サマーヒャクモノガタリ
Tochika
夏のキャンプと言えば
「由香でーす!夏といえばキャンプだよね!
とゆーことで、今日はソロキャンプ配信です!」
元気いっぱいの声が、木々のざわめきに吸い込まれていく。
由香は森の中に設けた簡素な配信スペースで、金髪のポニーテールを揺らしながらスタンドに固定したスマホに向かって笑顔を見せた。
時刻は夕方、森の中はもう薄暗くなっていた。
テーブルに置いた充電式ランタンが周囲を照らしていた。
「さゆりちゃんもいるよー!」
右手で何もない空間をサッと示すと、ツインテールの少女がゆっくりと空から降りてきた。
「やっほー!みんな元気ー?」
明らかに人間ではありえない動きで舞い降りた浮遊霊の少女は、眩しい笑顔を浮かべた。
「ここは、心霊スポットで有名な廃屋の周りの森なんだけど、ここも色々出るんだよね。
なので、今日はここで――百物語をやりまーす。
しかも、昨日、ここで百物語をやることは宣伝済みだから、きっと何か起こるよ!」
由香は期待に満ち溢れた目でカメラを見つめていた。
コメント欄にはツッコミが殺到した。
『誰に宣伝してるの?』
『怪異さんたちも突然の不審者にびっくりだな』
しかし、多くの人があえて言わない言葉があった。
――宣伝なんかしたら、ここの住民なのか、喚ばれてきたのか、判断がつかないだろ。
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