石像
@Terarium
石像
東京の大学で授業を受けるために家を出る。
少しの徒歩と多くの電車に乗って通学する。
大学から最寄りの駅で降りるとすぐに、青と灰色の高層ビル群が視界に広がる。
その中でも駅に1番近く、1番高いビルの屋上に、何やら人影が見える。
よく目を凝らしてみると、それは間違いなく人間で、筋骨隆々な体格から男だと分かる。
陽光が徐々に男を照らし出していく。
全身が輝かんばかりに光に包まれると、その男の外見がよりはっきりと見える。
男は全裸で毛は栗色、顔は彫りが深く、古代ギリシアの石像を想わせた。
古代の神話で伝説の工匠が動く石像を作ったと聞いたことがある。
おそらく、いや確実にその石像だと感じた。
私は駅前に留まって彼を眺めていることにした。
彼は立ったまま微動だにしない。
風で髪だけが微かに揺れている。
駅前は人がごった返していたが、誰もが地面を見つめて歩くため、彼に気づく人はいない。
私は人々が故意に目を伏せ、彼を見ないようにしているような気がした。
しばらく彼を見続けていると、駅前の時計がそろそろ正午を指す頃になっていた。
太陽は蒼穹に輝きながら鷹揚に昇り上がり
雲は時間のように密かに霧消し
鐘が何処かから鳴り響き
影が世界から消えた
その瞬間、
彼はビルの屋上から飛び降りた。
腕を伸ばし、頭から。
垂直に伸ばした彼の身体は、完璧な流線型を描いていた。
涙。
石像 @Terarium
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