第16話 私は私
「うぅ……いてて……。なんなんだ……?」
ダルシアンが胸を押さえながら体を起こす。先程まで煤で覆われていた薄暗い部屋が、オレンジの光に包まれている様子に困惑し、周りを見渡す。
「傷が治ってる……。この光は……ヒナタのお嬢さんの力か……?」
自身の大剣を拾い、鞘に納める。何とか立ち上がり、状況を確認する。
「とんでもないな、魔法ってやつは」
苦笑いで呟く。傭兵人生で色んなことを経験してきたが、このような規格外の魔法を目の当たりにすると、己の力を信じられないような気持ちになる。
周りを見渡すと、ラセツとサクヤが視界に入る。彼の甲冑と腰の刀を見て、驚嘆した。
「やっぱり……また会えるなんてな……」
「あっ! おじさん起きて大丈夫なの?」
サクヤが近寄る。先程まで敵対していた関係なのに、純粋に心配をしている。
「ああ」
「ふふん、ヒナねぇすごいでしょ!」
「そうだな」
「あっ! ヒナねぇはあげないよ! ミィもだけど!」
「もう俺たちの負けだ。迷惑かけたな」
「いいよ、おじさんいい人だから」
「……俺たちが来なかったら、こんな怖い目に合わなかったんだぞ? 傭兵なんざにいい人はいない」
「確かにアサヒミナは荒れちゃったし、ケガした人もいるけど……でも、誰も死んでないよ。おじさんが隊長さんじゃなかったら、もっとひどい結果になってたかもしれないもん」
「……」
「それに、わたしのこと逃がしてくれたでしょ! いい人じゃなかったら、逃がしてくれないよ!」
「お嬢さんは──」
「サクヤだよ!」
「……サクヤお嬢さんはもっと人を疑うようにしな」
長い傭兵人生において、このように明るい娘と関わることはなかったため、毒気を抜かれる。しかし言われた本人は気にしていない様子だ。
「あっそうだ! わたしがカマンセーヌをやっつけたんだよ! フライパンでね、こう!」
サクヤは興奮気味にフライパンをぶんぶん振る。
「旦那を? ──あぁ、あんなところに」
惨めに転がっている貴族を一瞥すると、うっすら笑いながらため息をつく。
「面倒な仕事を引き受けちまったな、団長……」
頭を掻き、重い足取りで雇い主の元へと歩く。
「ダルシアン! 起きていたの!」
彼に気が付いたミツキが反応する。
「あぁ、迷惑かけたな」
「……うん、でも感謝もしてる」
「感謝?」
「──あなた達が来なかったら、これから先も自分を偽って生きていたかもしれない。堕天使だけど、そんな自分を認めらないって……」
「……」
彼女は自身の目尻を触る。
「だけど、私は私。堕天使で、人間。それが私だって、認められたから!」
ニッコリと、迷いのない笑顔を浮かべた。
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