第48話:余韻と導き
第48話:余韻と導き
ワイバーンの巨体が、山道に横たわっている。
静寂。 先ほどまでの激戦が嘘のように、風の音だけが耳に残った。
「……討伐、完了だな」
クロムが剣を収め、軽く肩を回す。 その所作に、疲れの色はほとんど見えなかった。
「ふぅ……」 ガルバラが大盾を地面に立てかけ、大きく息を吐く。 「流石に衝撃はあったが、まあこんなもんじゃな」
「片翼を潰した時点で勝負は決まってたね」 メテロムも淡々と言い、指先に残る魔力を払う。
ウルガたちは、しばし言葉を失っていた。
(……これが、最前線)
連携、判断、決断。 すべてが一瞬で、迷いがない。
「……すごかったです」 ウルガは、素直にそう口にした。
クロムは少し照れたように笑う。
「まあ、プラチナだしな」 軽い口調だが、そこに驕りはなかった。 「でもさ――」
クロムは、ウルガたち三人を順に見てから続ける。
「どんな時も常に全体を見てる、良い目を持ってるな」
「え?」 エンキドが間の抜けた声を出す。
「ウルガ」 クロムは指を向けた。 「判断が早いな。焦ってないのがいい」
「……ありがとう」 ウルガは、照れくさそうに頬をかく
「セレナも、間合いの取り方が綺麗だ」 「突っ込みすぎないのは才能だぞ」
「光栄だわ」 セレナは小さく頭を下げる。
「で」 クロムは、ふっと表情を緩めた。
「ウルガたちの目的は、ミスリル鉱山だったよな?」
「うん」 ウルガが答える。 「坑道内に魔物が増えすぎて……間引きの依頼だよ」
「なるほど」 クロムは顎に手を当て、少し考え込む。
「……なあ、二人」 彼は振り返った。
「どうせ山に来たついでだ」 「後輩の仕事、手伝ってやらねぇか?」
「賛成じゃ」 ガルバラは即答だった。 「坑道なら、盾の出番も多いしの」
「俺の魔法なら狭い場所でも使える」 メテロムも頷く。 「勉強になるだろ」
「えっ……!?」 エンキドが目を見開く。 「い、いいのか!?」
「もちろん」 クロムは笑う。 「その代わり」
一瞬、空気が引き締まる。
「ちゃんと見て、学ぶんだ」 「今の自分たちに何が足りないか、逃げずにな」
ウルガは、深く息を吸い込み、力強く頷いた。
「……はい!」
こうして。 トレマーダ山脈の奥、ミスリル鉱山へ向かう道に二つのパーティは、並んで足を踏み出した。
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