから早めに千秋に話した方がいいんじゃないかと相談して来た。

 

 「もう少し病気が良くなってから千秋とは逢いたい」

 そう言うと僕の言葉を尊重してそれからは千秋と無理に会わせようとする事は無くなった。

 

 余命宣告を受けてからも僕は病気と戦い続けた。親友のため、両親のためにも生きていたいと思って治療を受け続けた。

 

 だが気持ちとは裏腹に僕の髪はどんどん抜けていって恥ずかしさからニット帽で頭を隠すようになって体調も日に日に悪くなり続けていた。

 

 そんな日が続き僕はどんどん弱気になり死を受け入れ始めていた。

 

 そんな僕を見ていた両親は僕のためを思って千秋を僕の病室に呼んだ。

 

 「ごめん。千秋君に言わない方がいいとは思ったけどあなたがどんどん落ち込んでいるのを見ていたら千秋君に逢って元気を取り戻して欲しくて」

 

 「母さんたくさん心配をかけてごめん」

 

 僕は母さんに色々心配かけてしまった事を謝った。

 

 それでも僕はこんなに弱った姿を親友に見せたく無かった。

 

 「失礼します」

 千秋がドアをノックし病室に入っていた。

 

 「こんな姿でごめんね。でもまた千秋に逢えて嬉しいよ。来てくれてありがとう」

 僕は千秋に逢えた嬉しさを伝えた。

 

 「竜二とずっと逢えなくて心配してたんだよ。なんで俺に話してくれなかったの? 俺はそんなに頼りない? 俺は竜二の親友として隠し事されたくなかった」

 千秋は悲しそうにしながらも僕のことを本当に心配してくれていた。

 

 「千秋ごめんね。千秋のことは誰よりも頼りにしてるし僕にとって一番大切な人。だからこそ君に悲しい思いをさせたくなかった。僕との思い出は良い思い出にしたかった」

 僕は千秋との思い出を悲しいものにしたくなかった。

 

 「俺にとっても竜二は一番の親友だし大事な友達。だからこそ俺に隠し事はしないで欲しい。この先、竜二に何があっても俺たちは一生親友だからね」

 千秋が僕のことをそこまで考えていたことに僕は感動したし嬉しかった。千秋と出会えたことが本当に幸せ。

 

 「病院だから来るの大変かもしれないけどまた遊びに来てくれたら嬉しいな。携帯ゲーム機を持って来てくれたらまた一緒にゲームやろうね。病院って暇すぎるからさ」

 千秋にまた遊びに来てほしいと伝えた。

 

 「もちろんまた遊びに来るよ。またゲーム対戦しよう。まあ俺は負けないけどね」

 千秋が嬉しそうに笑っていた。一緒に遊べる時間は少しだけど悲しまずに親友との時間を思いっきり楽しもうと心に決めた。

 

 「今日は遊びに来てくれてありがとう。また千秋に時間がある時にお話ししたりゲームしようね」

 僕がそう言いその日は解散した。久しぶりの親友との時間は本当に充実した時間だった。暗くなっていた僕の気持ちを吹っ飛ばしてくれた千秋には感謝しかない。

 

 それから半年間、千秋は毎日時間を作って逢いに来てくれた。しかし僕の癌は時間とともに悪化していき僕の宣告された寿命があと半年になっていた。千秋のおかげで一人で恐怖に苛まれる時間は少なかったけど、それでも夜に一人で病室にいると悪いことばかり考えてしまう。大切な親友の千秋ともっと生きていたい。もっと生きたいという思いが日に日に増していった。

 

 「こんにちは。また遊びに来たよ。竜二、調子はどう?」

 今日も千秋が僕の病室に遊びに来てくれた。

 

 「うん。調子は大丈夫だよ。毎日来てくれて本当にありがとう。今日は千秋が良ければ院内を散歩しに行かない?」

 僕は外に出て気分を変えたくて千秋に提案した。

 

 「いいよ。散歩しながら色々話そう」

 千秋は毎日来てはたくさんの話をしてくれていた。自分の時間も必要なはずなのに僕のことを優先してくれる千秋には本当に感謝しかない。

 

 病院の院内に出て千秋との時間を過ごした。

 

 「千秋いつも逢いに来てくれて本当にありがとう。千秋と話すのが僕の楽しみになってる。千秋と知り合えたことが僕にとって一番の幸せ」

 僕は日々の感謝を千秋に伝えた。

 

 「急にどうしたんだよ。これからも毎日逢いに来るし、これからもずっと俺たちは親友だよ」

 その言葉を聞き僕は涙がこみ上げて泣いてしまった。

 

 「僕はもうすぐ余命宣告された一年が近づいて来てしまって後どれくらい千秋と一緒に居られるか分からなくて、でも僕は千秋のおかげで暗い気持ちになることが減ったよ。本当に千秋には感謝しかない。でもやっぱり死ぬの怖いし死にたくない。もっと千秋と一緒にいたい」

 僕はそう言いながら千秋の前で涙を流してしまった。こんな事を言われても千秋を困らせるだけなのは分かってた。今まで出来るだけ明るく振る舞うように努力していたけどこの幸せな時間が後少しで終わってしまう事と死ぬことへの恐怖で千秋に弱音を吐いてしまった。

 

 「俺も竜二と逢えなくなるのは本当に辛い。だからこそ竜二と居られる時間を大切して少しでも竜二が生きててよかったって思えるような人生にしてあげたい。俺に出来るのはそれくらいだから」

 千秋は僕のことを本当に大切にしてくれて僕のことを思っていてくれていることを知れて僕は本当に幸せな気持ちになれた。

 

 「僕は千秋と出会えて仲良くなれて本当に幸せ。こんなに僕のことを思ってくれて本当にありがとう。泣いて千秋を困らせるような事言ってしまって本当にごめんね」

 僕は今の気持ちを素直に千秋に伝えた。

 

 「そんなの俺も同じだよ。竜二と出会えて本当に良かった。竜二なら病気にも打ち勝てるよ。だから俺に出来ることは逢いに来て竜二との時間を大切にして励ますことしかできないけど俺は竜二とこれからもたくさんの時間を過ごしたい」

 千秋はいつも僕のことを励まして一人で居て暗い気持ちになる事を減らしてくれてこの先も生きていきたいと思わせてくれる最高の親友。僕は千秋のためにも生きていきたいと思わせてくれて病気と闘う勇気をくれる。

 

 「僕はこれからも千秋と一緒に遊ぶためにも病気と闘って大人になっても親友と呼べる関係で居続けたい」

 僕の夢を千秋に話して病気と闘う事を宣言した。

 

 「うん。俺は応援してるしこれからも毎日会い来るからね」

 その日はこれでお開きになって解散した。

 

 「母さん、僕はこれからも生きて千秋と親友としての時間を続けるためにも病気と闘っていくよ。母さんにも心配かけてごめん。でももう僕は大丈夫」

 

 「竜二が生きたいって思ってくれて良かった。千秋くんに連絡とって来てもらったのは正解だったね」

 母さんは笑顔で千秋を呼んで良かったと安心したように笑った。

 

 それからも僕は病気と闘い続けながらも千秋と毎日たくさん話した。何があっても後悔しないように。

 

 そして主治医に言われた一年の余命の時が近づいていき僕の癌は悪化し続けた。ベッドから起き上がれない日が続いた。

 

 それでも千秋は毎日欠かさずに会いに来てくれていた。

 

 しかし僕は最後が近づいて来てる事を実感していた。

 

 そして僕はこの世を去って天国へと旅だった。

 

 「千秋くんのおかげであの子は最後まで幸せそうにしていたよ。竜二に代わってお礼を言わせて。本当にありがとう。それからこれ、竜二からの手紙。亡くなってしまったら千秋くんに渡してほしいって頼まれていたの」

 

 「ありがとうございます。読んでもいいですか?」

 母さんは静かに頷いた。

 

 「千秋、この手紙を読んでるって事は僕はあの世へ旅立った後だと思う。千秋と過ごした時間は僕にとって宝物。僕はこの幸せを持ってあの世に行く。千秋は優しい人だからきっと後悔してるかもしれないけど僕は千秋と毎日話して楽しかった。だから自分のことを責めたりしないで千秋は僕の分まで生きて幸せな人生を送ってね。僕はあの世から千秋の幸せを祈ってるから、僕は短い人生だったけど千秋には長生きしてたくさん幸せになってね。竜二より」

 千秋は涙を流しながら手紙を読んでいた。

 

 「俺、絶対に幸せになるから。そして竜二のこと一生忘れないから」

 僕の短い人生が終わった。でも後悔は何もない。大切な親友と過ごした日々は幸せで最高の人生だった。

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