「イジメ」
沢木キョウ
第1話「イジメ」
ああ、キメェ。マジでキメェ。死ねや。
太陽キモすぎ。カーテン閉めてんのになんで眩しいんだよ。クソ。
いい夢見てた気がすんのに無理やり起こしやがって。はぁーダル。
体起こすのめんどくせぇー、筋肉使うのもダルすぎ。もう最悪。朝から筋肉使わせるとか正気ですか? 何様ですか? 救ってもらっていいですか?
誰も助けてくれないってことは、もうこれ「イジメ」ってことで、おけ? そういう解釈アーユーオーケー?
「アオイーー、起きなさーい! もう朝ごはんできてるわよー!」
は? ウザ。今起きようと思ってたのに。
あーあ、やる気削がれた。返事すんのもダリ―。このまま寝てたいけど、どうせ後からめんどくさくなるのは目に見えてますよん♪
しゃーないから起きてあげますよっと。カーテンは……まあ開けますか。めんどくさいけど。
うわー、立つの疲れる―、歩くの疲れる――! ドア開けんのもクソダリ―――!!
とりあえず死ねや。
てかそうじゃん。階段降りなきゃいけないじゃーん。
マジだれ?? この家の設計考えたアホは?? 寝ながら飯食わせるくらいの構造考えろや。
足おっも。階段長すぎ。これ降りるだけで、ウチの足、筋肉ゴリクソダルマになっちまうだろーが。なんでこんなに筋トレさせる? ナニコレ、登山の一種ですか? いや、降りるから下山か?
これ強要してくる家族って、もしかしてウチのこと「イジメ」たいの? 絶対そうだよね? 間違いない。うん。
***
やっと降りきったー!! じゃあ今日の分のエネルギー使い果たしたから寝るわー。今日も一日、おつかれさっしたー!
え、寝るためにまた階段上らなきゃいけないじゃーん! 完っ全にはめられた。犯人出てこいやマジで。ぶっつぶす。
「おはよう! ほらさっさと朝ごはん食べなさい! 遅刻するわよ!」
うわお、びっくりさせんなや。心臓止まるかと思ったー。ていうか半分くらい止まったんですけどー。慰謝料プリーズ。
んー? ちょっと待てよー……。えーっと……つまりあなたは、ウチがそんなことも理解していないバカだって言いたいのかな? 今の、わざわざ伝える必要ないもんねぇ? それをわかっててねぇ、ここまで来たんだからねぇ、いやはや……おかしいですねぇー。
怒鳴るのもダリーし、さっさと食って学校、いっちまいますか!
朝は……食パンか、いちごジャムぶっかけて食おっと。
外めっちゃ晴れてるなー、今からでも暴風警報出てくれよ。いちごジャム×食パンの日は台風直撃するのが通説だろ!!!!! 知らんけど!!!
食パン持つの疲れたー。
なにこの手の形。変じゃん。明らかに。
スマホの持ちすぎで手の形が変形するってきいたことあるけど、食パン持つのも体に毒じゃん、絶対。
手をつけなくても勝手に口の中に運ぶ機械つくってくれ、世界。
てか噛むのも疲れたー。
ワタクシ……今を生きる現代人ですわよ? 顎の力なんてなくても生きていける世の中なんですわよ? そこらへん、お見知りおきくださいましー?
「あんたー? いつまで食べてるのー? 大丈夫? 間に合う? 送ってあげようか?」
まーたーきーたーよー……。というか我が母上よ、今の短いセリフの中で何回『?』使うねん。『しゃくり』のプロかよ。カラオケにでも行っとけ。
ウチ、今めっちゃ疲れてるんだからさー! 首、振らせないでくださる―?
あらら、お嬢様口調が抜けていませんでしたわね。オホホホホホホ!
***
くぁーー! やっと食い終わったー! 満足満足! んじゃ……おやすみー……って違うだろー!! このハゲー!!
あれ……ウチの家族、だれもハゲてないのに、なんか知らんけど、ハゲー!って……なんだこれ。
じゃあ、これからするべきことをまとめてみますか! えーっとー……
その一、椅子を立つ。は?ダル。
その二、歩く。は?ダル。
その三、洗面台へ。は?ダル。
その四、あ……ああああああああああああああああ!
考えんのもめんどくさくなってきた、とーにーかーくーダルルルルルル(巻き舌)!!
はい! 切り替えろ! ウチはやればできる子、YDK! 他とはちげぇんだ! まずは顔洗う!
……えー、なにこの行為。なんで顔面に水ぶっかけてるの? こんなんで効果あるの?甚だ疑問であるぞい。
水を浴びるっていう点では、学校のトイレで上から水ぶっかける行為とほとんど変わらんやん。つまりこれは、ニアリーイコール「イジメ」ってことじゃな、QED。
てかさー、気づいちゃったんだけど……歯も磨かなきゃいけないじゃーん。
これこそマジで自動でできるようにしてくれー?? 手、疲れるんだからさー!
そもそも、ウチみたいに毎日歯磨いてても、周り見たら虫歯になってる人けっこうおるんですけど。一回くらい手抜いてても、大して変わらんやろなー。
まあ、ウチは磨きますけどね。バレたらあとでめんどくさいし。
***
ほいじゃ着替えますか……はい……あのー……なんとですねー……階段を上らないと、学校の制服にありつけないんですよねー。クソですねー。
制服マジで着づらいんよな。毎日ジャージでよくね? 選ぶ高校、ミスったかもなー。って、この辺にそんな学校ないやろがーい! っておいぃ“ぃ”ぃ“ぃ”!!!
我はこの運命に、決して逆らえないのだな……。
ならば仕方ない! 制服着るぞーーーーー!!!
どりゃーーーー(全力階段ダッシュ)!!
そりゃーーーー(全力スカート)!!
ありゃーーーー(全力上半身)!!
こりゃーーーー(こそあどコンプリート)!!
思い知ったか、こーにゃろうめ。
よっしゃーこれで学校に行く準備が終わったー!
ウチ頑張りすぎじゃない!? 朝からこんな活発に動けるなんて、普通じゃありえないでしょ。友達の話きいてても、みんな朝は弱いって言ってた!!
……あっ、ウチなんかに友達いないんだった。
てへっ☆ 友達に憧れるあまり、ついつい夢を見てしまっていたようだね☆
学校で青春するのって憧れるーー! 友達と放課後に遊んだり、部活動したり、いろんな学校行事を楽しんだり、あとはやっぱり……恋……とか……。
なーんてね!
そんなのは高望みしすぎなんだわ。身の程を知れっての!
ヘイ! マイヒップ!
Q, この中でウチは何個達成できてますか?
A, スミマセン。ヨクワカリマセン。
ほら見たことか。ウチはなんにも達成できていませんよ。
言うなれば、『アオイ』という存在は、青春とは真反対に生きる存在なのである!!
友達? いません。
部活動? 入っていません。
学校行事? 全部ぼっちですが。
恋? ナニソレオイシイノ?
こんなんだから「イジメ」られるんだよねー。
おっと、もうそろそろ家を出ないと、本当に遅刻しちゃうな。
遅れて教室に入ってしまったあかつきには、もっと「イジメ」られるに違いない!
急げ―!!
「アオイ、はいこれ弁当。気を付けていくのよ!」
よしっ……じゃあ学校に向けて出発進行……!!
***
暑すぎんだろ。
なんか今日、太陽近くね? あそこのワンちゃんも舌だして草臥れてるわ。
なにもしてなくても、汗びっしょり。こっから歩かなきゃいけないのー? こりゃ、この夏、死ぬかもしれんから今日帰ってきたら遺言とか書いといたほうが、よさげのアキコ。
はやく……はやく、学校に……ついて……少しでも……涼しく……なり……た……い。
やっばいわ……これ……。汗かきすぎて……歩くたびに……足元ネチャってる……。
んあ? なんだ、あそこの歩くランドセルの集団は……。
「アイスうんめー!!」
「ショーくんちのママ、優しすぎるー! 今日の放課後も……行って……いい、かな?」
「おうよ!、もちろんだ! くぅー! 生き返るわー!」
なんだ、あのガキども! 高校生の姉ちゃんが根性だけで学校行こうとしてるときに、アイス食うところを見せびらかすなんて。
まさか……わざとか!? わざとなのか!?
「……ねぇ、ショーくん、あっちからいこ?」
「なんで?」
「……あっちのほうが日陰多いから!」
あっ! ああーー!! 目から摂取するタイプの冷涼材がぁあああ!
今さ、完全にウチのこと避けたよね、あの女! こっちに気づいてから向こう側に行ったよね!? ねぇ!? 君もそう思うよね!? まあ共感してくれるような友達いないんだけどさー!!
これはアレです、みなさん。世間一般で言うところの『仲間外れ』っていうやつではないですか!? つまりこれは「イジメ」って、こちょ!?
ウチレベルのクソ雑魚女子高生になれば、小学生にもペロられる(舐められる)んですねー。君たちは、ウチなんかより、ジャリジャリ君を舐めとけって話よ、ほんまに。
はぁー……
あっ、これは決して心に傷を負ったとかではなくてね、あのー、そのー、えーと、どーも、体内に溜まった熱を放出しようっていう、いわば生理現象なんですよ。はい。
そうでもしないと、学校まで持ちませんからねー、えぇ、えぇ。
***
「昨日の『アレ』みたー?」
「見た見たー! めっちゃキュンキュンしたー!」
「お前、ちゃんと宿題やってきたか??」
「うわっ! やべ! やってねぇ! 生徒指導のマツタケに怒られるー!!」
「この学校に、そんな高級先生はいねぇよ。『アレ』の名前は、タケマツな!」
「ねぇねぇ、今日、いい日になりそうじゃない!?」
「それなー! 朝から『アレ』を見れたのはでかすぎる!」
学校に入る直前の、学生だらけの道、しんど……。
ほとんどが友達同士で登校してる……。そのせいでウチのぼっち感マシマシなんですけど。大丈夫かな、寝ぐせとかついてないかな? 制服にクソでけぇカメムシとかついてないかな?
うぅー、意識したらなにかが背中を這ってるような感覚が……。もしかして、だれかに襟の隙間から虫入れられた!?
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
周りでみんな楽しそうに笑ってるのって……まさか、ウチのことを嘲笑ってるから……。
「やっぱりめっちゃおもろいわー……『アレ』」
おもろい『アレ』ってなに!?
「いちいちめんどくせぇから、俺はあんま好きじゃないわー……『アレ』」
好いてない『アレ』ってなに!?!?
「あまり人のこと『アレ』って言っちゃダメだよ?」
「んー……あの子、ワタシたちとは住んでる世界が違いすぎて、ついね……?」
『アレ』の正体は人?
おもろくて、好かれてなくて、他の人たちとは住んでる世界が違う『アレ』――絶対ウチのことじゃん!
ってことは、やっぱり背中にはバカデカカメムシが……ひぃぇぇぇ。
もうこうなりゃ、気づいてないふりして一日過ごすか……。
はぁー……どうしてこうなっちゃったんだろうなー……。
***
学校の中、すずしぃーーーーーーー!
なにこれ、天国? 昇降口えっぎぃな、マジで。
あとは階段上って四階までいけば、一年一組の教室に……
……夢ならそう言ってほしい。ドッキリなら今すぐ、あの看板みたいなやつ持ってきてネタバラシしてほしいんだが。
暑いなか、ぼっちで頑張って登校してきて天国だーって思ったら、目的地は四階でしたー!!っていう企画なんだよね??
そうじゃないんだったら、ウチはこの学校の構造について批判しなければならなくなるぞ! 引きこもりクソキモニートを殺す気かー!!ってなぁ!
どこに訴えればいいんだ!? 教育委員会か!? もうめんどくせぇからいいやー! このぉー!! 覚えとけよー!
***
うぅー……校舎の中に入ったのはいいものの、けっきょくぼっちが目立ってるんですけど。
ウチが階段の内側を歩いてたら、すれ違う他の生徒とか先生とかが、ウチのこと避けて外側に行くんですけど。
あれ? 全校に告げたっけ? 『アオイが通るから道を開けろ』って。ッスゥ―……多分、言ってないんですけど。
ついでに、背中がずっとむず痒いんですけど。
……あのー、みなしゃまー(孤立無援)!! ウチの後ろでヒソヒソしないでもらえますか? カメムシくさいのはわかってるんで! 本当に申し訳ないとは思ってるんで! 何卒ぉ“ぉ”ぉ“!!
***
ふぅー、階段長かったー! 家の階段の一兆倍くらい疲れたー! エレベーターとかあればいいのにー、もう! クソ! ゴミ! カス! う〇ちぶりぶり!
それにしても、男子どもは朝っぱらからほんまに元気やなー。廊下で追いかけっこしてやがる。
友達がいて、こんな風にバカやって……くぅー!! これこそが、ザ・青春! 青い、青すぎる! ウチの人生で追いかけっこしたことなんて――近所の犬に追いかけられたくらいなもんですよ。
あ、ちょっ! あぶね!
「いってて……。すみません、大丈夫で…す……か………」
いってぇなー! クソ、尻もちついたー!
てめぇらが輝きすぎて、避けられなかっただろうがよい! 陽キャは眩しくて見にくいんだよ! まあ、ウチは醜いけど……あざす。
それに、なんだコイツの呆けた面は? ぶつかった対象がウチだったから、そんな顔してんだろ? 知り合いじゃなくて、ウチみたいなぼっちとぶつかったから、めっちゃ気まずいんだよな………………………………ちな、それウチも。超絶気まずい。
「……あっ、大丈夫ですか!? すいません、前見てなくて!」
おい! そんな申し訳なさそうな顔すんな! コイツ……まさかウチのこと悪役にさせようとしてんのか?
やべ、教室の中から何人か様子見に来ちゃった。こんな状況見られたら、ウチの「イジメ」られゲージが天元突破してまうわ。
なんか適当に遜へりくだって、さっさと教室の中入ろう。他の生徒に注目されんのもダルいし。
ほら、手貸してやるから早く立て!
「……ありがとう」
やめろ! お礼を言うな! どこまでウチのこと悪役にしたいんだよ。うーわー、コイツ、ニヤけてやがる。打算確定!!!!!! キュインキュインキュイーン!!
ということで……退散!!
***
「それではホームルームを始めます」
はぁー、もう精神的疲労がやばいんですけど。
背中ムズムズするせいで、気軽に背もたれも使えん。
バイザうぇーい↑↑(笑)、クラスメイトよ。なぜウチのことを見ているのだ? おいそこ! 口元隠してても、目元がニヤけてるせいで笑ってるのバレバレだぞ! あらまぁ、あなたの目、美しいアーチだこと。
君たちはバレていないとでも思っているのだろうが、残念。常日頃から他人の視線にビクビクしまくっている、ウチのアホ毛センサーが反応しまくっているのだよ。
みんなはウチじゃなくて、先生の方を見ていなさい……って先生もこっちチラチラしてんじゃねーか!
この学校では生徒だけじゃなくて、先生もウチのことを……。
いつもなら、まだマシだったよ? 適当に斜め下向いとけばいいし。
けど、今は心当たりがありすぎる!
もしかして、臭いかな?? カメムシか?? はっ! 今朝、男子とぶつかって悪い噂が流れて……ギャアアアアアアアアアアアア!
想像するだけで吐き気が……まあしないんだけどさ。
まっずーい。そんなにクスクスしないでよぉ、みんなぁ~。いつも元気なアホ毛センサーも萎びちゃうよぉ。
やっぱり最近の「イジメ」って陰湿なものが多いんだね。
みんな陰でコソコソしてるだけで、ウチに直接言ってくる人はいない。現代っ子はきっと口じゃなくて、板で会話するもんだし。
だからコミュニティに入れていない、バカで、アホで、マヌケな、耳クソゴミカスボケナスハッピー法被は世界についていけなくなって、いつしか孤独になるってわけよなー。ほんとウケる。
まるで板の中に二つ目の世界があるみたいだな。
リアルで動くウチらはRPGの中の存在で、本当の『自我』は板の中の文字。
まぁ、頭の悪いクソガキの考えだから筋が通ってるかも、よくわっかんねぇけど、みんなが真に本音で話せるのは、いったいどっちなんだって話。
はぁー……ダル。
***
「では授業を始める」
きました。ついにきました。授業ってやつが!!
国語かぁー、ウチ苦手なんだよなー。
文字多すぎ。この教科書つくった人、読ませる気ある? ウチらってねぇ、マンガとかアニメとかで育ってきたのぉ。文字を読むだけで一苦労なんですわ。
なんかよくさぁ、
本を読むときはあまり顔を近づけないでね。目が悪くなっちゃうから☆
って指導されるけど、こんなちっせぇ文字を読ませてるの、目悪くさせる気満々だろ。
数学の授業とかならまだいいわ。一人で黙々と頭の中で計算するだけで、先生にあてられても答えだけ言うことがほとんど。
でも、国語ってそれだけじゃなくて……
「じゃあ、ここの部分を……今日は26日だから、26番、春海。起立して音読してくれ」
うわキター。
国語といえば音読ですわ。26日だから26番って……その出席番号の人かわいそー! 同情するぜよ。
……まあウチなんですけどね。
わざとだろーこれー、昨日はなんか別の理由であてられたってばー。先生ひどすぎるって。マジで今日、クソ日すぎるんだが。
ただでさえ注目されたくないのにー! ここで音読したら、クラスメイトに「イジメ」のネタを提供しちまうだろ!
あそこで嚙んでたよねー。とか、抑揚バグってて草w。とか、あんな簡単な漢字も読めないんだってー、プププー……とか。
あーもうほら、周りでみんなヒソヒソし始めた。こりゃ、ウチの予想はあたっちゃいそうですな。
あの、先生ごめん。教科書読みながらで悪いんだけど、心の中で叫んでもいいっすか? いいですね? あいざいます。では……すぅー
どう“し”て“だ”よ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”!!!
ウチの背筋……キンッキンに冷えてやがる……!!
ふぅー……少しは落ち着いたかな。
「はい春海、さすがだ。座っていいぞ」
よぉーし、山場超えたー……。うまく音読できてたかな……。
まあみんなの反応を見るに、ウチの音読はゴミだったっぽいっすね。
てか、さすがってなに!? さすがバカにしてるやん!!
ウチの右斜め前に座ってる一軍女子四人! こっち見ながらニヤけてやがる。
ウチの左斜め後ろの一軍男子三人組! わかるぞ……見ずともわかるぞ……キサマらもウチのこと見てるだろ。背中の感覚だけでわかっちゃう自分もキモくてすまんけど、見てるだろぉー!!
っくぅー! またしても「イジメ」ネタを与えてしまったのか。今日、バスケ部と、サッカー部と、野球部と、バレーボール部と、テニス部と、バドミントン部、あとは帰宅部で、笑いものにされるんだああああ!
はぁー……。
***
「はい、連絡は以上です。今日も一日お疲れさまでした。また明日会いましょう」
だぁーーーーー! 終わったーーーー!! ついでにオワターーーー!!
今日も今日とて、周囲にネタ三千個くらい提供しちゃったー! 需要と供給のバランスあってませんよー! ウチにもなにか、くださるとうれしいのですけどー? あるわけないですよねー、はーい。
けっきょく今日もずっとぼっちだったな。
視線もずっと感じるし、ウチはなに? 動物園の動物? 水族館の魚?
そういうタイプの「イジメ」ね? ハイハイ理解。
で、どうせみんなはホームルームが終わっても、教室で駄弁るんでしょ? 仲がよろしいこと。ウチみたいなカースト圏外はさっさと失せますよ。
***
もう、疲れた。
階段も、靴を履く作業も、キッツイわ。今日だけで寿命、三十分くらい縮んだかも。
校舎出たくねー。まだ太陽えっぎぃんだけど、朝から何か変わったかー?
勇気出して外に出ないと天国(自宅)に帰れないしなー。
ほいじゃ行きますか……あっ。
最悪だぁ……弁当箱、教室に置きっぱだ……。
***
弁当箱……忘れて……るんだったら……誰か……教えて……くれても……いい……じゃまいか……。
そうじゃないと……こうやって……また……階段を……上らなきゃ……いけなく……なる……じゃまいか……。
やめろ……お前ら……こっちを……見るな……なんでコイツ帰んねーの?っていう目で……見るな……恥ずかしい……じゃまいか……。
こんなときに今朝のアイスのガキを思い出しちまった。あークソ。アイス食いたくなってきたじゃまいか!
***
やっと、教室に、ついた…。まだ何人か残ってるやんけ。
弁当箱は……あれ?
机の横に……あれ?
机の中は……あれ?
あっ……なんということでしょう。
どうやらウチは無駄足というものを踏んでしまったようです。
カバンの中に、ちゃんと入れてた……。周囲の顔色を伺うことに夢中になりすぎて、入れた記憶がスッポリ抜けてた……。マジかー。ハハハハ。
なにやってんだか、本当に。「イジメ」の原因、だれが見ても明らかだわ。自分でも超絶ウルトラスーパーデラックスベリベリブリブリ納得っすわ。
やばい、教室の端で、まだ残ってるクラスメイトがこっち見てる! ガン見はやめてー!
これはクソまずい!
弁当箱を忘れたと思って戻ってきたのに、全然そんなことなかったことを知られた日には……ぐがぁああああぐごがぁぁぁごごごぉぉぉぉ!
逃げろー!!
***
ハァー、ハァー……疲れた……。
階段ダッシュに、高速靴履きの術。ウチのエネルギー残量はもうゼロよ!
しゃあないか。「イジメ」ネタ提供も、弁当箱忘れも、なにもかも全部、自分のせいだし。
こうなりゃ自らへの罰として炎天下の中を歩きますか。
***
「おい! 今のはいけるだろぉ!! ちゃんとボール取れよー!」
「すみません!」
はぁあ、こんなバカ暑い日にも、運動部は元気に声出していらっしゃる……。
もう声きいてるだけで、熱中症になるわ。
ほんまにお疲れさんです。自分にはできません。頑張ってくださいね。
じゃあ自分はさっさと帰らせていただきます。
…………
「すみませーん。ボール取ってくださーい」
ウチの目の前にはテニスボール。
すぐ横の柵の向こうには、ウチを見てなんか言ってる陽キャ男子。
……ウチが帰ろうとしてるときに、目の前にボールが偶然転がってくるなんてこと、ありますかね? 逆の意味でウチ、運いいわー。宝くじでも買おっかな。
えーっと、これを取るってことは……
しゃがんで、ボールを拾って、立ち上がって、大きく振りかぶって、柵の上を飛び越えるような弾道でボールを投げなければならないわけだ。
想像しただけでキッツ。
ただでさえ、しゃがんで立つだけで疲れるのに、柵を超すって……。テニス部の柵って意外と高ぇんだ。
運動部目線ならまだしもなぁ、ウチは帰宅部なんだよ! そっち基準で考えないでくれ!
まあ断ったら「イジメ」ネタ提供されるだろうからな。アイツボールも取ってくれなかったんだぜ!って。
だからこの状況は、あの男子がウチに頼んでいるように見えて、ほぼ強制なんだよね。
はぁー……はぁー……。
「……あっ、ありがとうございます!!」
***
「おかえりー!」
帰ってきた……。
あああああしんどかったああああああ!
暑すぎ。死ね。おい太陽、もう二度と出てくんな、ボケカス。
「アオイ、暑かったでしょ。アイスあるから食べていいわよ」
あ、神。
普通に神。ここって本当に天国だったんだ。
っしゃー! もうお気楽な時間だぁー!!!! いぇーーーーーい……
……そういえば、宿題があったような……。
なーーーーーんで先生って生徒に宿題出すわけ? ウチ知ってるよ? 先生って忙しいんでしょ? 宿題って先生にとっても仕事量増やすだけじゃん!
もしかして先生ってドMなの?? 自分から「イジメ」られにいってるよね!?
普通に、お互いの生産性がウケるーって感じなんですけど。
先生が宿題を課すとき、うちらは宿題をカスと思ってる……そんなこと考える暇があるなら、もう宿題やっちゃお……アイス食ってから。
ていうかさ……
宿題やるためには、また階段上らなきゃいけないじゃん!
階段を上る前に、アイス食べないといけないわ!
アイス食べるために、冷凍庫に向かわないと!
冷凍庫に向かう前に、靴も脱がなきゃいけないじゃん!
え、ダッル! もしかして、全部仕組まれてる?
犯人は宿題を課した先生か!?
ウチを甘い罠に誘ったマイマムか!?
アイス欲をかき立てた、あのガキどもか!?
いや、これ全員犯人だろ!
「イジメ」って集団vs個になることが多いらしいな!
今、まさにその状況になってる……つまり……
ウチは「イジメ」られている!!!
「イジメ」 沢木キョウ @sawaki_kyo
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