番外編「銀狼は知っている」

 ボクの名前はシルヴァ。

 すっごく強くてカッコいい、神獣の銀狼だ。

 まだ子供だけど。


 ボクのご主人は二人いる。

 一人はリアム様。

 このおうちで一番偉くて、一番強い。

 ちょっと怖い顔をしてる時もあるけど、本当はすっごく優しいのをボクは知ってる。


 もう一人はカイ様。

 ボクに毎日美味しいごはんをくれる、世界で一番優しいご主人だ。

 カイ様はいつも陽だまりみたいにあったかい匂いがする。


 ボクがこのおうちにやってきたのは、リアム様がカイ様への贈り物としてボクを連れてきたからだ。

 最初、カイ様はボクのもふもふの毛を見て目をきらきらさせていた。


「わあ……! 可愛い……!」


 そう言って、そーっとボクの頭を撫でてくれた。

 その手つきがすっごく優しくて気持ちよくて、ボクはすぐにカイ様のことが大好きになった。

 それを見たリアム様は、なんだかすごく満足そうな顔をしていた。


 ボクの仕事は、このおうちで二人を見守ることだ。


 例えばお昼過ぎ。

 カイ様がキッチンでお料理をしていると、足元にいい匂いが漂ってくる。

 ボクはくんくん鼻を鳴らしながら、その場に丸くなる。


 カイ様は時々お肉の切れ端とかを「シルヴァ、お味見する?」って言ってこっそりくれる。

 これが最高に美味しいんだ。

 リアム様がお仕事から帰ってくると、カイ様はいつも嬉しそうに「お帰りなさい」って言う。

 リアム様もカイ様を見ると、外での怖い顔が嘘みたいにふにゃっとした顔になる。

 ボクはその顔、結構好きだ。


 夜になって、二人がリビングのソファで寄り添っているのを見るのも好きだ。

 カイ様がリアム様の肩にこてん、と頭を預けてうとうとしている。

 リアム様は本を読んでいるふりをしながら、本当はカイ様の寝顔をじーっと見つめている。

 その目がとろけるみたいに甘いことをボクは知っている。


 ボクは思うんだ。

 この二人が一緒にいると、おうちの中はいつもいい匂いとあったかい空気でいっぱいになる。

 カイ様が笑うと、リアム様も笑う。

 リアム様がカイ様をぎゅってすると、カイ様はもっと嬉しそうな顔をする。

 そういうのを見ていると、ボクのお腹のあたりもなんだかぽかぽかしてくる。


 今日もカイ様が作った美味しいごはんを食べて、ボクは床の上で丸くなる。

 二人の楽しそうな話し声が、子守唄みたいに聞こえる。


 ああ、幸せだなあ。

 ボクは、このおうちが大好きだ。

 これからもずっと、二人のそばにいられますように。

 ボクは小さく「くぅん」と鳴いて、幸せな夢の世界へと旅立った。

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